医療用大麻・嗜好用大麻の違いとは何か? 法律、品質、価格などの側面をまとめて調査

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世界では大麻の有用性が見直され、多くの国で「医療用大麻」という枠組みがつくられ、医療現場での利用が進んできました。またその一方、レクリエーション目的の大麻、いわゆる「嗜好用大麻」もドイツやカナダなど、合法化された地域や国では広まっています。

しかし、これらの違いはなんなのでしょうか?

じつは医療用大麻と嗜好用大麻の違いは、その使用目的、法律的枠組み、規制、税金など多岐にわたります。以下では、これらの違いを詳細に調査し、信頼できる研究、政府機関、大学からの情報を基にまとめます。

この記事は大麻産業の情報をまとめ、学習やリサーチを補助する目的で作成されています。日本国内では、THC・大麻の利用等は厳しく規制されています。

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それぞれの使用目的が大きく異なる

医療用大麻は、特定の医療条件を治療または管理するために使用されます。例えば、てんかんの治療にはCBDが豊富な製品(例:Epidiolex)が用いられ、慢性痛や化学療法による吐き気にはTHCを含む製品が使用されることがあります。

一方、嗜好用大麻は楽しむためや気分を変えるために使用され、医療的な理由はありません。研究では、医療用ユーザーは症状の緩和を目的としており、嗜好用ユーザーは高揚感を求める傾向があるとされています。

製品の組成に関しては、医療用と嗜好用の間に本質的な違いはありません。両方ともカンナビスサティバ植物から派生し、THCとCBDのレベルは製品によって異なります。しかし、医療用患者は特定の条件に応じて異なるカンナビノイド比率(例:CBD:THCが1:1、2:1など)を選択できるケースがあります。例えば、神経障害性疼痛には低THC(5-10%)が有効とされています。

医療用大麻や嗜好用大麻が最大限の効果を発揮するためのTHCとCBDの比率については、多くの国で研究が進められている分野です。しかし、どのような症状や状況・体質に対してどの配合が最適なのかは、まだ解明されていない部分が多く、これからの研究が待たれる分野です。

法律の違いは?

アメリカの大麻法規制

医療用大麻は、2025年3月時点で39州で合法であり、患者は医師の推薦を受け、医療カードを取得する必要があります。例えば、フロリダ州では、医療用大麻はMedical Marijuana Treatment Centers(MMTCs)から購入可能で、特定の条件(例:不安障害、慢性痛)が対象となります。

一方、嗜好用大麻は24州で合法化されており、21歳以上の成人が購入可能です。しかし、連邦レベルでは依然として違法であり、このギャップが議論の的となっています。

日本の大麻法規制

嗜好目的での大麻使用は、日本では完全に違法です。2023年12月の大麻取締法改正により、従来から禁止されていた所持、栽培、移転、輸入・輸出に加え、使用自体も犯罪とされました。施用罪などは麻向法によって規定されています。

一方、医療用大麻は、2024年12月の法改正施行により、医療現場において利用可能になっています。この改正は、大麻由来の医薬品の使用を可能にするもので、特にカンナビジオール(CBD)を含む製品が対象となります。たとえば、てんかん治療薬Epidiolex(米国や欧州で承認済み)は、日本でも臨床試験が行われており、将来的な承認が期待されています。

その他の国の法規制

以下に3つの国の医療用大麻・嗜好用大麻の規制についてまとめてみました。

カナダでは、医療用大麻・嗜好用大麻が合法化されています。所持量は、嗜好用が30グラム、医療用が150グラムまたは30日分(自宅では無制限)です。年齢制限は嗜好用が18歳以上(州による)、医療用は州の年齢制限に従い、未成年も医療ニーズでアクセス可能。

イギリスでは、医療用大麻は特定の疾患に対し専門医の処方で限定的に合法ですが、アクセスには課題が残ります。一方、嗜好用は依然として違法です。

ドイツでは、医療用大麻は比較的広く利用可能で、保険適用も認められています。近年、嗜好用も個人での少量所持や栽培、大麻ソーシャルクラブでの配布が限定的に合法化されましたが、商業販売は未定で、場所や対象者に関する制限が設けられています。

規制と品質管理

医療用大麻の品質管理は多くの国で徹底されています。

例えばオーストラリアでは、治療用品管理局(TGA)が定める法的基準「TGO 93」に基づき、国内で供給される未承認の医療用大麻製品の品質が厳しく管理されています。この基準は、製品そのものだけでなく、原料となる大麻植物や製造工程にも適用され、品質と安全性の確保を目的としています。TGO 93は、有効成分が天然の大麻植物由来であることを義務付け、合成カンナビノイドや有害な汚染物質(特定農薬、重金属、アフラトキシン等)の混入を厳しく制限しています。

さらに、原料となる大麻植物は正確に同定されなければならず、不純物に関する詳細な試験基準を満たすことが求められます。製品に含まれるTHCやCBDといった主要カンナビノイドの実際の含有量は、表示された量に対して規定された許容範囲内にある必要があり、その基準は剤形によって異なります。製造プロセスにおいては、国内外の製造施設がTGAの認める適正製造規範(GMP)に準拠することが要求され、輸入・供給を行うスポンサーはこれを証明する書類を保管する責任を負うとされています。

合法化された地域では嗜好用大麻も一定の品質基準が設けられる場合がありますが、医療用大麻ほど厳格ではありません。例えば、米国の一部の州では、嗜好用大麻もラボテストが義務付けられることがありますが、医療用大麻ほど厳格ではないのが一般的です。

税金とコスト

税金面では、医療用大麻は通常、嗜好用よりも低税率です。

大麻製品の値段は、主に「品質」「製品の種類(花か濃縮物か)」「税金」の3つによって左右されます。このうち品質や種類による価格差は、医療用でも嗜好用でもあまり変わりません。しかし、税金の負担額には大きな違いがあり、これが最終的な価格差を生む主な要因となります。

嗜好用大麻の場合、購入時に売上税や地方税、物品税などが上乗せされることが多く、例えばカリフォルニア州では、これらの税金を合計すると最大で38%にも達することがあります。

一方で、医療用マリファナは税制面で優遇されており、税率が大幅に低いか、州によっては全く課税されないことも珍しくありません。具体例として、カリフォルニア州で医療用カードを提示すれば税負担は15~20%程度に抑えられますし、マサチューセッツ州やバーモント州など、医療目的での購入が非課税となる州もあります。

結論

医療用大麻と嗜好用大麻は、使用目的と法律的枠組み、価格や安全管理などさまざまな側面で違いがあります。一方で、本質的には同じものであり、同じ植物から生産されるものになります。

参考文献

※本記事は、日本国内ならびに国外での違法行為を助長する意図はありません。
この記事の内容は、あくまで読者の皆様のリサーチや学習の一環として提供しています。
法律に関する最新情報は各国の公式サイトをご確認ください。

編集者

CANNABIS INSIGHT代表/編集長
世界の大麻・CBDのビジネスや経済情報を調べています。

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