こんにちは。大麻・CBDのビジネス、経済メディア「CANNABIS INSIGHT」です。
今回は、オーストラリアにおける大麻・CBD規制と法律、そして合法化の現状について詳しく解説します。オーストラリアでは2016年に医療大麻が合法化され、現在では多くの医療用大麻製品が利用可能となっています。
また、オーストラリア首都特別地域(ACT)では個人使用に関する新しい規則が施行され、大麻の非犯罪化が進んでいます。本記事では、医療用大麻の利用状況や法的枠組み、大麻ビジネスの動向について詳しくご紹介します。
この記事は大麻産業の情報をまとめ、学習やリサーチを補助する目的で作成されています。日本国内では、THCは厳しく規制されています。
オーストラリアにおける大麻規制・法律と合法化

ACTの州で大麻は制限付きで利用可能
オーストラリアでは、医療大麻は合法ですが、嗜好用大麻は合法ではありません。
オーストラリアでは、2016年に医療目的での大麻の使用が合法化されました。 それ以来、オーストラリアにおける医療大麻を取り巻く状況は劇的に変化しています。 2016年以前は、医療目的で大麻を使用したいオーストラリア人は違法な手段で入手する必要があり、大麻製品の成分の品質管理はほとんど行われておらず、消費者は医療指導なしに大麻ベースの医薬品を使用していました。
しかし、現在(2024年の時点)では、特定のプロセスを通じて、あらゆる種類の病状を治療するために800種類以上の医療大麻製品を利用できるようになりました。オーストラリアでは、医療大麻の使用が増加しており処方箋の数は100万件を超えています。 2022年から2023年にかけてオンラインで実施された大麻医療使用に関する調査では、医療目的で大麻を使用したことがあるオーストラリアの成人3,323人を対象に調査が行われました。
その結果、回答者の73%が主に処方された医療大麻を使用し、27%が主に違法な大麻を使用していることが明らかになりました。 処方された医療大麻と違法な大麻の両方の使用者に最も多くみられた症状は、疼痛(37%)、メンタルヘルス(36%)、睡眠障害(15%)でした。
一方でオーストラリア首都特別地域(ACT)と呼ばれる、首都周辺の特別地域では制限付きで個人的な利用が開放されています。
ACTの位置する州と、大麻の合法性
オーストラリア首都特別地域(Australian Capital Territory、ACT)は、オーストラリアの連邦直轄地であり、国の首都キャンベラが位置しています。ACTはニューサウスウェールズ州内に完全に囲まれた地域で、面積は2,358平方キロメートルです。
ACTは、1908年に首都建設地として選定され、1911年にニューサウスウェールズ州から連邦政府に移管され、キャンベラが1913年に正式に国の首都として設立されました。この地域は1989年に自治権を獲得し、それ以来、地元の立法議会が統治しています。ただし、オーストラリア連邦政府は依然としてこの地域の法律を覆す権限を持っています。
ACTでは、18歳以上の成人は以下のことが認められています。
- 最大50グラムの大麻を所持する。
- 大麻植物を2本(世帯あたり4本まで)栽培する。
- 自分で栽培した大麻を使用する。
ただし、以下の行為は依然として違法です。
- 他人に大麻を販売、譲渡、贈与する。
- 18歳未満の人が、大麻を栽培、所持、または使用すること。
- 体内に大麻が残っている状態で運転すること。
18歳未満の人が少量の大麻を所持していた場合は、健康に関するセッションへの参加または100ドルの罰金が科せられます。 ACTで大麻が解禁されたのは、ACTで人々が大麻を使用していることが分かっているためであり、人々が司法制度に頼ることなく、必要なサポートを保健システムを通じて受けられるようにするためです。
重要なのは、ACTでは大麻は合法ではなく非犯罪化されているということです。 ACTは、少量の大麻を所持または使用している成人に対する罰則を撤廃したため、司法制度にかけられる心配なくサポートを受けることができます。ACT政府はこの問題について法律を制定する権利があると考えています。
日本人が渡航する際には注意が必要
オーストラリアでは医療大麻は合法ですが、嗜好目的での使用は依然として違法です。また医療用大麻の利用は特定のプロセスを踏む必要があるので旅行者にとってのアクセスは現実的ではない可能性があります。大麻の販売や譲渡は違法行為です。各州や地域によって、大麻の使用に関する法律や規制が異なるため、渡航の際には注意が必要です。
渡航される際などは、ご自身で必ず最新の情報をお確かめください。
大麻に関する政策・法律の背景
西暦 | 関連法案、出来事 | 概要、背景 |
---|---|---|
1967 | 麻薬法(Narcotic Drugs Act) | オーストラリアでの大麻の違法化 |
1992 | オーストラリア首都特別地域が軽微な大麻犯罪が非犯罪化 | これを皮切りに他の州でも非犯罪化の流れが起こる |
2016 | 麻薬法(Narcotic Drugs Act)改正 | 医療または科学的目的で使用する大麻の栽培、生産、製造を規制するために改正。 |
1788年にイギリス人がオーストラリアに入植した際、麻の生産を目的として大麻が持ち込まれました。 しかし、1900年代初頭にアメリカで麻薬使用が犯罪とみなされるようになると、オーストラリアは米国に追随しました。
1925年、オーストラリアはアヘンなどの薬物に関するジュネーブ条約に署名し、大麻はアヘンやコカインと同レベルの規制を受けることになりました。 その後、オーストラリアの各州は、ビクトリア州を皮切りに、大麻の使用を罰する法律を制定しました。
医療および科学研究目的での大麻の生産を合法化するために、麻薬法が改正されたのは数十年後の2016年のことです。2021年には、オーストラリア治療薬局(TGA)が低用量CBDオイルの規制を緩和し、医師の処方箋なしで購入できるようになりました。
このようにオーストラリアにおける大麻の法的扱いは、当初は産業用作物として導入されながらも国際的な流れや米国の影響を受け規制が強化されていきました。医療目的での使用は認められてきたものの、娯楽目的での使用は依然として違法とされており注目すべきポイントです。
オーストラリアにおける大麻ビジネスについて
注目企業
