日本と大麻・CBDの合法化/法律/歴史について

本日は、日本における大麻規制の現状と法改正に焦点を当ててお伝えします。世界各地で大麻に関する規制が緩和される中、日本では依然として厳しい規制が続いています。しかし、2023年には医療用大麻の利用に関する規制緩和や、大麻使用罪の新設など、法改正の動きが見られます。この記事では、日本における大麻の歴史や2024年秋時点の法改正について解説します。

目次

日本における大麻規制・法律と合法化

日本では、大麻取締法により大麻の所持や栽培、譲渡が禁止されており、所持には5年以下、営利目的の場合は7年以下の懲役刑が科せられます。栽培には都道府県知事の免許が必要です。国際的な大麻規制緩和の動向に反して、日本は厳罰化の方向に進んでいます。

一方で2023年の法改正では、大麻の使用罪の設置、医療用大麻の規制緩和が行われるなど、議論が進んでいます。このように大麻に関して議論が進むのは良いことであり、消費者であるわたしたちは多角的にものごとを見ながら、施策の是非について判断していくことが重要です。

大麻取締法および麻薬・向精神薬取締法の改正

この法律は、大麻由来の医薬品の使用を認めると同時に、大麻使用による健康被害を防ぐために改正されました。これは2024年の日本発信の大麻関連のニュースの中で大きな出来事です。主な改正点は以下の3つです。

1. 大麻由来の医薬品の使用を可能に

従来、日本では大麻由来の医薬品の使用が禁止されていましたが、諸外国ではすでに承認されています。日本でも「エピディオレックス」の治験が進められていますが、薬事承認後も使用は認められていませんでした。

今回の改正により、大麻およびTHCを麻薬と位置付け、大麻由来の医薬品を適切に管理・使用できるようになります。

2. 大麻の不正使用に対する罰則強化

大麻の不正使用に対しては7年以下の懲役刑が適用されます。また、CBD製品に関しても、THCの残留限度を設け、流通製品の監視が強化されます。

3. 大麻草の栽培規制の見直し

改正により「大麻取締法」は「大麻草の栽培規制法」と名称が変更され、栽培免許が製品用と医薬品用の2種類に分けられました。THC濃度基準を守る種子を使用するなど、栽培に関する規制も強化されました。

その他、許可を受けた場合には、大麻草の種子の輸入が可能になるなど、規制が整備されています。

詳しい記事も作成しておりますので興味のある方はぜひご覧ください。

大麻に関する政策・法律の背景

これまで日本では、大麻取締法によって大麻が規制されていました。日本における大麻規制の歴史は、以下のように変遷してきました。

戦前の状況

1930年に「麻薬取締規則」が制定され、日本で初めて大麻が麻薬指定されました。しかし、この規制は主に製造や輸出入、譲渡手続きに関するものでした。当時、大麻は重要な農作物として広く栽培されており、1942年には政府が原麻生産協会を設立し、麻類の増産奨励を行っていました。

戦後の規制強化

戦後の規制強化には、GHQの占領政策とアメリカの影響が大きく関わっていました。当時のアメリカでは大麻使用を危険視する傾向が強まっており、そうしたイデオロギーが日本にも流入しました。

1945年、GHQの指令により大麻を含む麻薬類の栽培・製造が全面的に禁止されました。しかし、日本人はこの時点で「マリファナとはインド大麻のことであり、農作物としての大麻は無関係である」と考えていたとされます。1946年、京都府で栽培されていた大麻が発見され、農家2名を含む4名の民間人がGHQの命令違反で検挙されました。これが日本の大麻取扱事件の初の摘発です。

アメリカでの動き:
1930年代半ばの米国では、大麻は社会に広がる脅威、特に白人女性や若者への深刻な影響をもたらすものとして喧伝されました。大麻が社会問題として取り扱われるようになった中、多くの反対意見は聞き入れられず、「マリファナ税法(Marihuana Tax Act of 1937)」は成立しました。マリファナ税法により、大麻の使用と販売は厳しく制限されました。マリファナ税法以降、1951年と1956年に制定されたボッグス法(Boggs Act of 1951)と麻薬取締法(The Narcotic Control Act of 1956)により、大麻の所持に対する法的罰則が強化され、大麻は犯罪とみなされるようになりました。

