イタリアと大麻・CBDの合法化/法律/歴史/ビジネス|完全まとめ

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イタリアの大麻事情は複雑です。医療目的での利用は厳格な管理下で認められる一方、嗜好目的での使用は原則として禁じられています。しかし、「カンナビス・ライト」と呼ばれる低THC製品の登場が市場と法解釈に波紋を広げ、CBD規制の揺らぎや近年の規制強化の動きは、この国の大麻政策が絶えず変化していることを示しています。

本記事ではイタリアにおける大麻の法的地位、その歴史的変遷、医療・嗜好・産業利用の現状、そして関連ビジネスや日本人渡航者が留意すべき点まで、多角的な視点から深く掘り下げ調査した結果を報告します。

この記事は大麻産業の情報をまとめ、学習やリサーチを補助する目的で作成されています。日本国内での違法行為を幇助する目的はありません。

CANNABIS INSIGHT
目次

イタリアにおける大麻規制・法律・合法化状況について

イタリアでは大麻は合法なのでしょうか。医療用・嗜好用という観点から現在のイタリアにおける大麻規制・法律・合法化状況をまとめていきます。

医療用大麻の規制

イタリアでは、医療目的での大麻利用は認められています。栽培、販売、輸入は保健省の許可を必要しており、厳格な規制のもと管理下に置かれています。現在、医療用大麻の供給は主に国が管理しており、軍の化学製薬工場での国内生産や外国からの輸入、あるいは公的な入札を通じて行われています。

2021年9月以降、民間企業もこの分野に参入する道が開かれましたが、これは認可された製薬会社へ供給する目的で、欧州法で許可された品種の種子から栽培する場合に限られます。企業が栽培許可を得るには、事前に製薬会社との供給契約を結ぶことが必須です。

患者への処方に関しては、医師が保健省承認の特別な様式を用いて、イタリアで認可された大麻ベースの医薬品を処方できます。国内で未承認の薬が必要な場合は、医師が保健省と税関に輸入許可を申請する必要があります。また、専門の薬局では、合法的に輸入または国内生産された大麻原料を用いて、個々の患者に合わせて調合する「マジストラル調剤(自家製剤)」も可能です。

こうした制度がある一方で、許可なく規定量を超える医療用大麻や関連医薬品を輸入、輸出、購入、または所持した場合には、6年から20年という重い懲役刑や高額な罰金が科される可能性があります。

嗜好用大麻の規制

イタリアでは、嗜好目的での大麻販売は基本的に許可されていませんが、個人使用目的の少量所持については非犯罪化されています。法的には違法になります。

しかし販売に関して、「カンナビス・ライト」と呼ばれる製品が市場に存在します。これは、産業用大麻に関する法律の枠組みを利用したもので、精神作用成分であるTHCの含有量が0.2%未満と極めて低いヘンプ製品です。法的な建前上、これらは食品や化粧品、繊維などの原料となる産業用大麻であり、喫煙用ではないため、「人間用ではない」「喫煙しないでください」といった注意書きと共に販売されています。産業用大麻の定義から外れる大麻を許可なく栽培した場合、医療用大麻の違反と同様に、6年から20年の懲役といった厳しい罰則が科される可能性があります。

関連して、CBD製品の規制も不安定です。2023年には経口摂取用CBDが一時的に麻薬リストに追加されましたが、同年10月に行政裁判所がその効力を停止したため、CBD製品の販売は再開されました。

こうした状況下で、2024年5月にイタリア政府は規制強化に乗り出しました。THC含有量が0.2%未満の「カンナビス・ライト」であっても、産業用や医療用以外の目的での栽培・販売を禁止し、さらに大麻草の絵や図を用いた広告も禁止する法案修正案が提出されました。この動きは、「カンナビス・ライト」市場の終焉につながる可能性が指摘されていましたが、最新の報道によれば、規制は法案審議から緊急措置による即時施行へと進展し、これらの製品が麻薬として規制される可能性が高まっています。

日本人が渡航する際には注意が必要

イタリアでは医療大麻が解禁されていますが、厳格な規制のもと管理されており、旅行者にはアクセスできないと考えられます。嗜好用大麻の法的状況も不安定です。

また大麻関連製品を持って空港を出入りするのは、他国の法律に抵触する可能性があり、大きなリスクがあります。海外渡航の際はCBDを含む大麻由来製品を携帯することは避けましょう。

