この記事では、大麻由来の成分である「CBN(カンナビノール)」の特性、健康効果についての可能性、安全性、合法性などについて調査した結果をまとめました。
この記事は信頼性の高い情報ソースを調査して作成されていますが、あくまで執筆時点での研究結果等をまとめているものです。CBNの効果・記事執筆日以降の合法性等を保証するものではありません。学習の補助としてご利用ください。また、健康に関する判断をされる場合はかならず専門家の診断を受けたうえで行ってください。
CBN(カンナビノール)とは?
CBN(カンナビノール)とは、大麻植物(Cannabis sativa)に含まれるカンナビノイドの一種であり、主にΔ9-THCが空気酸化によって分解されることで生成される化合物です。抽出量が少ない、レアカンナビノイドといわれるものの一種です。
CBNは、他の主要カンナビノイドとは異なり、その合成経路が明確に特定されていません。歴史的には19世紀末に大麻から最初に単離されましたが、命名の混乱等により、その構造が完全に解明されたのは1940年になってからでした。このような経緯により、CBNの研究は他のカンナビノイドに比べて遅れをとっており、その生物学的・薬理学的特性には未解明の部分が多い現状があります。
後ほど説明するように、CBNの健康効果については、初期の研究がさまざまな可能性を示しているものの現段階で確固たる証拠が得られていません。したがって、さらなる検証や臨床実験が必要とされています。
CBNの主要な特性と研究状況
特性 | 詳細 |
---|---|
つくられるメカニズム | THCの酸化による生成 |
受容体相互作用 | CB1、CB2受容体に弱いアゴニストとして作用、他にTRPチャネルなど影響 |
提唱されている利点 | 睡眠補助、痛み緩和、抗炎症、抗菌作用 |
副作用 | 口の渇き、めまい、食欲変化(限定的な報告) |
研究状況 | 初期段階、動物モデルや小規模人間試験が主 |
CBDの化学式

CBNの効果|睡眠・痛み・皮膚の病気など
CBNの潜在的な健康効果については、以下に紹介します。
以下の効果については、いくつかの研究が示唆していますが、証拠はまだ不十分です。そのため追加の研究がこれからも必要という段階です。以下に、現在調査が進行中の主要な領域をまとめます。現在の研究は主に動物モデルや小規模な人間の試験に基づいており、大規模な臨床試験が必要です。
本記事は医学的な効果を確証するものではありません。研究事例を紹介することでリサーチの質を上げたり勉強の一環として参考にしてください。健康に関する決定をされる場合はかならず専門家の診断を受けた上で行ってください。
表皮水疱症の治療
CBNの使用は、皮膚や粘膜に水疱ができやすい難病である表皮水疱症の治療に効果があることが最近示されました。InMed Pharmaceuticals社が第2相試験を完了しており、CBNクリームが表皮水疱症の治療に効果があることが示されています。
表皮水疱症とは:
表皮水疱症は、表皮~基底膜~真皮の接着を担っている接着構造分子が生まれつき少ないか消失しているため、日常生活で皮膚に加わる力に耐えることができずに表皮が真皮から剥がれて水ぶくれ(水疱)や皮膚潰瘍を生じてしまう病気です。
引用元 – 表皮水疱症(指定難病36)
鎮痛および抗炎症作用
CBNは鎮痛効果を持つ可能性があるといわれています。2019年のラットを用いた研究では、CBNとCBDの組み合わせが筋肉や関節の痛みを軽減することが示されました。また、2023年のレビューでは、CBNが神経因性疼痛の治療に役立つ可能性があると述べられています。
抗菌作用
CBNは細菌や真菌に対する抗菌作用を持つ可能性があり、特にMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に対する効果が研究されています。この効果は、微生物の細胞膜やバイオフィルムを破壊することで発揮されると考えられています。
一方でこれはCBNだけの効果ではなく、CBD、カンナビクロメン、カンナビゲロール、THC、およびCBNはすべて、さまざまなMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌株)に対して強力な活性を示しています。
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)とは:
通常は無害であるが、皮膚の切創や刺創などに伴う化膿症などの皮膚軟部組織感染症から、肺炎、腹膜炎、敗血症、髄膜炎などに至るまで様々な重症感染症の原因となる。その菌がメチシリン、ペニシリンなどの薬剤に耐性を獲得したもの。
引用元 – 国立感染症研究所
食欲増進作用
飽食状態のラットにCBNを経口投与し、その後の摂食量や食事の特徴を分析した結果、CBNはCB1受容体を介して食欲を増進し、食事開始の遅れを短縮し、最初の食事量や食事時間を増加させたという報告があります。一方で、CBDは摂食量を有意に減少させ、CBGは摂食行動に影響を与えませんでした。これにより、CBNは精神作用の少ない食欲増進薬としての可能性が示唆されました。
睡眠補助効果
CBNは鎮静作用を持つ可能性があり、睡眠障害の治療に役立つとされています。2023年の研究では、20mgのCBNを摂取した参加者がプラセボと比較して夜間の覚醒回数が減少し、全体的な睡眠障害が軽減されたことが示されました。しかし、別のレビューでは、CBNの睡眠促進効果に関する根拠は限定的であり、さらに研究が必要と結論付けています。
CBNのTHC・CBDとの違いとは?
CBN、THC、CBDはすべてカンナビノイドですが、それぞれ異なる特性を持っています。
カンナビノイド | 精神作用 | おもな作られ方 | 主な効果 |
---|---|---|---|
THC | 高い | 植物内で自然発生 | ハイ状態、痛み・吐き気の軽減 |
CBD | なし | 植物内で自然発生 | 痛み・不安の軽減、抗炎症 |
CBN | 基本的になし | THCの酸化 | 睡眠補助、痛み緩和、抗菌 |
THC
テトラヒドロカンナビノールは、大麻の主要な精神作用成分で、「ハイ」状態を引き起こします。医療用途(例:痛みや吐き気の軽減)でも使用されますが、嗜好目的で使用されるケースも多々あります。THCは、日本では違法成分となっており、厳しく取り締まられています。

