この記事では、大麻と他の薬物(コカイン、アヘン、メタンフェタミン、LSD、MDMA)の違いについて比較しています。
大麻は天然由来の植物であり、精神作用を持つTHCを含む一方、他の薬物はそれぞれ異なる合成方法や作用機序を持ち、強い興奮作用や依存性があることが特徴です。この記事では、大麻と他の危険薬物との混同を避けるための理解を深めることが目的です。
そもそも「大麻」とは
ドラッグとしての大麻は、Cannabis sativa L. という植物の葉、花、茎、種子を乾燥させたものを指し、その中には少なくとも125種類のカンナビノイドが含まれていると言われています。
これには、精神活性作用を持つデルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)が含まれており、THCは一時的に気分や思考、現実の感じ方を変える可能性があります。ドラッグとしての大麻はこのTHCが原因です。
大麻は、乾燥した植物材料(「つぼみ」や「ハーブ」)をタバコのように巻いたジョイントや、葉巻を詰め直したブラント、パイプ、ボング(水パイプ)などを使って吸うのが一般的です。また、ドライハーブ気化器やベイプペンなどの電子機器を使って吸引する方法もあるとされています。
大麻には、THCの他にカンナビジオール(CBD)などの精神活性作用がないカンナビノイドも含まれています。CBD製品はさまざまな目的で販売されています。また、ヘンプと呼ばれるTHCをほとんど含まない Cannabis sativa L. は、繊維や食用種子油の原料として利用されています。
コカイン
概要:
コカ植物から作られる強力な刺激剤。粉末または結晶(クラック)の形態で、吸引、喫煙、注射で使用。脳内のドーパミンを増加させ、一時的な多幸感や興奮をもたらすが、重度の依存性があり、心臓発作や死亡リスクも。
大麻との違い:
大麻が精神作用のあるTHCを主成分とするのに対し、コカインは全く異なる刺激物質。コカインはより激しい興奮作用と深刻な健康リスクがある。
アヘン
概要:
ケシの未熟な実から採取される麻薬性薬物。モルヒネやコデインなどの複数のアルカロイドを含む。経口摂取や喫煙で使用され、強い鎮痛効果と陶酔感をもたらす。ヘロインなどの合成オピオイドの原料にもなる。
大麻との違い:
大麻が植物をそのまま使用するのに対し、アヘンはケシ植物から抽出した乳液を加工。作用機序も全く異なり、アヘンはより強力な依存性と鎮痛効果を持つ。
メタンフェタミン
概要:
いわゆる覚醒剤。原料はエフェドリン。人工的に合成された強力な覚醒剤。粉末、錠剤、結晶の形態で、経口、吸引、喫煙、注射で使用。強い興奮作用と依存性があり、心臓や脳への深刻な健康被害のリスクが高い。
大麻との違い:
大麻が天然由来なのに対し、メタンフェタミンは完全な合成物質。極めて強い覚醒作用と破壊的な依存性を持つ。
LSD
概要
合成された強力な幻覚剤。主に吸水紙に染み込ませた形で経口摂取。現実認識や知覚を大きく歪める効果があり、フラッシュバックのリスクもある。死亡例は稀だが、重度の精神的影響の可能性。
大麻との違い
LSDははるかに強力な幻覚作用を持つ。また、LSDは完全な合成物質で、大麻より予測不能な反応をもたらす可能性が高い。
MDMA(メチレンジオキシメタンフェタミン)
概要
合成された覚醒剤で幻覚作用も持つ。錠剤やカプセルの形態で経口摂取。セロトニンなどの神経伝達物質に作用し、陶酔感や共感性の増大をもたらす。体温上昇などの健康リスクあり。
大麻との違い
大麻が植物由来で安定した作用を示すのに対し、MDMAは合成物質で、より強い陶酔感と体への負担をもたらす。また、神経系への作用メカニズムも異なる。
薬物スケジューリング(アメリカ)
薬物スケジューリングは、薬物の安全性と医療用途に基づいて法的に管理するシステムです。米国では薬物取締局(DEA)がこの制度を管理しており、薬物を5段階のスケジュール(I-V)に分類しています。アメリカではこの基準をもとに薬物の取り締まりを行っています。
最も規制が厳しいスケジュールIは医学的用途がなく、最も危険で乱用の可能性が高い薬物が該当します。スケジュールIIは医学的用途はあるものの、高い乱用・依存リスクがあるため厳格な管理が必要とされます。スケジュールIIIは中程度の乱用・依存リスクがある薬物で、医学的用途が認められています。スケジュールIVは医学的用途があり、乱用・依存のリスクは比較的低い薬物が分類されます。最後のスケジュールVは一般医薬品レベルの薬物で、医学的用途があり、最も乱用のリスクが低いものとされています。
このように、薬物の危険性に応じて段階的に規制を設けることで、安全な医療利用と危険な薬物の規制を両立させています。
一方で米国の薬物スケジューリングは、社会情勢や医学的知見の変化に応じて見直しが行われています。特に大麻に関しては、これまでスケジュールIに分類され最も危険な薬物として扱われてきましたが、2023年、バイデン大統領は大麻をスケジュールIIIへ再分類することを支持し、大麻の評価の見直しを要請しました。
2024年の大統領選でも、大麻規制の緩和は主要な政策議題の一つとなっており、カマラ・ハリスやドナルド・トランプといった候補者も規制緩和に前向きな姿勢を示しています。このように危険薬物とされていた物質でも、医学的な研究の進展や社会の認識変化により、より適切なスケジュールへの見直しへの議論が進められています。
編集長の考察・まとめ
大麻と他の薬物は、成分や作用、依存性、健康リスクが異なります。大麻はTHCを含む天然の植物で特有の効果を持ちますが、コカインやメタンフェタミン、LSDなどは強い刺激や幻覚作用を持ち、依存性や健康リスクが異なります。日本国内での使用は禁止されており、海外でも肯定的なニュースもある一方で否定的な意見や規制を行う政策案などがあり、有効性については慎重に見極める必要があります。
薬物について考えるためにも薬物(ドラッグ)で一括りにされているそれぞれの成分や種類を把握しておくことが薬物を理解するのに重要な視点かもしれません。