アメリカの大麻・CBDの合法化/法律/歴史/ビジネス【2025年最新版】

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アメリカにおける大麻とCBDの状況は、法律、歴史、ビジネスの各側面で非常に複雑かつ興味深いものです。連邦法と州法の違いから、大麻の歴史的な背景、そして急速に成長するビジネス市場まで、多くの要素が絡み合っています。本記事では、アメリカの大麻とCBDに関する基本情報をわかりやすく解説します。

この記事は大麻産業の情報をまとめ、学習やリサーチを補助する目的で作成されています。日本国内での違法行為を幇助する目的はありません。

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目次

アメリカにおける国全体・州の大麻合法化

アメリカでは、大麻は連邦法では違法ですが、州法によっては合法とされる場合があります。

2023年の時点で、38の州が医療目的での大麻を合法化しており、23の州とワシントンD.C.では嗜好用大麻も合法化されています。以下に完全合法化済みの州を色分けし、明示しました。

アメリカの州の合法化状況

連邦法では違法ですが、州法で合法という矛盾した状況はさまざまな問題を発生させています。

例えば大麻ビジネスは銀行口座開設や融資といった金融サービスへのアクセスが著しく困難で、現金主体の経営とそれに伴うリスクを強いられています。また、州境を越えた製品の輸送・販売が禁止されており、企業の効率化や全国展開の大きな障壁となっています。

さらに、連邦税法により通常の事業経費が控除できず、極めて高い税負担を強いられる点も経営を圧迫。常に連邦政府の方針転換による摘発リスクという法的な不確実性も存在し、安定した経営や投資を難しくしています。個人レベルでも、州法で合法的に使用していても雇用や資格維持で不利になるケースがあり、科学的研究も連邦法の規制によって進展が妨げられています

大麻を規制する法律の制定の背景と歴史

大麻を取り締まる法律(連邦法)の変遷一部

西暦関連法案概要
1937年マリファナ税法(Marihuana Tax Act of 1937)大麻の販売や所持への課税
1951年ボッグス法(Boggs Act of 1951)大麻所持の厳罰化
1956年麻薬取締法(The Narcotic Control Act of 1956)大麻所持の厳罰化
1970年規制物質法(Controlled Substances Act)大麻をスケジュールⅠと位置付ける

1930年代半ばの米国では、大麻は社会に広がる脅威、特に白人女性や若者への深刻な影響をもたらすものとして喧伝されといわれています。

大麻が社会問題として取り扱われるようになった背景には、連邦麻薬局初代長官であるH. J. アンスリンガー氏の影響が大きいとされています。そして、1937年に制定されたマリファナ税法により、大麻の使用と販売は厳しく制限されました。大麻種子を鳥の餌として販売していた業者などからも反対意見が出されています。また、全米医師会も、医師の管理下であれば大麻の使用は問題ないと主張し、法案に反対しました。しかし、これらの反対意見は聞き入れられず、「マリファナ税法(Marihuana Tax Act of 1937)」は成立しました。

1937年のマリファナ税法以降、1951年と1956年に制定されたボッグス法(Boggs Act of 1951)と麻薬取締法(The Narcotic Control Act of 1956)により、大麻の所持に対する法的罰則が強化され、大麻は犯罪とみなされるようになりました。これらの法律は、大麻を犯罪とみなすと同時に、学術目的での大麻の入手も制限し、研究を制限する要因となりました。

その後も、1970年の規制物質法によりスケジュールI規制物質に分類され、非常に厳しい規制が続いています。大麻のスケジュールI規制物質への指定は、研究目的での入手困難さにもつながっています。

大麻における「スケジュール」:
米国では、1970年に制定された規制物質法(Controlled Substances Act)に基づき、薬物や化学物質は乱用や医療における使用の可能性に基づいて、スケジュールIからスケジュールVまでの5つのカテゴリーに分類されます。スケジュール分類はあくまで米国の法律に基づくものであり、他の国では異なる分類がされている場合があります。

スケジュールIに分類される物質は、乱用の可能性が最も高く、現在認められている医療用途がないとみなされています。 大麻は長年、ヘロインやLSDなどの薬物と共にスケジュールIに分類されており、連邦レベルでは厳しく規制されてきました。 一方で、州レベルでは医療用や嗜好用としての合法化が進んでおり、連邦法との間に矛盾が生じています。

いつからアメリカで大麻解禁の流れが起きたのか?

アメリカにおける大麻を解禁する流れの背景には、公民権運動や個人の自由を尊重する思想、司法コスト削減、税収増への期待など、さまざまな要因が重なっていますが、制度的な変化の鍵となったのは二つの大きな転換点でした。まず1996年のカリフォルニア州から始まりました。この年、州民投票が可決され、医師の推薦があれば、がんやエイズ、慢性疼痛などの患者が医療目的で大麻を使用・栽培できるようになりました。これは、全米で初めて医療用大麻を州レベルで合法化した画期的な事例です。

この動きにより、「大麻=違法薬物」という従来のイメージに対し、「治療薬としての可能性がある」という新たな視点が社会に広まりました。大麻に対するタブーがやや緩和され、他の州でも医療用大麻を検討・合法化する動きが広がっていきます。これが後の合法化への連鎖の起点となりました。また、合法的な大麻の供給体制も整備され始め、後の嗜好用大麻合法化の基盤作りにもつながりました。

