スイスと大麻・CBDの合法化/法律/歴史/ビジネス|完全まとめ

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こんにちは、CANNABIS INSIGHT(カンナビスインサイト)です。

大麻を違法薬物として規制してきたスイスですが、2021年から非医療用大麻の科学的試験プログラムを開始。医療用大麻の需要増加と相まって、2030年までには52億ドル超の市場規模が予測されています。本稿では、スイスにおける大麻規制の変遷、パイロットプログラムの詳細、そしてビジネス動向について解説します。

目次

スイスにおける大麻規制・法律と合法化

スイスの大麻規制は、国際的な潮流と国内での議論を受けて大きな転換期を迎えています。

2020年9月に連邦議会で可決された麻薬および向精神薬に関する連邦法の改正により、成人の非医療用大麻使用に関する科学的試験を実施する法的基盤が整備されました。つまり国内の実験として、嗜好用大麻を一部解禁する取り組みが行われているということです。この改正法は2021年5月から10年間の時限立法として施行されています。

試験では、専門店や薬局、ソーシャルクラブなどでの大麻提供方法を検証し、参加者の健康への影響や若年層の保護などについて包括的な調査を行います。各試験は特定のコミュニティで最長7年間(5年間に2年の延長可能)実施され、参加者は1試験あたり5,000人を上限として科学的評価に必要な人数に制限されています。

連邦公衆衛生局は、子供に対する安全性を考慮した包装や保管方法、適切な警告表示など、具体的な規制基準を設けています。

また、スイスはEU加盟国の中でも、少量の麻薬所持に対して比較的おだやかな対応をとる11カ国の一つとして知られています。医療用大麻の処方薬については、現時点では比較的少数ながら今後の増加が予想され、大麻関連製品の商標登録も認められています。このように、スイスは科学的根拠に基づいた政策決定を重視しており、現在進行中の試験結果が今後の大麻政策の方向性を左右すると考えられています。

なぜ大麻に関する政策・法律が変化している?

スイスでは長年、THC含有量が1%を超える大麻は違法薬物として規制されてきました。2004年と2008年には議会と国民投票で大麻合法化が否決され、2013年には大麻使用に対する行政罰が導入されるなど、段階的な政策の変遷がありました。

その後、複数の都市で大麻販売の地方レベルでの試験プロジェクトが提案されました。これらは大麻政策改革の推進と知識向上を目指して地元当局が主導したものでしたが、当時の麻薬法の制約により特別許可が得られず、実現には至りませんでした。

しかし、こうした取り組みが契機となり、2021年9月に麻薬法が改正され、非医療目的の大麻使用に関する科学的なパイロット試験が可能となりました。この改正法は2021年5月から10年間の時限立法として施行されています。

このパイロットプログラムが開始された背景には、従来の大麻政策への批判の高まりや、地方レベルでの試験的取り組みの提案、規制された大麻へのアクセスに関する科学的知見の必要性などが複合的に関係しています。特に、将来的な大麻規制のアプローチを検討する上で、科学的根拠に基づいた意思決定の基盤を構築することが重要視されました。

現在進行中のパイロットプログラムは、大麻使用に関する新たな知見を得ることを主な目的としており、その結果はスイスの今後の大麻政策の方向性を決定する重要な指針となることが期待されています。

出来事詳細
2004年議会で大麻合法化が否決
2008年国民投票で大麻合法化が否決
2013年大麻使用に対する行政罰の導入大麻使用者を犯罪者ではなく、健康問題として扱う方向へ転換。
2020年9月パイロット試験のための麻薬法改正非医療目的の大麻使用に関する科学的なパイロット試験の実施を許可。改正法は2021年5月15日に施行され、10年間有効。
2023年1月Weed Care(パイロットプログラムの名前)試験開始バーゼルで開始。参加者は選択された薬局から大麻製品を合法的に購入可能。
2023年7月Weed Care の予備調査結果発表悪影響は報告されず。
2023年9月Grashaus Project承認参加者約4,000人、民間企業Sanity Groupが運営する初めての試験。
2023年12月Cann-L、Grashaus Projectの販売開始Cann-Lは12月11日、Grashaus Projectは12月7日に専用の店舗で販売開始。

