スペインの大麻・CBDの法律や合法化状況、ビジネス、歴史に関して調査してみました。
スペインでは個人使用を目的とした所持や栽培は非犯罪化され、医療用大麻や産業用大麻は限定的に合法化されています。一方、嗜好用大麻の合法化に向けた議論も進行中で、2024年には新たな法案が注目を集めているようです。
スペインにおける大麻規制・法律と合法化
スペインでは大麻の完全合法化は実現していないものの、個人使用のための栽培と所持は非犯罪化されています。一方、嗜好用大麻は依然として禁止され、販売や公共の場での使用には厳しい罰則が課されていますが、個人的な使用を目的とした栽培に関しては一定の寛容性(非犯罪化)があります。
産業用大麻については、THC含有量が0.3%以下であれば合法で、繊維や種子の生産に活用されています。化粧品やCBD製品も特定の条件下で認可されていますが、食品用途としての利用は禁じられています。
2024年初頭には、医療・嗜好両面での大麻規制に関する新たな法案が提出されており、年末までに審議結果が注目されています。
大麻に関する政策・法律の背景
スペインの大麻規制は、時代とともに大きな変化を遂げています。1990年代以前は、大麻は厳しく禁止されており、刑法第368条では違法な栽培や販売に対し3~6年の懲役刑が科されました。しかし、その後の社会的に大麻に対する見方が変わりつつあることから大麻規制は緩和され始めます。
1990年代以降、非犯罪化の動きが進み個人の使用目的での大麻栽培や「大麻クラブ」の設立が広まりました。2015年にはスペイン最高裁が大麻クラブの合法性を認め、自己消費を目的とした栽培が容認される重要な判決が下されました。この判決は、大麻規制における転換点となりました。
医療用大麻への関心も2010年代後半に高まり、2022年には議会で医療用大麻に関する報告書が承認されました。これを受け、スペイン医薬品医療機器庁(AEMPS)が規制の策定を開始しており、2024年初頭に最終報告書が提出されている予定だとしています。
一方、嗜好用大麻に関しては、2024年に提出された法案が注目を集めています。この法案は、販売と使用を合法化し、税収を医療や教育に充てることを提案しており、今後の議論が期待されています。
また、産業用大麻の規制はEU基準に準拠しており、THC含有量0.3%以下の栽培が認められています。繊維や化粧品などでの利用が進む一方、食品としての使用は認められていません。
現在のスペインにおける大麻政策は、非犯罪化、医療用規制の整備、娯楽用合法化の議論など多方面で進化を続けています。
大麻を取り締まる規制の変遷の一部
年代 | 規制 | 根拠となる出来事・法律 |
---|---|---|
厳格な禁止 | スペイン刑法第368条 | |
1999年11月12日 | 産業用大麻の栽培許可 | 繊維生産を目的とした産業用大麻の栽培が許可され、EUの認証を受けた種子を使用することが義務付けられた。 |
2015年 | 大麻クラブの合法化 | スペイン最高裁判所は、大麻クラブの活動を合法と認め、自己消費を目的とした大麻栽培を容認する判決を下した。 |
2022年 | 医療用大麻使用に関する報告書の議会承認 | スペイン議会は、医療用大麻の使用に関する報告書を承認し、医療用大麻に治療効果がある可能性を認め、スペイン医薬品医療機器庁(AEMPS)による規制の必要性を訴えた。 |
2024年初頭 | 娯楽用大麻合法化に向けた法案提出 | 「Grupo Parlamentario Mixto」は大麻の使用を規制するための法案を提出した。この法案は、娯楽用大麻の販売と使用を合法化し、税収を医療や教育に充当することを提案している。 |
ニュース・レポート
CANNABIS INSIGHTではスペインの大麻に関するニュースや情報を発信していきました。
スペインはヨーロッパのなかでも大麻使用率の高い国だとされており、すでに個人仕様の非犯罪化はなされているようですが、さらに医療用大麻や嗜好用大麻の法整備も議論の段階に入っているようです。
ドイツが合法化へ踏み出したこともあり、同じくヨーロッパの大国であるスペインも何か動きを見せるかもしれません。ここからもスペインの動向について注目していきます。
▼ 直近のニュース
- スペイン、医療用大麻の規制に関する草案を発表
週刊大麻ニュース |2月17日-2月23日(2024年)
スペイン保健省が医療用大麻の規制に関する草案を発表し、協議を開始したことが報道されました。草案では、スペイン国内では花を除く限定された製品のみが特定の症状に対して処方可能とされています。協議は3月4日まで行われ、その後承認プロセスを経て社会への実装が進められる予定です。医療用大麻の利用は進むものの、限定的な施策内容であるため、多くの問題が残る可能性があります。
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参考記事・情報
- González-Roz A, Belisario K, Secades-Villa R, Muñiz J, MacKillop J. Behavioral economic analysis of legal and illegal cannabis demand in Spanish young adults with hazardous and non-hazardous cannabis use. Addict Behav. 2024 Feb;149:107878. doi: 10.1016/j.addbeh.2023.107878. Epub 2023 Oct 4. PMID: 37924581.
- Cannabis law and legislation in Spain
- Rull, V., Burjachs, F., Carrión, J. S., Ejarque, A., Fernández, S., López-Sáez, J. A., Luelmo-Lautenschlaeger, R., Ochando, J., Pérez-Díaz, S., Revelles, J., Riera, S., & Rodríguez, S. (2023). Historical biogeography of cannabis in the Iberian Peninsula: A probabilistic approach using palynological evidence. Perspectives in Plant Ecology, Evolution and Systematics, 58, 125704. https://doi.org/10.1016/j.ppees.2022.125704