次の大きな転換点は、2012年のコロラド州とワシントン州です。両州は住民投票により、21歳以上の成人による嗜好目的での大麻の所持・使用・販売を合法化しました。これは、医療目的にとどまらず、嗜好品としての大麻を認めた世界初の事例であり、大麻政策における大きな転換点となりました。

両州では、大麻を「禁止」するのではなく、アルコールやタバコのように「規制と課税」の対象とするアプローチが取られました。州政府が販売ライセンスを発行し、未成年への販売を禁止するなど厳格な管理体制を整えたことで、新たな税収源としての側面も注目されました。

この嗜好用合法化は、連邦法(大麻は依然として違法)と矛盾するものでしたが、当時のオバマ政権は、州が十分に規制している限りは連邦法の適用を控える方針(いわゆる「コール・メモ」)を示しました。これにより、他州も合法化に踏み出しやすい環境が生まれました。

このように、医療用大麻の合法化(1996年・カリフォルニア州)が社会の認識を変え、嗜好用合法化(2012年・コロラド州とワシントン州)がその変化を制度として確立するという、段階的なプロセスが進んでいったのです。

連邦法改正への動き:スケジュール3

バイデン政権は2023年、司法省に対し、大麻をより危険性の低い薬物に指定すべくスケジュールIからスケジュールIIIに分類変更するよう指示。もしこの変更が実現すれば、合法的な大麻産業は銀行サービスや外部投資を受けやすくなり、活性化が期待されます。 また、バイデン大統領は、過去の失敗した大麻政策を正し、人種差別的な不公平を解消すると発言しています。現大統領のトランプ氏もスケジュール変更には肯定的な立場をとっています。

また低THC大麻を取り締まるのが農業法です。2018年度改正農業法は、ヘンプを規制対象物質から外し、違法薬物でないとしました。しかし、FDA(アメリカ食品医薬品局)による規制の変更が行われておらず、合法大麻関連商品の製造、販売に関わる規制は州間で異なっているため、今後の業界をめぐる動きが注目されています。

また、全米州農務省協会(NASDA)は、2024年の農業法案において、ヘンプのTHC基準値を現行の0.3%から1%に引き上げることを支持しています。これにより、農家は品種の多様化を図り、作物がTHC基準値を超えるリスクを減らすことが可能になります。

アメリカ国内では大麻に関する評価を見直す動きが進んでいますが、連邦法と州法の間に矛盾が生じている状態が解決されない限り、根本的に問題が解決しません。具体的には、FDAによる規制変更が行われない限り、ヘンプを含む食品や飲料などが州を超えて販売することが難しい状況です。また、銀行は連邦法に抵触することを恐れて、合法大麻関連事業への融資を制限する可能性があります。

日本人が渡航する際には注意が必要

アメリカでは州によって大麻が解禁されていますが、厳格な規制のもと管理されています。法的状況も不安定です。

また大麻関連製品を持って空港を出入りするのは、他国の法律に抵触する可能性があり、大きなリスクがあります。海外渡航の際はCBDを含む大麻由来製品を携帯することは避けましょう。

日本国外において大麻をみだりに、栽培・所持の場合等に罰する日本の規定があり、罪に問われる場合があります。大麻・THCをめぐる日本の法律は複雑で、さらに規制が行き届いていない市場では思わぬ健康リスクもあります。日本から渡航される際は薬物の安易な利用を避けるべきでしょう。また、違法大麻のある場所の近くには、覚醒剤等の危険ドラッグが存在する可能性があるため十分に注意してください。

渡航される際などは、ご自身で必ず最新の情報をお確かめください。
参考情報:海外での薬物犯罪・違法薬物の利用・所持・運搬(外務省)

大麻・CBDビジネスについて

アメリカ国内の市場規模

米国の大麻市場の2023年の収益は、336億ドルと推定されました。2024年には429.8億ドルに達すると予測されています。もっとも収益割合が多いのは嗜好用大麻でおよそ60%を占める結果となっています。

米国のトップ大麻企業の時価総額は、現在6億1000万ドルから32億4000万ドルの範囲です。2024年6月現在の時価総額による米国のトップ大麻企業にはCANNABIS INSIGHTで取り上げたことのある企業で、Green Thumb IndustriesやCresco Labsなどが含まれます。

時価総額TOP5企業

企業名
Curaleaf
Innovation Industrial
Green Thumb Industries
Trulieve Cannabis
Verano Holdings

以下に時価総額TOP10の企業もまとめていますので、ぜひご覧ください。

雇用

アメリカの合法大麻業界は、2023年に44万人以上のフルタイム雇用を支えていました。これは、2017年からの人数(122,800人)と比較するとおよそ3.6倍です。労働人口の増加は、当然のことながら、アメリカにおける大麻の合法化や使用人口の増加を反映しています。

ニュース・レポート

CANNABIS INSIGHTでは、アメリカのニュース情報を配信してきました。アメリカは大麻を解禁した大国として日本でも有名ですが、まだまだ規制上の不安面を抱えており連日ニュースが報道されています。これからもアメリカの動きについてみなさまにお伝えできればと思っております。

【他の地域の大麻の状況について知る】

参考にした記事・情報

※本記事は、日本国内ならびに国外での違法行為を助長する意図はありません。
この記事の内容は、あくまで読者の皆様のリサーチや学習の一環として提供しています。
法律に関する最新情報は各国の公式サイトをご確認ください。

編集者

CANNABIS INSIGHT代表/編集長
世界の大麻・CBDのビジネスや経済情報を調べています。

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