日本から渡航する際には注意が必要

スイスでは大麻に関する規制緩和が進んでいますが、日本から渡航する際は細心の注意が必要です。

スイスで合法とされる製品でも、当然帰国時の持ち込みは違法となる可能性があります。また、スイスでの試験的プログラムは限定的で、一般観光客は参加できません。THC含有量1%以下のCBD製品は多くの店舗で販売されていますが、これらも日本への持ち込みはできません。スイス滞在中であっても、日本の法律に違反するリスクを避けるため、大麻関連製品との接触は控えることが賢明です。

渡航される際などは、ご自身で必ず最新の情報をお確かめください。

スイスにおける大麻ビジネスについて

注目企業

アストラサナ

アストラサナ社は、スイスを本拠地とする国際的な製薬・大麻企業で、イギリス、チェコ共和国、日本に関連会社を持ち、世界18カ国以上で事業を展開しています。日本でも有名なCBD関連の企業。医療用大麻の輸入から薬局・診療所への供給まで手がける製薬流通のスペシャリストとして知られています。

独自の流通ネットワークを構築し、医薬品、化粧品、ホワイトラベル製品、カンナビノイドなど、幅広い大麻関連製品を展開しています。

戦略的パートナーシップも積極的に進めており、Curaleaf International社との提携によりチェコ共和国への進出を果たし、Cantourage Group SE社とは高THC医療用大麻の花の製品ラインをスイスで展開。さらにClever Leaves社との国際的な供給契約も締結しています。

2021年5月に施行されたスイスの麻薬法改正により許可された非医療用大麻使用の科学的試験にも、高THC医療用大麻の花の供給者として関与している可能性があります。

このように、アストラサナ社は製薬流通の専門性と多様な製品展開、戦略的なパートナーシップを通じて、スイスの大麻業界における主要企業としての地位を確立し、グローバル市場での更なる成長が期待されています。

市場|CBDから嗜好用大麻まで

スイスの大麻市場は急速な発展を遂げており、Grand View Research のレポートサマリーによると、2030年までには52億4840万米ドルの収益達成が予測されています。この成長は、医療用大麻需要の増加と、成人の非医療用大麻使用に関する試験的プログラムの実施が主な要因となっています。

スイスの大麻栽培市場は、ヘンプとマリファナという2つの主要なバイオマスセグメントで構成されています。2022年時点では、ヘンプが市場収益の78.21%を占める最大のセグメントとなっており、繊維や種子油などの産業用途に広く使用されています。THC含有量が0.3%以下の特定品種の栽培が認められ、EUの共通農業政策による支援も受けています。

一方、マリファナは今後最も急成長が期待されるセグメントです。これは医療用大麻の使用増加と、非医療用大麻の試験的プログラムの実施が背景にあります。市場は、Canopy Growth Corp、Aurora Cannabis Inc、Tilray Brands Incなどの大手企業が牽引し、国内外向けに様々な製品を展開しています。

スイスは進歩的な大麻規制と高品質な生産体制を特徴としており、医療用大麻需要の高まりと世界的な合法化の流れを追い風に、今後ヨーロッパおよび世界の大麻市場における主要プレーヤーとしての地位を確立していくことが期待されています。

ニュース・レポート

CANNABIS INSIGHTではスイスの大麻に関するニュースや情報を発信していきました。最近、ヨーロッパではドイツが嗜好用大麻の合法化を果たし、大麻に関しての動きが大きくなってきています。スイスは社会実験として試験プログラムを行っており、世界的にも積極的なおもしろいアプローチです。どのような結果が最終的に出るかも含め、これからもスイスの情報についてお届けできればと思います。

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参考記事・情報

※本記事は、日本国内ならびに国外での違法行為を助長する意図はありません。
この記事の内容は、あくまで読者の皆様のリサーチや学習の一環として提供しています。
法律に関する最新情報は各国の公式サイトをご確認ください。

編集者

赤木 孝臣のアバター 赤木 孝臣 CANNABI INSIGHT代表/編集長

CANNABIS INSIGHT 編集長。2022年にメディアを立ち上げ、国内外のCBD・大麻産業を政治、経済、ビジネスという観点から取材・分析。日本国内のCBD市場調査レポート『CBD白書』の編集発行をはじめ、年間ニュースを俯瞰する企画『大麻・CBDニュース総選挙』を主宰・運営。CBDジャーニー、カナコン等の業界カンファレンスやコミュニティでの登壇・モデレーション、事業者向けの寄稿・解説を通じ、大麻・CBDについての社会的意義や経済可能性を調査しています。

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