日本国外において大麻をみだりに、栽培・所持の場合等に罰する日本の規定があり、罪に問われる場合があります。大麻・THCをめぐる日本の法律は複雑で、さらに規制が行き届いていない市場では思わぬ健康リスクもあります。日本から渡航される際は薬物の安易な利用を避けるべきでしょう。また、違法大麻のある場所の近くには、覚醒剤等の危険ドラッグが存在する可能性があるため十分に注意してください。

渡航される際などは、ご自身で必ず最新の情報をお確かめください。
参考情報:海外での薬物犯罪・違法薬物の利用・所持・運搬(外務省)

大麻に関する政策・法律の変遷

出来事詳細
1925国際会議(国際阿片条約)での規制開始大麻の貿易制限が始まる。
1961国連単一条約署名大麻使用が国際的に違法化。
1993ソフトドラッグの非犯罪化開始所持に対する罰則撤廃。
2006大麻の再犯罪化個人所持が刑事犯罪に。
2014個人使用の再非犯罪化1.5gまでの所持が非犯罪化。
2016ヘンプ栽培合法化(THC 0.2%以下)(法律第242/2016号)医療用大麻とCBD製品の利用も拡大。
2023-2024CBD規制と非医療用制限の提案CBD販売再開、THC 2%以下の非医療用禁止案審議の開始。

イタリアの大麻に関する政策や法律は、国際的な規制強化の流れを受けて20世紀に始まり、1961年の国連条約で全面的に違法化され、1980年にはヘンプ栽培も禁止されました。

しかし、1993年には個人所持が非犯罪化される動きがありましたが、2006年には再び厳格化されました。その後、2014年に少量の個人使用が再び非犯罪化され、行政罰の対象となりました。大きな転換点は2016年で、低THCの産業用ヘンプ栽培が合法化され、「カンナビスライト」市場が誕生し、医療用大麻も法的に認められました。現在、個人使用は非犯罪化されていますが、栽培や販売は違法のままです。近年はCBD製品の規制や広告に関する議論が続いており、嗜好用大麻利用については依然として法的な不確実性や社会的な意見の対立が存在します。

ビジネス・市場について

企業

Farmalabor

医療用大麻とカンナビノイド(CBD)のガレニクス製剤を人間と動物の治療用に提供しており、AIFAの認可を受け、国内市場での信頼性が高い企業です。

▶︎ 公式HP

JustMary

2018年にミラノで設立され、カンナビス・ライトとCBD製品を45分以内に宅配するサービスを提供。初の合法的なヘンプデリバリーサービス。現在、ミラノ、モンツァ、トリノ、フィレンツェ、ローマで展開し、ヨーロッパ全体への拡大を計画。投資家から626,000ユーロを調達し、急速に成長しています。

▶︎ 公式HP

Canapar

大麻とヘンプの抽出技術を開発し、自然・有機栽培を最適化。技術革新を通じて産業の発展を支援している。継続的な教育と有機大麻栽培の確立で農家を支援する、成長中の外部委託農業モデルを持っている。

▶︎ 公式HP

市場規模

Statistaによると、2024年の市場規模を3億1250万ドル、2025年を3億2165万ドルと推定。これは医療用と嗜好用の両方をカバーする定義が採用されています。ただし、嗜好用大麻が違法であるため、実際にはカンナビスライトの推定値が含まれている可能性があります。

ニュース・レポート

CANNABIS INSIGHTではイタリアの大麻に関するニュースや情報を発信していきました。近年、ヨーロッパではドイツが嗜好用大麻の合法化を果たし、大麻の法的状況に関しての動きが徐々に大きくなってきています。

イタリアでのカンナビスライトは低THCであるということを使って、法律の曖昧さのなかで発展してきましたが、取り締まられる見通しとなっています。これから、どのように規制が変化していくのかが注目されます。

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参考文献

※本記事は、日本国内ならびに国外での違法行為を助長する意図はありません。
この記事の内容は、あくまで読者の皆様のリサーチや学習の一環として提供しています。
法律に関する最新情報は各国の公式サイトをご確認ください。

編集者

CANNABIS INSIGHT代表/編集長
世界の大麻・CBDのビジネスや経済情報を調べています。

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