本記事は「CBDアドベントカレンダー2026」の企画で書かれた記事になります。
CBD部の皆様、毎年お声がけいただきありがとうございます。
本文に行く前にまず初めに、CANNABIS INSIGHTは世界の大麻・CBDニュースを発信する業界専門メディアになります。そして今回はその強みを活かして「2025-2026年に起きた世界の大麻・CBDニュース」を振り返る内容の記事を書きたいと思います。
時間がない方は流し見でも大丈夫ですのでぜひ、世界の「今」を知る機会にしていただけると幸いです。
1. 日本
① CBN(カンナビノール)、指定薬物化へ ── 業界に走った衝撃
ここ最近の日本CBD業界における最大のニュースは、CBN(カンナビノール)の指定薬物化に向けた動きだ。厚生労働省は同年10月、CBNを指定薬物とするパブリックコメントを開始。これはCBDが「大麻」の定義から切り離された改正大麻取締法施行後、わずか数年で次の規制が現実となった出来事であり、市場に大きな動揺をもたらした。
実は、規制に先行する形で業界団体が動いていた。全国大麻商工業協議会(JCIA)は同年6月、CBN含有食品に関する自主ガイドラインをいち早く策定。業界として「規制される前に自らルールを設ける」姿勢を示した点は評価に値するが、その数か月後に国が規制の方向性を示したことで、ガイドラインの意義が問われる展開にもなった。
CBN規制の動きは、CBD市場が「次は何が規制されるか」というリスク管理を常に行わなければならない段階に入ったことを示している。業界関係者は、新興カンナビノイドの成分動向と規制庁の動きを従来以上に注視する必要があるだろう。
② 大手・上場企業が続々参入 ── CBD市場が「普通のビジネス」になる
2025年、CBD市場に参入する企業のプロフィールが明らかに変わった。これまでスタートアップやニッチプレイヤーが中心だった市場に、上場企業や大手が本格的な事業として参入し始めている。
製造装置メーカーの平田機工(東証プライム上場)はTHC検査サービスを開始。同社の参入は、CBD製品の品質管理・第三者検査という「インフラ領域」への大手参入として象徴的だ。また、Green Trade Japanら複数の企業が流通・輸入領域で存在感を高めた。さらに、DMM本社を会場に業界横断の勉強会が開催されるなど、CBD業界が「アングラ」から「ビジネスの文脈」で語られる機会が増えた一年だった。
③ 産業用大麻栽培、国内で始動
2025年、国内での産業用ヘンプ栽培が本格的に動き出した。ヘンプイノベーション株式会社が福島県で第一種大麻草栽培者免許を取得したことが確認されており、改正大麻取締法が産業利用を視野に入れた制度設計であることが、現場レベルで実証され始めている。(他にも数十箇所で免許が取得されている)
国内でのヘンプ栽培は長年、繊維利用に限定された都道府県単位の免許制度によって厳しく制限されてきた。法改正後の新制度では産業用途が広がる余地が生まれており、食品・繊維・建材といったヘンプ由来製品の国産化を目指す動きが、今後加速する可能性がある。
サプライチェーンの国産化は、現在海外(欧州・北米)に依存している原料調達リスクの低減にもつながる。中長期的に日本のヘンプ産業が自給基盤を持てるかどうかの試金石として、この動きを注視したい。
④ JIHE 2025 新宿で開催 ── 国内CBD・ヘンプ産業が一堂に
国内最大級のヘンプ・CBD産業イベント「国際ヘンプ博覧会(JIHE)2025」が新宿で開催された。製品展示・業界フォーラム・ネットワーキングを集約した形式で、国内のヘンプ事業者から一般参加者まで幅広い層が集まった。CANNABIS INSIGHT・アサバンクも出展させていただき、消費者・ヘンプ産業関連者など同業の方以外とも情報交換ができました。
また、韓国・安東で開催された「第1回日韓医療大麻国際会議」にも日本から参加者が訪れるなど、東アジアでの情報交換・連携の動きが見え始めた年でもあった。規制環境が異なるなかでの国際連携の重要性は、今後ますます増すだろう。