大麻取締法の制定

1948年に「大麻取締法」が制定されました。この法律により、大麻の取り扱いが学術研究と繊維・種子採取目的に限定され、大麻取扱者の免許制が導入されました。ここから現在にわたる大麻の厳しい規制がはじまるのです。

このように、日本の大麻規制は国際情勢や社会状況の変化に応じて変遷してきており、現在も医療利用と乱用防止のバランスを取る形で法整備が進められています。

大麻を取り締まる規制の変遷の一部

法律・規則主な内容
1930麻薬取締規則大麻が初めて麻薬指定される。伝統的に使用されていた繊維や種子用の大麻栽培はこの時点では厳密には規制されていない。
1945GHQ指令大麻を含む麻薬類の栽培・製造が全面禁止
1947大麻取締規則栽培・研究者の免許制導入、個人所持の厳罰化
1948大麻取締法大麻の取り扱いを学術研究と繊維・種子採取目的に限定
1953大麻取締法改正大麻の種子を規制対象から除外
1963大麻取締法改正大麻由来医薬品の使用禁止、罰則強化
1990大麻取締法改正営利目的の加重処罰規定、未遂罪・予備罪の新設
2023大麻取締法改正大麻由来医薬品の使用解禁、大麻使用の罰則化

歴史

日本における大麻の歴史は非常に古く、1万年以上前から農作物として栽培され、生活に幅広く利用されてきました。大麻は、布や魚網に加工される繊維や、屋根材、食用の種子、薬用の葉として使用されていました。宗教的にも重要で、神道では聖なる植物とされ、仏教関連の文書にも使われていました。また、相撲の横綱の化粧まわしにも用いられるなど、文化的にも深く根付いていました。

明治時代以降も、大麻は重要な農作物でした。産業的利用が行われ、栃木で大麻の文化的価値をみなおすために活動続ける「大麻博物館」の情報によると、1942年に政府が原麻生産協会を設立し、増産を奨励。太平洋戦争中は全生産量の90%が軍需用だったとされます。

戦後にGHQの影響で大麻取締法が制定され、厳しい規制が始まりました。それまで広く栽培されていた大麻は急激に制限され、現在では一部の神事用に限定的に栽培が許可されているのみです。

ニュース・レポート

CANNABIS INSIGHTでは日本の大麻に関するニュースや情報を発信していきました。ここ最近、THCの基準値が決まったり、使用罪の設置があったりするなど、日本の中でも大きく大麻を取り巻く環境が変わってきています。

これからも状況は刻一刻と変わると予測されますが、ここで現在の状況についてまとめてみました。ここからも情報発信を行なっていきます。

直近のニュース

大麻に関する法案に対して新たなパブリックコメントの募集が開始されました。詳細資料では、大麻草に含まれるΔ9-THC(Δ9-THCおよびΔ9-THCA-Aの総和)の含有量を標準的に分析する方法について説明されています。具体的には、液体クロマトグラフ-質量分析計(LC-MS)や液体クロマトグラフ-トリプル四重極質量分析計(LC-MS/MS)を用いた分析方法が提案されています。

大正製薬は、2024年9月18日にCBD製品の発売を発表し、CBD市場に参入することを明らかにしました。販売価格は22g(220mg×100粒)で5,400円となっており、1粒あたりに2mgのCBDが配合されています。THC基準値に関する議論や新規制の話題が注目される中、大手企業の国内CBD市場への参入は、SNSのタイムラインでも大きな話題となっています。

【参考記事・情報】

編集者

CANNABIS INSIGHT代表/編集長
世界の大麻・CBDのビジネスや経済情報を調べています。

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