チリと大麻・CBDの合法化/法律/歴史について

ci_chile

南米チリでは、ここ10年で医療用大麻の合法化、個人栽培の非犯罪化、さらには嗜好用大麻を含む新たな法案の動きまで、注目すべき展開が続いています。

本記事では、チリにおける大麻およびCBDに関する法律・規制の変遷、現在の合法化の状況、産業としての発展、そして政治的な背景についてまとめました。

この記事は大麻産業の情報をまとめ、学習やリサーチを補助する目的で作成されています。日本国内での違法行為を幇助するものではありません。

CANNABIS INSIGHT
目次

チリにおける医療用・嗜好用大麻の合法化状況

医療用大麻

チリでは、医療用大麻は合法で、栽培・販売・輸入が許可されています。

医師の処方箋と公的機関の承認が必要です。2015年に医療用アクセスが改善されました。公衆衛生研究所 (ISP)の許可があれば医療目的での大麻の研究と使用が許可されています。

具体的には、患者は医師の処方箋に基づき認可された薬局で購入できます。規制は厳格で、患者はがん、てんかん、多発性硬化症などの指定された医療条件を満たす必要があります。また法律では、患者自身が最大6株まで自家栽培することも認められています。

嗜好用大麻

嗜好用大麻は非合法ですが、個人使用と自家栽培は一部容認されています。販売や輸入は明確に禁止されており、違反した場合、厳しい罰則が適用される可能性があります。

2015年に下院を通過した法案では、上限付きの所持と自家栽培が許可される予定でしたが、この法案は上院で停滞し、最終的に成立しませんでした。

そのため、現在の状況では嗜好用大麻の販売や輸入は禁止されており、公共での使用は罰則の対象となる可能性があります。ただし、個人使用は非犯罪化の動きがあり、栽培も黙認される場合があると報告されています。2025年の4月には嗜好用大麻の利用を、個人レベルで解禁する法案が提出されています。

チリでは、嗜好用大麻の使用を合法的に規制するための法案が提出された。チリでは政治家や市民団体、さらには有力な大統領候補までが大麻を合法化という形で規制することを支持する動きを見せている。左派系政党の議員連合が個人使用を目的とした大麻の栽培・所持・消費を合法化する法案を議会に提出した。

チリ、大麻合法化に向け本格始動 – CANNABIS INSIGHT

日本人が渡航する際には注意が必要

チリでは大麻に対する法律は比較的寛容ですが、渡航した際の利用は控える必要があります。また医療用大麻は合法ですが、厳格な規制の対象となっています。

国外において大麻をみだりに、栽培・所持の場合等に罰する日本の規定があり、罪に問われる場合があります。大麻・THCをめぐる日本の法律は複雑で、また規制が行き届いていない市場では思わぬリスクもあります。日本から渡航される際は薬物の安易な利用を避けるべきでしょう。

渡航される際などは、ご自身で必ず最新の情報をお確かめください。

参考情報:海外での薬物犯罪・違法薬物の利用・所持・運搬(外務省)

大麻に関する政策・法律の背景

年代規制根拠となる出来事・法律
1994年以前麻薬の不法取引禁止。大麻は厳格に規制され、個人使用・栽培はほぼ不可。医薬品使用の道は開かれるも個人使用は禁止。法17.934 (1973)、法18.403 (1985)
1994年麻薬・向精神薬の不法取引を規制。医薬品・科学研究目的を除き、個人栽培・使用は禁止。法19.366
2005年私的な個人使用の非犯罪化。法20.000(麻薬法)
2007年大麻を「高い毒性または依存性を引き起こすハードドラッグ」に分類し、関連犯罪の最大刑を規定(規制強化)。政令867
2012年【提案】個人使用のための自家栽培・消費の非犯罪化、治療目的使用を含む法案が提出される。上院議員による法案提出
2015年個人使用および医療目的での自家栽培が非犯罪化される。下院保健委員会による自家栽培非犯罪化の承認
2025年【提案】成人使用大麻の規制法案提出。自家栽培(最大6株)、保存(年間800g)、公共所持(最大40g)、私的空間での消費、栽培集団(非商業)等を規定。左派の連合による新法案提出(2025年4月9日提出)

チリの大麻政策は、1994年以前の厳格な禁止から始まり、大きな変遷を遂げてきました。当初は法に基づき個人使用や栽培は厳しく制限されていましたが、2005年、私的な個人使用が非犯罪化され、重要な転換点を迎えます。

その後、2007年には政令で「ハードドラッグ」に分類され規制強化の側面も見られたものの、2010年代に入ると変化は加速します。2012年には非犯罪化をさらに進める法案が提案され、2015年には個人および医療目的での自家栽培が非犯罪化されるなど、段階的に規制緩和が進みました。現在ではチリは大麻の使用率が南米で最も高い国のひとつと言われています。

直近の2025年には、成人使用を合法化し、自家栽培や所持量などを具体的に規定する新たな規制法案が提案されるに至っています。このように、チリの大麻政策は、数十年にわたり、厳格な禁止から個人使用の非犯罪化、そして医療・自家栽培の容認へと段階的に進み、現在は成人使用の包括的な規制を目指す方向へとシフトしていると言えます。

ビジネス・市場について

チリ共和国の大麻産業は近年著しい成長を遂げており、特に医療用大麻分野では重要な進展がみられます。2015年の医療用大麻合法化以降、国内外の企業がこの新興市場に参入し、栽培、研究、製品開発など多様な事業を展開しています。

チリを拠点とする主要大麻企業

Alef Biotechnology SpA – 提携による医療用大麻の輸入と流通

カナダのTilrayと提携し、チリで医療用大麻を輸入・販売。患者は処方箋により製品を安全に入手可能。新薬や薬物送達システムの研究にも取り組み、痛みを抱える患者のQOL向上を目指す。2018年、ティルレイはアレフ・バイオテクノロジーの発行済み株式全株を約500万カナダドル(386万米ドル)で買収しています。

▶︎ 公式HP

Agrofuturo

2019年10月、チリ政府から医療用大麻の栽培許可を受けた企業です。これはチリ政府が医療用大麻栽培を推進する上での重要なステップとされており、同社は医療用大麻の合法的な生産者として注目されています。MJBizDailyによると、チリの農業・畜産サービス(SAG)からヘンプの栽培許可を受けた唯一の企業とされています。

▶︎ 公式サイト

市場規模

Statistaのデータによると、チリの総大麻市場規模は2025年に約5300万米ドルと推定されます。これは主に医療用および治療用の大麻市場を対象としており、レクリエーション用大麻は現時点では合法化されていないため含まれていません。Statistaは、2025年から2029年までの年平均成長率(CAGR)が2.27%と予測しており、2029年には市場規模が約5790万米ドルに達するとしています。

ニュース・レポート

CANNABIS INSIGHTでは南米各国の大麻に関するニュースや情報を発信していきました。

南米地域は麻薬犯罪の影響の大きさから、大麻への政治的な関心が比較的高いように見受けられます。そのなかでもチリは緩和の流れに向かっているようです。チリの動きも注目しつつ、世界全体の流れをとらえていきたいですね。

【他の地域を知る】

参考記事・情報

※本記事は、日本国内ならびに国外での違法行為を助長する意図はありません。
この記事の内容は、あくまで読者の皆様のリサーチや学習の一環として提供しています。
法律に関する最新情報は各国の公式サイトをご確認ください。

編集者

CANNABIS INSIGHT代表/編集長
世界の大麻・CBDのビジネスや経済情報を調べています。

目次