カナダと大麻・CBDの合法化/法律/歴史/ビジネス|完全まとめ

こんにちは、CANNABIS INSIGHT(カンナビスインサイト)です。

カナダにおける大麻規制・法律と合法化についてご紹介します。カナダは2018年10月17日に大麻を合法化し、大麻市場は急速に成長を続けています。本記事では、カナダの大麻規制の歴史的背景から現在のビジネス状況、市場と税収、雇用の影響について詳しく解説します。また、合法化後の経済・文化への影響や今後の展望についても触れていきます。

目次

カナダにおける大麻規制・法律と合法化

カナダで大麻利用は合法

カナダでは、大麻の利用は合法です。カナダにおける大麻は、「大麻法(Cannabis Act)」およびその規制によって規制されています。カナダでは、2018年10月17日に大麻が合法化されました。

大麻法施行の初年度は、乾燥大麻、生大麻、大麻オイル、大麻植物、大麻種子の販売のみに限定されていました。2019年10月17日には、食用大麻、大麻抽出物、大麻塗布剤の販売が許可され、これらの製品に伴う公衆衛生と安全上のリスクに対応するため、規制が改正されました。

歴史的な規制の背景としては、アヘン・麻薬法(Opium and Drugs Act, 1923)が規制のスタートとなっています。アヘン・麻薬法の禁止品目に大麻と麻が追加され、カナダでの大麻取締が始まりました。しかしその後、2000年にオンタリオ州控訴裁判所が、医療用大麻の禁止を違憲と判断したことから、カナダにおける医療用大麻利用が進展し、2018年の合法化につながっていったという流れがあります。

大麻を取り締まる法律の変遷の一部

西暦関連法案、出来事概要
1923アヘン・麻薬法違法薬物リストに大麻が追加される
2000大麻の医療使用が合法化オンタリオ州控訴裁判所は、医療用大麻の禁止を違憲と判断。この背景にはテリー・パーカーがてんかん発作の治療のために大麻を栽培していたという事件があった。
2018大麻法カナダで成人(18歳以上)の嗜好用大麻が合法化される
2019食用大麻、大麻抽出物、大麻塗布剤の販売が許可背景として大麻の合法化が進む中で消費者の安全を確保し、違法市場を減少させる目的がある。

カナダにおける大麻ビジネスについて

時価総額TOP5企業

カナダのトップ大麻企業の時価総額は、現在3億5000万ドルから20.7億ドルの範囲です。2024年6月現在の時価総額によるカナダのトップ大麻企業にはCANNABIS INSIGHTで取り上げたことのある企業で、Tilray Brands Inc. などが含まれます。

企業名HP
Tilray Brands Inc. https://www.tilray.com/
SNDL Inc.https://sndl.com/homepage/default.aspx
Canopy Growth Corp.https://www.canopygrowth.com/
TerrAscend Corp.https://terrascend.com/
Aurora Cannabis Inc.https://www.auroramj.com/

市場・税収

2022/2023の会計年度の報告によれば大麻の売上は主に乾燥大麻が占めており、続いて吸入用エキスが人気でした。以下に2023年に公開された統計の結果(Statistics Canada)から作成した、市場シェアのグラフを示します。

カナダの大麻関連商品売上割合 FY2022/2023

データを見てわかるように、乾燥大麻と吸引大麻エキス(ベイプなど)の売上が大きな割合を占めています。特に、吸引大麻エキスは成長率も非常に高くなっており、2021/2022年度から2022/2023年度にかけての売り上げは約58.9%の増加を見せています。

また公開されている統計の結果(Statistics Canada)から、大麻の売上高および政府税収の推移を以下に示します。順調に売上も税収も伸びている状況だと言えそうです。

(×1000カナダドル)2021/20222022/2023増加率
大麻の売上高3,108,9323,582,998+15.2%
政府税収1,235,3291,496,272+21.1%

総じて、カナダにおける大麻市場は依然として成長を続けており、特に吸入大麻エキスや乾燥大麻の需要が高まっていることがわかります。

カナダにおいてヘンプを取り扱うには、カナダ保健省からのライセンス認可が必要です。

201820192020202120222023
アクティブなライセンスの数54286612691050992737

ライセンス数は2020年をピークに減少を辿っています。この背景には後述の「大麻取締法の立法レビュー」でも提言されているように、違法市場との競争や、THC含有量の規制によるコスト高などの問題があると考えられます。

雇用

Deloitteの「2021 Cannabis Annual report」で、大麻産業はカナダ全土で年間98,000人の雇用を維持し、151億ドルを政府の財源としていると報告しています。またオンタリオ州だけでも、合法化以降、年間31,000人の雇用が維持されています。

