ウクライナと大麻・CBDの合法化/法律/歴史/ビジネス|完全まとめ

こんにちは、CANNABIS INSIGHT(カンナビスインサイト)です。

2024年、ウクライナでは医療用大麻がついに合法化され、新たな法的枠組みが施行されました。がんやPTSDなどの患者にとって医療大麻へのアクセスを可能にし、特に退役軍人の支援に焦点を当てています。一方で嗜好目的の大麻は依然として違法のままです。本記事では、ウクライナにおける大麻の規制やその背景、そして医療と産業分野に与える影響について詳しく解説します。

目次

ウクライナにおける大麻規制・法律と合法化

ウクライナ画像

2024年に医療用大麻が合法化

ウクライナでは医療大麻が合法化されました。この法律は2023年12月21日に議会で可決され、2024年2月15日にウォロディミル・ゼレンスキー大統領によって署名されています。

嗜好目的での大麻の流通は禁止されたままであり、医師の処方箋を持つ人だけが医療用として合法的に購入できます。医療大麻の販売と流通は政府によって厳しく管理されます。医療大麻に基づく医薬品は、電子処方箋によってのみ入手できます。

大麻に関する政策・法律の背景

従来、大麻の使用は厳しく制限されていました。

一方で、2020年10月、ゼレンスキー大統領が実施した世論調査で、国民の64.88%が医療用大麻の合法化に賛成していました。この結果は、国民の間で医療用大麻に対する理解と支持が広がっていたことを示しています。

大麻規制は、2024年8月16日に施行された「ウクライナにおける大麻の流通を規制する法律」(Cannabis Law)により、大きく変化しました。法律の目的は、がんや心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの深刻な病気を持つ患者の痛みを和らげ、特に退役軍人を支援することとされています。

この法律により、医療大麻の使用が合法化され、患者が大麻をベースにした治療を受けることが容易になります。また、産業用ヘンプの規制も緩和され、栽培や加工がしやすくなりました。

医療用大麻は、THC含有量が0.3%以上の大麻植物から製造され、医療、研究、教育などの特定の用途に限られています。すべての医療用大麻の活動にはライセンスが必要で、政府が年間の割り当てを決定します。医療用大麻製品は、承認された薬局で製造され、患者は電子処方箋を通じてのみ入手できます。

一方、産業用ヘンプはTHC含有量が0.3%以下の大麻植物から生産され、産業用途に使用されます。以前は厳格な政府の割り当て制度がありましたが、今後は届け出制により、栽培や加工が自由化されます。ただし、THC含有量の検査が義務付けられ、規定値を超えた場合は収穫物が廃棄されます。

さらに、CBD製品の規制も緩和され、特にCBDベースの非医療用製品の商業化が進展する見込みです。欧州基準に沿った食品業界の規制も進んでおり、CBDベースの食品は新規食品として登録が必要になる可能性があります。

今回の法改正は、医療と産業分野における大麻の利用を拡大し、ウクライナの大麻産業に新たな機会をもたらすと期待されています。

大麻を取り締まる規制の変遷の一部

出来事

詳細

1961年

国際連合が「麻薬に関する単一条約」(Single Convention on Narcotic Drugs)を採択

ウクライナを含む加盟国は、医療および科学研究以外の目的で大麻を使用することを禁止されました。

1991年

ウクライナが独立

ウクライナは独立国家となり、独自の法律を制定するようになりました。

2012年

ウクライナ閣僚会議決議「第800号」(Resolution No. 800)

産業用ヘンプの定義が明確化(THC含有量が0.08%を超えない大麻品種を「産業用ヘンプ」と定義し、その栽培、加工、販売を合法化)

2023年

医療大麻を合法化する法案がウクライナ議会を通過

がんやPTSDなどの特定の疾患を持つ患者に対する医療大麻の使用を許可。ただし、娯楽目的での使用は違法。

2024年2月15日

ウォロディミル・ゼレンスキー大統領が医療大麻を合法化する法案に署名

法律が成立しました。

2024年8月16日

「ウクライナにおける大麻の流通を規制する法律」(Cannabis Law)の施行が予定

医療目的の大麻の栽培、加工、製造、卸売、小売、輸出入を許可。産業用ヘンプの使用に関する規制も緩和。THC含有量が乾燥茎で0.3%以下のヘンプが産業用ヘンプとして定義。

日本から渡航する際には注意が必要

ウクライナへの渡航を検討されている場合、大麻に関する法律は厳しく、嗜好目的の大麻は違法であることを理解することが重要です。特定の疾患を持つ患者に対して医療大麻が合法化されますが、それでも厳しい規制が適用されます。 医療大麻は医師の処方箋が必要で、薬局で購入することになります。

産業用ヘンプはウクライナで栽培されており、規制は緩和されつつありますが、THC含有量が厳しく制限されています。ウクライナへの渡航に際しては、大麻に関する法律を遵守し、違法な行為に関与しないように十分注意してください。

渡航される際などは、ご自身で必ず最新の情報をお確かめください。

歴史

「Hemp research and growing in Ukraine」「History of industrial hemp in Ukraine」というふたつの情報ソースによると、大麻は何世紀にもわたる重要な経済的・文化的な役割を担ってきました、とあります。古代に大麻が栽培されていたという証拠があり、16世紀には中央アジアから持ち込まれた大麻が急速に中央ヨーロッパへ広がりました。

