ブラジルにおける大麻規制の動向についてお伝えします。2024年6月、個人使用目的の大麻所持が非犯罪化されました。この変更は、世界で最も人口の多い国の一つであるブラジルにとって、画期的な出来事です。この記事では、非犯罪化の詳細や医療用大麻の規制、そして大麻に関するブラジルの歴史的背景について詳しく解説していきます。
ブラジルにおける大麻規制・法律と合法化

2024年に個人使用が非犯罪化
ブラジルでは2024年6月に個人使用目的での大麻所持が非犯罪化されました。この変更でブラジルは、個人使用目的での大麻所持を非犯罪化した、世界で最も人口の多い国となりました。しかし大麻の嗜好目的での使用自体は合法化されていません。
詳細としては最高裁判所は40グラムまでの大麻所持を罰則なしとしたということになります。この決定は数日以内に発効し、今後18ヶ月間有効となり、その間に議会と保健当局は国民が所持できる大麻の恒久的な量を設定するよう求められています。ただし大麻の販売も依然として違法です。
またブラジルでは医療用大麻は一定の制限のもとで使用が認められています。
2015年以降、ブラジル保健規制庁(ANVISA)は、一定の制限を設けた上でTHCとCBDを医療目的で使用することを許可しています。
2019年12月9日、ANVISAは、患者がカンナビノイド製品をより迅速に利用できるようにすることを目的として、RDC No. 327(RDC 327 of 2019)を公布し、「カンナビノイド製品」という新しいカテゴリーの製品の製造、輸入、商品化、処方、調剤、監視、検査を規制しました。
カンナビノイド製品の処方は、ブラジル市場で入手可能な他の治療選択肢を使い果たした場合に許可されます。 THC含有量が0.2%を超える製品は、他の治療選択肢がなく、不可逆的または末期の臨床状態にある患者にのみ、緩和ケアのために処方することができるとされています。
大麻に関する政策・法律の背景
19世紀以前:
大麻に関する明確な法的規制は存在しませんでした。16世紀半ばにアフリカの奴隷によって大麻の種子が持ち込まれ、一部の先住民や奴隷の間で使用されていたと考えられています。 1830年に、ブラジルで初めて大麻の使用と販売を禁止する法律が制定されました。
1900年代初頭~中期:
大麻に対する規制が強化され始めました。1930年代にはリオデジャネイロで違法とされる大麻取引による逮捕者が初めて記録されました。 1942年には大麻などの植物の栽培に罰則が科せられるようになりました。 1961年、大麻をヘロインと同程度に健康に有害とみなす「麻薬に関する単一条約」に署名しました。
1960年代~2000年代:
1967年の政令第159号は、身体的・精神的依存を引き起こす可能性のある物質を麻薬と同等とみなすものでした。 この政令により、大麻はヘロインやコカインなどの他の違法薬物と同じカテゴリーに分類されることになり、その結果、所持、使用、販売に対する罰則が大幅に強化されました。この政令は、当時の国際的な薬物規制の潮流を反映したものであり、ブラジルもこの流れに沿って国内法を改正した形となります。
1968年の政令第385号は、薬物問題に対する規制の網をさらに広げました。この政令は刑法第281条に「準備する」および「生産する」という文言を追加し、大麻の栽培や製造に関与する行為も処罰の対象としました。
2006年には薬物法(法律第11,343/2006号, Drug Law)が制定され、医療目的または科学的目的でのみ、大麻の植え付け、栽培、収穫が許可されるようになりました。しかし、この法律に基づいて許可が下りた事例は、2023年の時点ではまだありませんでした。これらの政令は、薬物の使用者と密売人の区別を明確にしていなかったため、両者ともに厳しい罰則に処せられることになり、後年、この点は問題視されるようになりました。
2010年代以降:
医療大麻に関する議論が活発化し、規制緩和の動きが見られるようになりました。2014年、ブラジル連邦医師会は、従来の治療法が効かない小児および青年のてんかんの治療にカンナビノールの使用を承認しました。 2015年、ANVISA(ブラジル保健規制庁)は、一定の制限を設けた上で、THCとCBDを含む製品を医療目的で使用することを許可しました。 2019年には、ANVISAは、患者がカンナビノイド製品をより迅速に利用できるようにすることを目的として、「カンナビノイド製品」という新しいカテゴリーを設けました。 このカテゴリーの製品の製造、輸入、商品化、処方、調剤、監視、検査を規制するRDC No. 327を公布し、品質管理、ラベリング、包装、製品のトレーサビリティに関する要件を満たすことを条件に、簡略化された手続きで承認される「衛生許可」制度を創設しました。
2020年代:
2022年、ANVISAはリオグランデ・ド・ノルテ連邦大学に対し、大麻草の栽培と科学実験を行うための教育研究のための簡素化された特別認可(AEP)を付与しました。 これは、ブラジル国内で初めてこのような認可が下りた事例です。
この承認により、リオグランデ・ド・ノルテ連邦大学は、医薬品グレードのCBDをブラジル国内で精製して使用し、大麻製品の処方に使用するために、大麻の植物誘導体(つまり、未加工の形態の抽出物)を輸入することが許可されました。
このような流れの中で2024年の個人使用のの非犯罪化などが起きています。
大麻を取り締まる規制の変遷の一部
| 年 | 出来事、法律 | 背景 |
