「マンチ(Munchies)」という現象をご存知でしょうか。これは大麻を使用した後に突如として強い空腹感を覚え、特に甘味や高カロリー食品を過剰に摂取したくなる現象を指します。
この現象の背景には、神経科学的なメカニズムが存在します。今回は、Natureという雑誌に2015年に発表された論文から今回は大麻使用後の過食衝動「Munchies現象」について解説します。
脳の仕組みとカンナビノイドの関係
私たちの脳には「視床下部」という部位があります。ここは体温調節や食欲、睡眠など、身体の基本的な機能をコントロールしている重要な場所です。通常、この部位には「プロオピオメラノコルチン(POMC)発現ニューロン」というニューロンが存在し、食欲を抑制する働きをしています。
しかし、大麻に含まれる「カンナビノイド」という成分のうちTHCは、このPOMCニューロンに特殊な影響を与えます。POMCニューロン上の「カンナビノイド受容体1(CB1R)」と結合し、本来は食欲を抑制するはずのニューロンの働きを逆転させてしまうのです。

作用の仕組みについて
研究者グループは、カンナビノイドが食欲抑制の神経回路を「ハイジャック」することで、逆に食欲を促進させることを発見しました。この過程で、POMCニューロンは通常とは異なる働きを示すようになります。
二つの重要なメカニズム
カンナビノイドは、以下の2つの方法で食欲を増進させることが分かっています:
シナプスへの作用 カンナビノイドは神経細胞間の信号伝達を強化し、POMCニューロンの活性を高めます
ミトコンドリアへの影響 細胞内のエネルギー工場である「ミトコンドリア」にも作用し、食欲促進物質である「βエンドルフィン」の放出を促します。
編集長の考察・まとめ
「マンチになってピザを食べると美味しい」のようなワードを見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回はその「マンチ」現象についてメカニズムの部分から考察してみました。大麻成分が脳内の特定の回路に作用し、通常の食欲抑制システムを反転させることで起こるようで、脳の変わった仕組みの一つかもしれません。
私は「マンチ」を初めて聞いた時に「何それ?」と思いました。しかし、「マンチ」についての意味やカルチャーを知るとYouTuberやインフルエンサーがネタでマンチという表現をした時に意味がわかり、色々繋がった感じがありました。日本国内で「マンチ」を知ることは通常ではできませんが、カルチャーや言葉の意味を知ることは世界を広げる上で悪いことではないのかもしれません。
参考文献
Patel, S., Cone, R. A cellular basis for the munchies. Nature 519, 38–40 (2015). https://doi.org/10.1038/nature14206
Science Behind The Munchies
https://www.prairieandluna.ca/journal-1/science-behind-the-munchies