大麻・CBDを科学・経済・ビジネスの視点から語るポッドキャスト「ASAラジオ」第3回を記事化しました。今回は、①CBDを嗜好品として使うか医療として使うかという問い、②チェコの大麻政策の実態、③ベイプ製品でよく見かけるが意外と知られていない「CRD」の意味と仕組みの3テーマを取り上げます。動画とあわせてご覧ください。
KCAラボジャパン / Operations Manager
国立大学法人電気通信大学 情報理工学域卒業。化学生命プログラムにてホタルルシフェリン類縁体の発光基質に関する研究に従事。大学では有機化学・生化学を中心に学び、研究分野では分子レベルでの生体反応の解析に取り組む。
現在はKCAラボジャパンにて、カンナビノイド分析や品質管理に関わる業務を担当。CBDやカンナビノイドの分析・規格・科学的知見をベースに、業界の品質基準や技術的理解の向上に取り組んでいる。
ポッドキャスト「ASAラジオ」では、カンナビノイドの科学的背景や研究動向、原料技術などを分かりやすく解説している。
アサバンク / CANNABIS INSIGHT 代表
大麻・CBDのビジネス、経済、規制動向を扱う専門メディア「CANNABIS INSIGHT」代表。日本国内および海外のカンナビノイド産業、ヘンプ産業の市場動向や政策、企業動向を取材・発信している。
また、CBD原料の比較・マッチングプラットフォーム「アサバンク(ASABANK)」を運営。CBD事業者やメーカー向けに、原料調達やサプライヤー選定の情報プラットフォーム構築を進めている。
メディア運営、業界取材、イベントレポートなどを通じて、日本のCBD・ヘンプ産業の情報基盤づくりに取り組んでいる。
CBDは嗜好品か、医療品か
CBDをめぐる議論の中でよく浮かぶ問いが、「嗜好用として広めるべきか、医療品として位置づけるべきか」というものです。熊本でクリニックを営む松坂先生はこの問いに対し、「ケーキ」を使った例えを示しています。普通の日に食べるケーキも、誕生日に食べるケーキも、物としては同じケーキです。違うのは、目的と使われ方だけです。
カンナビノイドも同様で、物質としてのCBDそのものは変わりません。違うのは「どういう目的で使うか」であり、どちらが正解という話ではなく、目的と文脈によって呼び方や扱い方が変わるという考え方です。
医療品として認められているのは難治性てんかん治療
現時点で国から医療品としての使用が認められているCBDの用途は、主に難治性てんかんの治療です。CBD製剤「エピジオレックス」がアメリカFDAに承認されたことを皮切りに、国際的な研究が進んでいます。抗炎症作用、鎮痛作用、睡眠への影響などについては複数の研究報告がありますが、難治性てんかん以外の領域では研究途上にある部分が多く、効果を断定することは現時点では難しいのが実情です。
医療用として訴求していく際には、「エビデンスがあるのか」という問いに必ず向き合うことになります。しっかりとしたデータに基づいた議論が、この分野の信頼性を高める上で不可欠です。詳しくはCBDとは?カンナビジオールの基礎から事業者向け実務情報まで完全解説もあわせてご覧ください。
セルフケアという位置づけが現実に近い
一般ユーザーの実態として、CBDはサプリメントのようなセルフケアとして日常的に取り入れられているケースが多いようです。ラジオの中では、運動前にCBDオイルやベイプを使うことでリラックスして走れる感覚があるという体験が語られました。ただし、これはあくまで個人の感覚であり、医学的な裏付けはありません。
目的を持って使うこと、リスクを理解した上で使うこと、そして断定的な情報に惑わされず建設的な議論を続けることが、この分野の成熟につながるとの見解も示されました。嗜好品か医療品かという二項対立ではなく、「自分がなぜ使うのか」を明確にした上で向き合う姿勢が重要です。
チェコの大麻政策の実態──「合法化」ではなく「非犯罪化」
「チェコが大麻を合法化した」という情報が広まることがありますが、正確には完全な合法化ではありません。現状では、個人による一定量の所持や自家栽培は罰則の対象外とされていますが、販売・ビジネスとしての流通は認められていません。日本の現行法と照らし合わせると、むしろ規制がやや緩和されたバージョンに近い状態です。
チェコはドイツの南側に位置するヨーロッパ中部の国です。近隣のドイツでは2024年、カンナビスクラブ制度のもとで管理された流通が認められました。販売には厳格な免許が必要であり、「合法化=自由に売買できる」ではない点はドイツも同様です。
合法化と非犯罪化の違い
「合法化」と「非犯罪化」は混同されやすい言葉ですが、意味が異なります。合法化とは、法律上の使用・販売が正式に認められることです。一方、非犯罪化とは、禁止はされているものの、違反した場合の罰則を軽減・撤廃した状態を指します。アメリカの一部の州でみられる「所持していても逮捕されない」という状態は非犯罪化の一形態です。