|---|---|---|
| 1830年 | ブラジルで初めて大麻の使用と販売を禁止する法律が制定される | リオデジャネイロ市議会によって制定 |
| 1961年 | 麻薬に関する単一条約 | 大麻をヘロインと同程度に健康に有害とみなし、国際的な薬物規制の一環として条約に署名 |
| 2006年 | 薬物法(法律第11,343/2006号, Drug Law)が制定 | 医療目的または科学的目的での大麻の栽培が許可 |
| 2014年 | ブラジル連邦医師会がてんかん治療にカンナビノールの使用を承認 | 従来の治療法が効かない小児および青年のてんかんの治療にカンナビノールを使用するための法的承認 |
| 2015年 | ANVISAがTHCとCBDを含む製品を医療目的で使用することを許可 | 一定の制限を設けた上で、医療目的で使用することを認める法的措置 |
| 2024年 | 個人使用の非犯罪化 | 大麻の個人使用に対する法的な規制緩和が進行 |
日本から渡航する際には注意が必要
2024年6月から個人使用目的での大麻所持が非犯罪化されましたが、これは40グラムまでの所持に限られています。非犯罪化は罰則がないことを意味しますが、嗜好目的での使用は合法ではありません。医療用大麻は一定の制限のもとで使用が認められています。
THC含有量が0.2%を超える製品は、特定の条件下でのみ処方が可能です。
規制は変更される可能性があるため、これらの点を踏まえ、ブラジルへの渡航時には大麻に関する規制を遵守し、法律違反を避けるよう注意してください。
渡航される際などは、ご自身で必ず最新の情報をお確かめください。
歴史

大麻がどのようにブラジルに伝わったかについては、いくつかの説があります。
まず、ヨーロッパの植民地支配者による導入です。この説によると、大麻は植民地時代、特にポルトガル人によってブラジルに持ち込まれたとされ、ヨーロッパ人は繊維やロープの生産に麻の種をブラジルに持ち込んだと考えられています。
次に、先住民族の存在です。ヨーロッパ人が到着する前から、一部の先住民族の間では大麻がすでに知られており、使用されていた可能性があります。一部の先住民族は、植民地時代以前から、医療や儀式の目的で大麻を栽培し、使用していた可能性があります。
さらに、アフリカ人奴隷貿易も影響を与えました。植民地時代にブラジルに連れてこられたアフリカ人奴隷が、持ち物の中に大麻の種を持っていた可能性があります。これは、特に精神活性品種に関して、ブラジルでの大麻の普及に貢献した可能性があります。
最後に、南米を通じた拡散です。大麻がすでに使用されていた南米の他の地域からブラジルに伝わった可能性もあります。これは、長年にわたる貿易や文化交流を通じて起こった可能性があります。
ブラジルへの大麻の到来に関する決定的な歴史的記録はなく、これらの要因のどれが最も可能性が高いかを断定することは困難なままです。
植民地時代(20世紀初頭まで)では、大麻は主に産業目的で栽培されていました。麻の繊維は、その強度と耐久性が高く評価され、織物、ロープ、その他の類似製品の製造に使用されていました。当時、大麻の精神活性作用に関する知識はほとんどなく、政府による統制もほとんどありませんでした。
19世紀になると、産業用麻の栽培は依然として重要でしたが、大麻の精神活性作用に関する知識が広まり始めました。医療目的での使用が増加し、政府は大麻を含む精神活性物質の規制により注意を払い始めました。
20世紀には、ブラジルは大麻に対してより厳しい規制を課し始めました。それにもかかわらず、大麻は一部の文化的、宗教的伝統において役割を果たし続けたとされます。特に都市部や若者の間で、娯楽目的での大麻の使用が増加し、医療目的での使用は制限にもかかわらず続けられ、20世紀後半からは大麻を含む麻薬取引に関連する重大な問題に直面し始めました。
21世紀に入ると、医療目的での使用を中心に、合法化と非犯罪化を求める議論が高まりました。2015年、ブラジル保健規制庁(ANVISA)が多発性硬化症の患者がサティベックス(ブラジルでの名称はメタビル)を使用できるようにする医療目的での大麻の使用を承認しました。2018年には患者自身による医療目的での大麻の使用と栽培が承認され、2019年にはブラジルでの大麻の輸入と国内の薬局での大麻由来の医薬品の販売が承認されました。2021年には、ブラジルの国会議員が医療目的と産業目的の両方で大麻栽培を合法化する法案を承認しました。
ブラジルにおける大麻利用の歴史は、社会の変化や政府の政策、そして世界的な動向に大きく影響されてきました。現在も医療目的での使用を中心に、合法化と規制をめぐる議論が続いています。
ブラジルにおける大麻ビジネスについて
注目企業
ブラジルのカンナビス産業においても注目のプレイヤーが多数存在します。以下に、三社を紹介しました。
Terra Viva
Terra Vivaは、ブラジルで農業を中心に活動する企業で、1959年にオランダから移住したKlaas氏とGemma夫人によって設立されました。Terra Vivaは医療用カンナビスの栽培ライセンスを取得した最初の地元企業です。2019年にブラジルでカンナビスの輸入と、カンナビス由来の医薬品の薬局での販売が承認された後、2021年には医療目的と産業目的の両方でのカンナビス栽培が合法化されました
Zion MedPharma