CBD
カンナビジオールは精神作用がなく、痛み、焦虑、不安、炎症の軽減など幅広い治療効果が期待されています。研究では、CBDが慢性痛の軽減に有効である可能性が示唆されており、また難治性てんかんに対しての医療効果が認められています。この成分は日本では規制されておらず、街中でも販売されているものを購入することができます。
CBN
CBNはTHCが酸化することで形成される二次的なカンナビノイドで、大麻植物には少量しか含まれません。軽い精神作用(THCの約25%程度)と鎮静効果が報告されており、睡眠補助や痛み緩和に注目されています。
CBNは違法なのか?日本の大麻に関する法改正・規制について
2025年2月現在、CBNは麻薬としては扱われていないため、合法な成分といえます。一方で、製品中にTHCが基準値以上含有されていると取締りの対象となるため、製品の安全性を確認することは重要です。
またCBNの合法性は国によって異なります。日本から外国へ渡航する場合、外国の法律によっては取り締まりの対象になるため、CBN製品を持っての渡航は避けた方が安全です。
アメリカ国内では、2018年の農業法案により、THC含有量が0.3%未満のヘンプ由来のCBN製品は一般的に合法とされています。
最新の情報は日本政府HPなどをご確認ください。

CBN製品の種類について
CBNはさまざまな形態で販売されており、消費者の好みや用途に応じて選択可能です。主要なものをご紹介いたします。
- オイル
- カプセル
- エディブル(グミ、チョコレート、クッキー、ドリンクなど)
- 美容品(クリーム、ローション、バーム、パッチなど)
- ベイプ(リキッド)
- アイソレートパウダーフルスペクトラム/ブロードスペクトラム製品
などの製品ラインナップがあります。

編集長のまとめ・考察
CBNは大麻由来の物質として、睡眠、痛み、炎症などの領域で潜在的な治療効果を持つ可能性がありますが、現在の研究はまだ少ないため、さらなる検証や臨床実験が必要です。安全性の観点からも長期的な影響や薬物相互作用についてのデータが不足しています。海外ではCBNの使用よりTHCやCBDが主流でこれらの主要成分の流通に制限がある場合は「CBN」などのレアカンナビノイドが使われる場合もあります。CBNってなに?と聞いてくる外国人もいるかもしれません。
最近、国内ではCBNの人気が著しく、CBD事業者の中にはCBNの売上が上位に来ている事業者も多くいらっしゃると思います。その理由としては日本国内ではTHCの基準値が厳しくなったことからCBNの注目度が上がっていることがあげられます。CBDは時間や熱によってTHCに変化する場合がよくあり、取り扱いなどに注意しなければいけませんがCBNは比較的にそれらの現象になりずらいと考えられています。
ユーザーのニーズとしてもCBNは高く、日本のCBD業界にとって重要な成分となります。
本記事ではあくまで参考程度に事例を紹介しました。CBNを使用する場合は信頼できる製品を選ぶ必要がありますのでしっかりブランドを吟味してから商品購入を行いましょう。また必要であれば専門家の意見も重要かもしれません。
参考文献
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- Is CBN Legal In the United States?