オランダはコーヒーショップ制度で知られますが、これも「非犯罪化」の一形態であり、連邦レベルでの合法化とは異なります。1990年代から続く非犯罪化の歴史的先例として、現在も世界各国の政策議論に影響を与えています。
ヨーロッパにおいても国ごとに対応はさまざまで、医療用途のみ認めている国、カンナビスビジネスを推進している国、依然として厳しく規制している国が混在しています。EU圏内でも統一されたルールはなく、それぞれの歴史的・政治的背景のもとで政策が形成されています。世界の合法化・非犯罪化の動向については、今後の「ASAラジオ」でも引き続き取り上げていく予定です。
CRDとは何か──ベイプに使われる「結晶化しない蒸留物」
CBDベイプ製品の原料表記でよく見かける「CRD」という言葉。CBDに似た略称ですが、これは成分の名前ではありません。CRDとは「Crystal Resistant Distillate(クリスタル・レジスタント・ディスティレート)」の略で、「結晶化しにくいように加工された蒸留物」という製造形態の名称です。
ディスティレートとは何か
CRDを理解するには、まず「ディスティレート(蒸留物)」について知る必要があります。ヘンプの原料をエタノールなどの溶媒で溶かし、加熱・蒸発させ、それを冷却して液体に戻す工程を経て得られます。小学校の理科で学んだ蒸留の原理と同じ仕組みです。
できあがったディスティレートは茶褐色みがかった粘性のある液体で、CBDの含有率はおおむね60〜80%程度です。テルペン(香り成分)などを加えてベイプリキッドとして製品化されます。ベイプのカートリッジを開けたときに見える茶色い液体がこれにあたります。
なぜ日本でCRDが注目されているのか
日本では近年、CBD製品に対する規制が強化されており、THCなどの違法成分の混入を防ぐために、純度99%以上の「アイソレート」が原料の主流となっています。アイソレートはTHCをほぼ完全に除去できる一方で、純度が高いために常温で結晶化(固体化)しやすいという特性があります。
ベイプのカートリッジ内でリキッドが固まってしまうと、吸引できなくなる・ドライヤーで温めなければ使えないといった問題が生じます。冬場に特に起こりやすいこの現象を解消するために登場したのがCRDです。
CRDにレアカンナビノイドが使われる理由
アイソレート(固体)を液体状に保つには、液体の成分を混ぜて溶解させる必要があります。ここで使われるのが、CBT(カンナビトリオール)やCBL(カンナビシクロール)といったレアカンナビノイドです。これらは純度が高い状態でも液体のままという特性を持ちます。
塩(固体)を水(液体)に溶かすと液体になるのと同じ原理で、液体であるCBTやCBLにアイソレートを混ぜることで、全体を液体状に保つことができます。これがCRDの基本的な仕組みです。アイソレート主流の日本市場において、ベイプの品質安定のためにCRDが活用されている背景がここにあります。
溶媒として使われる成分と注意点
レアカンナビノイドのほかにも、ベイプリキッドの溶媒としてさまざまな成分が使われることがあります。テルペン、MCTオイル、プロピレングリコール(PG)、ベジタブルグリセリン(VG)、フィトールなどがその例です。
溶媒の種類によっては、健康への影響が懸念されるケースがあります。代表的な事例として、2019年にアメリカで起きたビタミンEアセテートによる肺疾患問題があります。ベイプ製品の溶媒として使われたビタミンEアセテートが原因とみられる肺障害(EVALI:E-cigarette or Vaping product use-Associated Lung Injury)が多数報告され、現在アメリカではベイプへの使用が規制されています。
CRDH・CRDPなど派生品への注意
最近では「CRDH」「CRDP」といったCRDの派生品を謳った製品も登場しています。こうした製品については、何の成分が含まれているのかが不明なケースがあります。その理由のひとつは、比較対象となる標準物質が存在しないため、通常のCOA(Certificate of Analysis:第三者機関による成分検査書)では特定が難しいという点にあります。
CRDという名称を使いながら、何らかの精神活性成分が含まれている可能性も否定できません。製品を選ぶ際には、成分表示の有無・COAの開示・信頼できるサプライヤーからの調達であるかどうかを確認することが重要です。
まとめ
ASAラジオ第3回では、CBDの使い方・位置づけ、チェコの大麻政策の実態、そしてCRDという製造形態について議論が展開されました。いずれも「知っているようで正確に理解されていない」テーマであり、業界・消費者双方にとって重要な情報です。
カンナビノイドをめぐる言葉・制度・製品は日々変化しています。CANNABIS INSIGHTでは今後も、正確な情報の発信を続けていきます。関連情報として、大麻・マリファナ・ウィードの違いやチルとは何かもあわせてご覧ください。
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