ロシア帝国時代には、特にポルタバやスーミ、チェルニーヒウの地域で大麻の栽培が盛んになり、国内外でその繊維と種子が高く評価されたそうです。1906年から1916年には25万ヘクタールもの土地が大麻栽培に使われ、ロシア帝国の大麻栽培面積は世界の80%を占めていました。しかし、社会的混乱が続いた結果、1918年から1920年にかけてその作付面積は6万7,000ヘクタールにまで減少しました。

ソビエト連邦時代に入ると、計画経済の下で大麻の生産が回復しました。1920年代後半に導入された新経済政策(NEP)により、1928年には大麻作付面積は29万ヘクタールまで拡大。さらに1930年代には、全ソ連麻類科学研究所が設立され、大麻の栽培技術や収穫方法に関する研究が進められました。

新経済政策(NEP)とは:
1918年から1921年初めまで実施されていた戦時共産主義による経済の疲弊を回復させるため、ソビエト連邦で導入された経済政策。社会主義体制と資本主義的要素を組み合わせた過渡的な政策。

しかし、1950年代に入るとソ連は綿花生産を優先し、大麻栽培は次第に縮小。また、1961年に国際連合が採択した麻薬に関する単一条約により、大麻製品へのアクセスが制限され、大麻生産はさらに減少しました。1970年代にはピーク時の半分にまで生産量が落ち込み、1980年代以降はTHC含有量の低い品種のみが栽培されるようになりました。

1991年にウクライナが独立すると、老朽化した技術や設備のまま大麻産業は低迷し、2009年には作付面積がわずか260ヘクタールにまで減少しました。しかし政府が「産業用大麻」の定義を明確にし、THC含有量0.08%以下の品種が対象となったことで、大麻産業は復活の兆しを見せ始めました。2016年には大麻作付面積が独立後最大の5,000ヘクタールに達しています。

近年、世界的なサステナビリティのトレンドを背景に大麻産業が再び注目を集めています。ウクライナ政府は2050年までに大麻とその製品の主要生産国になることを目指しており、今後の成長が期待されています。しかし、2023年時点での作付面積は1,800ヘクタールにとどまっており、目標達成には依然として課題が残っています。

ウクライナにおける大麻ビジネスについて

注目企業

ウクライナは近年、医療用大麻の合法化に踏み切っており、これから産業が活発化していくことと思われます。それとは別に長く続くヘンプ産業があり、今回はヘンプ企業のほうから3社をピックアップしてお届けします。

企業名

企業HP

Ma’Rijany Hemp Company

https://marijany.com.ua/

Ukrainian Hemp®

https://zionmedpharma.com.br/

Central Farming Ukraine LLC

http://cfarming.com.ua/

Ma’Rijany Hemp Company

Ma’Rijanyは、ヘンプ繊維の栽培から製品の製造・販売までを一貫して行う企業です。特に耐久性に優れた高品質な長繊維を生産しており、繊維産業や工業用途向けの製品に注力しています。彼らの持続可能な建材やバイオ複合材料は、建設業界でも注目されています。

Ukrainian Hemp®

Ukrainian Hempは、革新的な技術を用いて産業用ヘンプの栽培と加工を行う近代的な企業です。循環型経済の原則を取り入れ、効率的な生産サイクルを構築しています。チェルカースィには最新の工場と科学センター「Ukrainian Hemp Works®」を設け、環境に優しい製品を提供しています。自動車、建設、食品業界向けの製品に加え、暖房用ブリケットや断熱材なども生産しています。

Central Farming Ukraine LLC

Central Farmingは、ウクライナの主要地域で農作物を栽培している企業で、2015年から産業用ヘンプの種子栽培にも参入しました。小麦や大麦などの栽培と並行してヘンプの生産も拡大しており、ウクライナの農業分野において重要な役割を果たしています。

市場|CBDから嗜好用大麻まで

医療大麻の使用は合法化されましたが、医療大麻の国内生産には時間がかかるため、ウクライナは当面の間、輸入に頼らざるを得ないとMMJの記事内では述べられています。 医療大麻の国内栽培が開始されるのは、順調に進んでも2026年末か2027年初頭になると予想されています。 欧州の医療大麻に関する独立系アドバイザー・グルシェンコ氏によると、ウクライナでは、医療大麻は医薬品とみなされるため、輸入には既存の医薬品輸入に関する規則が適用される可能性が高いとのことです。

ニュース・レポート

CANNABIS INSIGHTではウクライナの大麻に関するニュースや情報を発信していきました。合法化に踏み切ったのには、戦争中であるという文脈があります。傷病についての研究は蓄積しており、そのなかで医療用大麻が大きな効果を発揮すると思われます。ここからもウクライナについて、情報を発信していきます。

▼ 過去に取り上げたニュース

ウクライナは国が戦争の渦中にあるにもかかわらず、政府が医療大麻法案を承認に向けて進めたことを発表しました。

【他の地域の大麻の状況について知る】

【参考記事・情報】

編集者

CANNABIS INSIGHT代表/編集長
世界の大麻・CBDのビジネスや経済情報を調べています。

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