グリーンラッシュとは? 大麻合法化がもたらすビジネスへの影響

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グリーンラッシュとは?

グリーンラッシュは、合法的な大麻産業の爆発的な成長(ビジネス成長)を表す用語で、19世紀のゴールドラッシュに似た経済的機会を指します。

ゴールドラッシュとは、ある場所で金が発見されたと聞いて、多くの人々が金を見つけようと移住する状況。つまりグリーンラッシュとは、大麻のマーケットが開けたことでそこに新規の事業者が大量に流入してくる状況を指します。主にアメリカとカナダで、嗜好用および医療用大麻の合法化が進む中で、投資家や企業がこの市場に参入しました。

Maximum Yieldという雑誌の定義では、アメリカとカナダでの大麻産業の拡大、特にディスペンサリーの増加や喫煙アクセサリーの販売増加を強調しています

いつから「グリーンラッシュ」と言われ始めたのか

グリーンラッシュという用語の使用開始時期については、複数のソースから2012年頃と確認できます。Wiktionaryでは「初出は2012年頃」と記載しています。2012年以前の関連記事は見つけることができず、合法化のタイミングと一致していることが確認できました。したがって、用語・現象としてのグリーンラッシュの使用開始は2012年頃と結論付けられます。

2012年ごろに大麻業界に何があったのか?

2012年は、アメリカの大麻合法化の歴史において重要な転換点でした。以下に具体的な出来事をまとめます。

2012年の主要な出来事詳細
ワシントン州の住民投票可決Initiative 502が可決され、娯楽用大麻の使用と販売が合法化。
コロラド州の住民投票可決Amendment 64が可決され、21歳以上の個人使用・栽培が即時合法化。ただし商業販売開始までには14ヶ月の準備期間を要し、最初の小売店舗が営業を開始したのは2014年1月とされている。

コロラド州とワシントン州で同時に成人向け大麻使用を合法化する憲法改正案が可決され、世界で初めて州レベルでの規制緩和が実現しました。合法市場のスタートは販売のための規制が整備される2014年ごろとなり、実質的な嗜好用大麻のグリーンラッシュはそこから始まっています。

これはその後十年で起こる嗜好用大麻規制緩和のきっかけとなるできごとだとされています。つまりこの規制緩和がグリーンラッシュを生み出すことになるのです。

グリーンラッシュで上場した大麻企業

グリーンラッシュの恩恵を受けた企業は多数存在し、特にカナダとアメリカの主要な大麻企業が挙げられます。以下の表に代表的な企業をまとめます。

会社名上場年・市場
Canopy Growth2014年TSX-V、2018年NYSE
Aurora Cannabis2016年TSX、2018年NYSE
Green Thumb Industries2018年CSE
Cresco Labs2019年CSE
MedMen Enterprises2018年CSE(現OTC)
Tilray Brands2018年NASDAQ

これらの企業は、グリーンラッシュの投資ブームに乗じて株式公開(IPO)を行い、急速に成長しました。例えば、Canopy Growthは初期の投資ラウンドで大きな資金を調達し、Auroraも同様にカナダ市場で成功を収めました。また。

グリーンラッシュが生み出したお金、経済、雇用

グリーンラッシュの火付け役となったコロラド州の2014年の総売上は70億ドル(医療用38.6億ドル、嗜好用31.3億ドル)、2015年のワシントン州の売上は4億6000万ドルからスタートしています。その後、市場はどのように変化していったのでしょうか。

グリーンラッシュが生み出したお金の規模を評価するため、合法大麻市場を調査しました。まだまだ他の成長産業に比べれば小さい市場ですが、規制が世界中で厳しいという事実から考えると、これからの規制緩和や世論の見直しの方向次第ではさらに伸びていく市場と言えるでしょう。

2012年と2013年は医療用大麻のみが主な市場であり、2014年以降はコロラド州とワシントン州での嗜好用大麻の販売開始により市場が拡大しました。2015年~2022年のStatistaのデータに基づくアメリカの大麻市場規模は以下の通りです。

  • 2015年: 49億ドル
  • 2016年: 69億ドル
  • 2017年: 97億ドル
  • 2018年: 125億ドル
  • 2019年: 151億ドル
  • 2020年: 183億ドル
  • 2021年: 257億ドル
  • 2022年: 288億ドル

これらの数字は、医療用と娯楽用の両方の販売を含むもので、州ごとの合法化の拡大と消費者の需要増加を反映しています。Grand View Researchのレポートによると、市場規模は336億ドルと推定されます。

またCongressional Research Serviceの資料によると、大麻関連の雇用も2017年から2023年までのあいだにおよそ3倍強になっており、順調に伸びています。

大麻関連の雇用数雇用成長率 (前年比)
2017約120,000
2018約150,000約25%
2019約210,000約40%
2020約250,000約19%
2021約320,000約28%
2022約420,000約31%
2023約415,000約-1%

日本でもグリーンラッシュはあるのか?

日本では、大麻の所持、栽培、使用が厳しく規制されており、2024年12月から使用も犯罪化されました。違反者は最大7年の禁固刑に処される可能性があります。医療用大麻は一部許可されていますが、厳格な管理下にあり、市場規模はまだ小さいです。

嗜好用大麻の合法化に向けた動きはほとんど見られません。政府は若者の薬物乱用を懸念し、規制を強化する姿勢を示しています。現在は日本にはグリーンラッシュは存在せず、また嗜好用大麻市場の拡大は、現在の政策の方向性では実現がかなり難しいと考えられます。

一方で、CBD製品の市場は成長しています。嗜好用ではなく、主に健康やヘルスケア文脈での製品ですが、このジャンルにおいては人々の意識の変化次第ではさらに盛り上がることが期待できます。また現在のドイツの盛り上がりをみるに、人口の多い日本では政策次第でかなりの経済活動を生むことが期待できるでしょう。

編集長の考察・まとめ

「日本にグリーンラッシュは来たのか?」「海外では大麻ビジネスでお金が動いているのに…」といった疑問や意見を持った方も多いと思います。現状、日本では大麻(CBD)関連の産業で米国ほどは見られてはおらずリーンラッシュは来てないことになります。市場規模でもアメリカは数兆円、日本はCBDのみで数百億程度になり、規模感も大きく違うものになっています。大麻・CBDのメディアを運営しているとよく「日本では大麻は合法化されますか?」と質問されます。個人的な見解としては「日本で合法化はかなり厳しいが、CBDなどの活用や取り組みは今後も増える」ということです。つまり、日本にグリーンラッシュは来ないかもしれませんがCBD市場は残り続けると考えています。期待し続けている人には「期待しすぎ」と思いますし、大麻産業はダメだと思っている方には「そこまで悲観的になる必要はない」と思います。中途半端な意見かもしれませんが、これが現状の日本の大麻(CBD)市場だと肌感で感じます。

参考文献

※本記事は、日本国内ならびに国外での違法行為を助長する意図はありません。
この記事の内容は、あくまで読者の皆様のリサーチや学習の一環として提供しています。
法律に関する最新情報は各国の公式サイトをご確認ください。

編集者

CANNABIS INSIGHT代表/編集長
世界の大麻・CBDのビジネスや経済情報を調べています。

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