2. アメリカ
① トランプが大統領令署名 ── 大麻をSchedule IIIへ再分類
2025年の世界大麻業界における最大のニュースは、米国での連邦政策転換だ。トランプ大統領は大統領令に署名し、大麻をCSA(規制薬物法)上のSchedule IからSchedule IIIへ再分類する手続きを前進させた。1970年の規制薬物法制定以来、半世紀以上にわたってSchedule Iに置かれてきた大麻が、連邦レベルで初めて再分類されるという大きな転換点となった。
Schedule IIIへの移行が完了すれば、大麻関連企業は銀行サービスへのアクセスが改善し、研究への道も開かれやすくなる可能性がある。一方で、州法と連邦法の複雑な関係は引き続き課題として残り、実際の市場への影響は段階的に出てくると見られている。また、トランプ政権の移民・治安政策との矛盾もあり、現場レベルでは依然として不確実性が高い。
② 18兆円市場の経済規模と州ごとの税収
2025年、米国の大麻産業の経済効果は約18兆円規模に達したと試算されている。合法大麻市場の成熟とともに、各州の税収データもその存在感を明確に示している。
ミズーリ州では大麻税収が当初予想の6倍にあたる約255億円を記録。ニューヨーク州の合法大麻の累計売上は約1,700億円に到達し、モンタナ州では年間490億円規模で過去最高を更新した。これらの数字は、大麻合法化が単なる社会政策ではなく、自治体財政を支える経済的柱になりつつあることを示している。
日本でも「税収への貢献」という経済的論拠は、将来的な政策議論において重要な視点となり得る。アメリカの税収実績は、その際の参照データとして注目しておく価値がある。
③ ヘンプ由来THC禁止法案が下院小委員会を通過
一方で、CBD業界にとってリスクとなるニュースもあった。農業法(Farm Bill)の改正論議のなかで、ヘンプ由来THC(デルタ8・デルタ9など)を規制対象とする法案が下院小委員会を通過した。
これはCBD由来の「ヘンプテクニカル」製品、いわゆるTHCグミや高濃度ヘンプ抽出物を市場から排除しようとする動きであり、業界団体は横断的に反対意見を表明した。日本への影響としては、米国産原料を使用するCBD製品の成分・調達に変化が生じる可能性があり、原料サプライチェーンへの影響を注視する必要がある。
④ 違法大麻の摘発強化
合法市場が拡大する一方で、闇市場との共存という構造的課題も続いている。カリフォルニア州では2025年だけで約90億円相当の違法大麻が押収されており、合法化後も闇市場が根強く残っていることが改めて浮き彫りになった。
高い課税率や規制コストが合法製品の価格を押し上げ、闇市場との価格差が縮まらないことが主因とされる。合法化の「成功」を測る指標として闇市場の縮小は不可欠であり、税率設計と規制の在り方は今後も重要な論点であり続ける。
3. ヨーロッパ
① ドイツ合法化1年 ── ベルリンの大麻関連逮捕が75%減少
2024年4月に部分合法化(CanG)を施行したドイツで、2025年はその「1年後の実態」が数字で示された年となった。ベルリン市内の大麻関連逮捕件数は、前年の8,430件から2,300件へと約75%減少。法執行コストの削減と、無用な犯罪化を避けるという合法化の目的が、数値として現れた形だ。
2025年の連立政権交代後も、新政権はCanGを継続維持する方針を表明。また、国民の約70%が医療用大麻のオンライン処方を支持しているとの調査も公表され、市民レベルでの受容が進んでいることが確認された。カナダ企業が医療用大麻298kgをドイツへ輸出開始したことも、欧州市場が国際的なサプライチェーンとして機能し始めていることを示している。
ドイツの事例は「合法化1年でこれだけ変わる」という具体的なデータを世界に提供しており、政策立案者にとっての参照事例として今後も注目される。