労働従事者の割合としては、内訳としては栽培、収穫、加工、製造、管理に従事する労働者が60%。包装、マーケティング、販売、出荷活動等に従事する割合は20%とされています。どのようにこの割合や人数が変化していくか、続報が期待されるところです。

ニュース・レポート

合法化から4年のなかでポジティブな部分もネガティブな部分も明らかになってきました。CANNABIS INSIGHTでも合法化後のカナダの動きをウォッチしています。

2015年1月から2018年9月までの大麻中毒による入院件数と比較すると、2018年10月の合法化後、高齢者の緊急受診は倍増したとされ、2020年1月にエディブルが合法化された後は3倍になったとの報告がありました。ポジティブな面で言えば、税収増加についての報告もあり、地域経済の活性化にもつながっていると考えられます。

合法化後の経済・文化への影響レポート

2023年10月には「大麻取締法の立法レビュー(Legislative Review of the Cannabis Act: What We Heard Report)」という報告書がカナダ政府から公開されています。これは大麻合法化のあとに発表されたもっとも詳細で公式なレポートと言えるでしょう。

特に第9章「経済的、社会的、環境的影響」では、2018年以後の大麻が与えた産業への影響がまとめられています。

このレポートには大麻産業関係者からの提言が盛り込まれており、カナダでは合法化以後、どのように社会で大麻を扱っていくかという議論が進んでいることが見てとれます。以下に、レポートから読み取れる内容と議論の一部を紹介します。

経済的影響についてのまとめ

カナダの大麻産業は、2018年から2021年の間に290億ドルの資本が投資され、98,000人の雇用を創出し、カナダの国内総生産(GDP)に435億ドルを追加したと推定されています。 しかし、市場の過剰供給、規制費用、流通業者への手数料、税金などにより、多くの企業が収益化に苦戦し、市場からの撤退や投資の損失が発生しています。

特に、小規模事業者であるマイクロライセンス保有者は、収穫量が少量であるため、加工業者や流通業者に販売するのに苦労しています。 また、一部のマイクロライセンス保有者は、生産コストを下回る価格でしか販売できないため、栽培を中止したとの報告もあがっています。

大麻業界関係者からの主なメッセージはやはり、合法的な大麻市場が成長しているにもかかわらず、サプライチェーン全体の企業が利益を上げ、維持するのに苦労しているということでした。

その理由として、以下の提言が挙げられています。

  • 合法的な大麻市場は成長中だが、企業は利益確保が困難。
  • 過度な競争、規制料金、税金が企業に圧力をかけている。
  • 許認可プロセスの遅れが企業運営に悪影響を及ぼしている。
  • 違法市場との競争で多くの問題が指摘されている(例:THC含有量、価格、規制の一貫性)
  • 産業用ヘンプは大麻としてではなく、農産物として管理されるべきとの提言。THCの最大濃度を0.3%から1%に引き上げるべき。

社会的影響への提言のまとめ

  • 法律の目的に社会の公平性と多様性の原則を含めることを推奨。
  • 人種化されたコミュニティのために、文化的に配慮した大麻の研究と教育が必要。
  • 法律や規制に関する教育を通じて、人種化されたコミュニティを保護することを求める。
  • 社会の公平性に関するプログラムや取り組みに許認可料や税収の一部を充てることを提案。

環境的影響のまとめ

大麻の合法化による環境への影響は、直接的な焦点ではありませんでしたがいくつかの提言がなされています。

  • 使い捨てのプラスチック包装や、大麻植物の副産物で構成される包装の使用が限られているなど、大麻製品の包装による環境への影響について懸念を表明。
  • 有機農業や再生型農業の実践の使用、および大麻を生体蓄積物質としての使用(土壌の修復を支援するため)など、大麻栽培の環境フットプリントを削減するためのアプローチについて提言があり、太陽エネルギーの使用や廃棄物の二次利用についても提案がある。

参考記事・情報

※本記事は、日本国内ならびに国外での違法行為を助長する意図はありません。
この記事の内容は、あくまで読者の皆様のリサーチや学習の一環として提供しています。
法律に関する最新情報は各国の公式サイトをご確認ください。

編集者

Takaomi Akagiのアバター Takaomi Akagi CANNABI INSIGHT代表/編集長

CANNABIS INSIGHT 編集長。2022年にメディアを立ち上げ、国内外のCBD・大麻産業を政治、経済、ビジネスという観点から取材・分析。日本国内のCBD市場調査レポート『CBD白書』の編集発行をはじめ、年間ニュースを俯瞰する企画『大麻・CBDニュース総選挙』を主宰・運営。CBDジャーニー、カナコン等の業界カンファレンスやコミュニティでの登壇・モデレーション、事業者向けの寄稿・解説を通じ、大麻・CBDについての社会的意義や経済可能性を調査しています。

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