Zion MedPharmaは、医療用カンナビス製品の開発と販売を専門とするブラジルの企業です。Zion MedPharmaのパートナーには、国内で最も権威のある病院の一つであるアインシュタイン病院の理事長クラウディオ・ロッテンバーグ氏と、ブラジル国立衛生監督庁(Anvisa)の元長官であるDirceu Barbano氏が名を連ねています。
TegraPharma
TegraPharmaは、医薬品の研究開発と製造に焦点を当てた企業で、特にカンナビスを基にした医薬品に注力しています。この企業は、患者のニーズに応えるために、革新的で効果的な治療法を提供することを目指しています。TegraPharmaは、厳格な品質管理と安全基準を遵守し、ブラジル国内外での市場展開を行っています。
市場・税収|CBDから嗜好用大麻まで
Statistaのサマリーをもとに、2016年と2023年のデータを比較し、最も変化が顕著な製品カテゴリーについて詳しく見ていきたいと思います。
まず、2016年と2023年の収益とユーザー数を比較してみます。
| 2016年収益 (百万USD) | 2023年収益 (百万USD) | |
|---|---|---|
| CBD製品 | 180.7 | 204.2 |
| 医療用大麻 | 77.08 | 165.1 |
| 医薬品用大麻 | 13.9 | 53.23 |
| 2016年ユーザー数 (千人) | 2023年ユーザー数 (千人) | |
|---|---|---|
| CBD製品 | 694.8 | 7,917.00 |
| 医療用大麻 | 38.32 | 87.74 |
| 医薬品用大麻 | 5.75 | 13.16 |
特に注目すべきは、医療用大麻の市場の急成長です。2016年には77百万USDだった収益が2023年には165百万USDに倍増し、成長率は約114%です。ユーザー数も38千人から88千人と約129%の増加を見せています。この成長は、医療用大麻が一般に受け入れられ、その利用が急速に広がっていることを示しています。
一方で、CBD製品も一定の成長を見せていますが、収益の増加率の伸びに関しては医療用大麻には及びません。2016年から2023年にかけて、収益は181百万USDから204百万USDへと約13%増加し、一方でユーザー数は695千人から7,917千人と大幅な増加を見せています。収益の増加に対してユーザー数が急増している背景には、価格の低下や製品の多様化、市場の成熟が影響していると考えられます。
医薬品用大麻に関しても、2016年から2023年の間に14百万USDから53百万USDと約283%の収益増加を記録し、ユーザー数も6千人から13千人と約129%の増加を見せています。このデータからも、医薬品としての大麻の需要が高まっていることが伺えます。
トータルで見ると、大麻市場全体の収益は2016年の272百万USDから2023年の422百万USDへと約56%の増加を見せ、ユーザー数も739千人から8,018千人へと約987%の増加を記録しています。
これらのデータから、大麻市場の成長がいかに急速であるかが明らかになりました。特に医療や医薬品の分野での需要が高まっていることから、今後の政策や規制の変化にも注目が必要です。
ニュース・レポート
CANNABIS INSIGHTではブラジルの大麻に関するニュースや情報を発信していきました。2024年の非犯罪化は、合法化に向けて動きをもたらすかもしれません。ここからの動きにも引き続き注目していきます。
▼ 過去に取り上げたニュース
ブラジル最高裁判所は、個人使用のための大麻の非犯罪化を決定しました。この判決により、少量の大麻所持が犯罪と見なされなくなります。公式データによると、ブラジルは刑務所の収容数が最も多い国として、アメリカ、中国に次いでランクインしており、問題視されています。大麻の非犯罪化は、ブラジルの薬物政策や刑務所の問題における重要な転換点となります。
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参考記事・情報
- Brazil: Import and Use of Marijuana-Based Medicine Products Authorized
- CANNABIS LAW AND LEGISLATION IN BRAZIL
- Regulation of Cannabis products in Brazil
- Current legislation on medical cannabis. History, movements, trends andcounter-tendencies, in the Brazilian territory
- Cannabis and Brazil
- A expansão do mercado da Cannabis medicinal no Brasil e aslacunas regulatórias
- Cannabis – Brazil
- Medical cannabis regulation: an overview of models around the world with emphasis on the Brazilian scenario
- Boom in Brazilian Cannabis Startups as Country Prepares for Regulation
- Brazil Becomes the Largest Nation to Decriminalize Marijuana