② チェコが大麻合法化国へ
2025年、チェコ上院が大麻合法化法案を可決し、ペトル・パヴェル大統領が署名。EU域内ではマルタ、ドイツに続く3か国目の合法化国となった。
法律の内容は21歳以上を対象に、最大3株の自家栽培と乾燥大麻100gの所持を合法化するもので、2026年1月に完全施行。
EU域内での合法化の連鎖は、長期的には欧州単一市場における大麻規制の議論を活性化させる可能性がある。チェコはドイツと隣接しており、国境を越えた流通問題はすでに議論になっている。
③ フランス・英国の動向
フランスでは医療用大麻の試験的提供が2026年3月まで延長されることが決定。本格的な制度化に向けた議論が続いており、EU主要国の一角がどう動くかが注目される。
英国では国民の55%が大麻の合法化または非犯罪化を支持しているとの世論調査結果が公表された(2025年2月)。また英国初の医療用大麻に関する「法的相談窓口」が始動し、患者が正確な法的情報にアクセスできる環境整備が進んでいる。EUを離脱した英国独自の政策動向は、今後の欧州全体の議論にも一定の影響を与えると見られる。
4. アジア・その他
① 第1回日韓医療大麻国際会議(安東)開催
2025年12月、韓国・安東市で「第1回日韓医療大麻国際会議」が開催され、日本からも業界有識者の参加者があった。安東市は医療大麻の研究・産業化を推進する地域として知られており、韓国政府の政策的支援のもとで着実に産業基盤を整備している。
日韓という近隣かつ文化的背景が近い二か国が、医療大麻の活用という共通課題について対話の場を持ったことは象徴的だ。アジアにおける規制緩和の潮流はまだ緒に就いたばかりだが、東アジア間の情報共有・連携の動きが始まったことは、日本の業界関係者にとっても無関係ではない。
② オーストラリアの医療大麻市場が欧州主要国を超える成長
アジア太平洋地域で見逃せない動きとして、オーストラリアの医療大麻市場の急拡大がある。2025年の市場規模は欧州主要国を超え、2028年には12億ドル(約1,800億円)超に達するとの予測も出ている。
オーストラリアは2016年に医療用大麻を合法化し、規制整備と産業育成を並行して進めてきた。アジア太平洋地域の中では最も成熟した市場の一つとなっており、日本・韓国・東南アジア各国の事業者にとっての参照市場として注目度が高まっている。
③ ムヒカ元大統領逝去(89歳) ── 大麻合法化のパイオニアが逝く
2025年、ウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領が89歳で逝去した。ムヒカ氏は2013年、世界で初めて国家レベルでの大麻合法化を実現した指導者として知られる。当時「貧困、麻薬密売、暴力との闘い」という現実的な政策判断から合法化に踏み切ったその決断は、その後の世界的な大麻政策改革の流れに大きな影響を与えた。
世界各地の大麻改革を支持する活動家・研究者・政策立案者から追悼の声が上がり、改めてその歴史的意義が語られた。現在も続く世界的な合法化の連鎖は、ムヒカ氏が種を蒔いた流れの延長線上にある。
まとめ
2025年の世界の大麻・CBD業界は、「合法化の加速」と「規制の精緻化」が同時並行で進んだ一年だった。米国では半世紀越しの連邦政策転換、欧州では合法化の連鎖、アジアでは産業化を視野に入れた制度整備が着々と進む。
一方、日本では改正大麻取締法の施行後もCBN規制という新たな波が到来し、業界は常に「次の規制」を見据えながら事業を組み立てる必要がある。ただし、上場企業の参入や国内ヘンプ栽培の始動など、市場が「普通の産業」として認識され始めているのも確かだ。
世界と日本の動きを比較するとき、規制環境の差は依然として大きい。しかし、情報を持ち、先を読む事業者にとっては、その差こそが機会でもある。2026年も引き続き、CANNABIS INSIGHTは最前線の情報をお届けしていく。