オーストラリア証券取引所には、Cann Group(ASX:CAN)やLittle Green Pharma(ASX:LGP)など、医療大麻を栽培・製造する上場企業がいくつかあります。 2017年、Cann Groupはオーストラリア麻薬取締局から大麻研究ライセンスを付与された最初の企業となりました。 Little Green Pharmaは、「オーストラリアで初めて大麻医薬品の生産と輸出を行った」企業です。
リストにある注目企業について紹介します。
Incannex
オーストラリアに拠点を置く医療用大麻企業で、医療および治療用カンナビノイド製品の研究・開発を行っています。特にてんかんや慢性疼痛、不安障害などの治療に焦点を当てた製品を提供しています。
Cronos Australia
Cronos Australiaは医療用大麻および関連製品の製造・販売を行う企業です。医療用カンナビスの栽培、製造、そして患者への供給を行い、患者の生活の質を向上させることを目指しています。
Ecofibre
Ecofibreはアメリカとオーストラリアで事業を展開する企業で、ヘンプ(麻)由来の製品を提供しています。栄養補助食品、繊維、バイオプラスチックなど、多岐にわたる製品を手掛けています。
Cann Group
Cann Groupはオーストラリア初の医療用大麻の栽培企業で、製品の研究・開発、製造、供給を行っています。医療用カンナビノイド製品の提供を通じて、患者の生活の質の向上に貢献しています。
Botanix Pharmaceuticals
Botanix Pharmaceuticalsは皮膚科関連の医療用カンナビノイド製品を専門に扱う企業です。特に、皮膚病や皮膚炎、にきび治療のための革新的な治療法を開発しています。
値段・市場・税収
オーストラリアの薬用大麻市場は拡大しており、2023 年上半期には 1,510,186 パッケージの薬用大麻が販売されました。 これは、2022 年上半期の販売台数よりも大幅に増加しています。
オーストラリアの薬用大麻製品の販売は、国内栽培と海外からの輸入の組み合わせによって供給されています。 オーストラリア企業は、2021 年に 16,700 kg の乾燥花を栽培し、2022 年には 24,900 kg に増加しました。輸入量も同時期に 7,173 kg から 24,877 kg に増加しました。
またStatistaのサマリーによると、CBD・医療用・薬用・嗜好用含む大麻製品ユーザーはおよそ997万人になったとされています。2018年では569万人と記載されており、市場は大きく成長していると言えるでしょう。また収益もここ5年間で196%もの目覚ましい成長がみられます。以下に製品別の収益の内訳を示します。
収益(百万USD) | 2018 | 2023 |
---|---|---|
CBD製品 | 195.93 | 162.1 |
医療用 | 8.34 | 310.6 |
薬用 | 22.79 | 39.06 |
嗜好用 | 871.1 | 1,702.00 |
合計 | 1128.13 | 2213.76 |
Redditのユーザー投稿によると、オーストラリア・シドニー中央部の大麻市場では価格がかなり変動しているようです。例えば、ある販売者は1/4オンス(7g)を$120で提供しており、価格は高めですが複数の品種から選べる高品質なものとのことです。一方で、1オンス(28g)を$250で販売する業者もおり、こちらは品質は悪くないものの特に際立ったものではないとされています。また、3gを$50で購入できるケースもありますが、品質にはばらつきがあるようです。
一方、メルボルン大学の記事によれば、オーストラリア議会予算局は合法市場での価格を1グラムあたり$16.95と想定しており、そのうち$3.55が税金です。一見すると、オーストラリア犯罪情報委員会(ACIC)が推定する違法市場価格の$22.50/グラムよりも安く、品質保証を考慮すれば競争力があるように見えます。
しかし、毎日または毎週大麻を使用する人は通常グラム単位では購入せず、オンス(28g)単位で購入することが多いです。ACICの推定によると、違法市場での1オンスの価格は$300(1gあたり約$11)です。そのため、合法市場の$17/グラムという価格では、現在の利用者にとって経済的な魅力が低い可能性があります。
ニュース・レポート
CANNABIS INSIGHTではオーストラリアの大麻に関するニュースや情報を発信していきました。オーストラリアは医療用大麻利用が可能で、一部地域は個人利用が解禁されているなど、注目度の高い地域です。引き続き、オーストラリアの状況をお伝えしたいと思います。
▼ 過去に取り上げたニュース

【他の地域の大麻の状況について知る】



参考記事・情報
- Medicinal cannabis products by active ingredients
- Guidance for the use of medicinal cannabis in Australia: Overview
- Medical cannabis use in Australia seven years after legalisation: findings from the online Cannabis as Medicine Survey 2022–2023 (CAMS-22)
- History of cannabis
- What medicinal cannabis products are available in Australia?
- Medical Cannabis
- Marijuana in Australia: patterns and attitudes
- Cannabis-in-Australia-2023-Report.
- ASX Cannabis Stocks: 10 Biggest Companies in 2023
- Cannabis
- The history of cannabis in Australia
- Narcotic Drugs Legislation Amendment Bill 2016 [and] Narcotic Drugs (Licence Charges) Bill 2016
- The history of cannabis in Australia
- Cannabis – Australia