アントラージュ効果という言葉を聞いたことがあるでしょうか? アントラージュ効果は、大麻に含まれる複数の化合物が協力し合い、単独での効果を超える働きを生む現象です。以降、様々な研究がこの効果の実証に取り組んでいます。
今回はこの現象について調査してみた結果を報告します。
本記事は日本国内での違法行為を幇助する目的はありません。学習や調査の参考情報としてご活用ください。THCは麻薬及び向精神薬取締法等の大麻関連法で厳しく規制されています。
アントラージュ効果とは

アントラージュ効果とは、カンナビノイドとテルペンなど、大麻に含まれる様々な化合物が相互作用することで、単独で作用する場合よりも大きな効果を発揮する現象のことです。
大麻におけるアントラージュ効果は、Mechoulam(メクラム博士)とBen-Shabatによって最初に提唱されました。この効果は、大麻草の全草抽出物が、精製されたカンナビノイドよりも優れた効果を持つといういくつかの研究によって報告されています。

情報源ではテルペンとカンナビノイドの組み合わせに関して、いくつかの具体例が挙げられています。
● ミルセンとインディカ種:
インディカ種の大麻は、ミルセンというテルペンを豊富に含んでいるとされています。ミルセンは、リラックス効果や不安軽減効果があるとされており、インディカ種の鎮静作用に寄与していると考えられています。
● リモネンとサティバ種:
サティバ種の大麻は、リモネンというテルペンを比較的多く含みます。リモネンは、覚醒作用や気分を高揚させる効果があるとされており、サティバ種の覚醒な効果に貢献していると考えられています。
サティバとインディカの違いについては以下に調査した記事がありますので、ぜひご覧ください。

この効果を実証するためには、さらなる研究が必要です。 特に、テルペンとカンナビノイドの組み合わせが、従来の薬理学的アプローチとどのように相互作用するかを調べる必要があります。
アントラージュ効果の実例
どのようにアントラージュ効果を実証するのでしょうか?
この効果は動物実験や生化学的な分析がなされており、一定の効果の報告がそこからなされています。
1. 行動実験
動物を使って、特定の物質がどのように不安やうつに影響を与えるかを調べます。例えば、マウスやラットに薬を与えて、不安が減ったり、うつの症状が軽くなるかを確認します。
- 不安: マウスがどれだけ不安に感じるかを迷路で測る実験などがあります。リモネンという成分が不安を減らすか、またラベンダーの成分が効果がないかを確認する実験がありました。
- うつ: 水に入ったラットがどれくらい動くかでうつの程度を調べます。CBDを投与されたラットは動きが増え、うつが軽くなることが示されました。
2. 生化学的分析
物質が脳や体の中でどんな化学変化を起こすかを調べる実験です。神経に関係する物質や酵素などにどんな影響を与えるかを分析します。
例として、CBDは脳内の「アナンダミド」という物質の働きを強める可能性があり、リモネンは脳の一部で抗酸化作用を持っていることがわかっています。
3. 臨床試験
実際に人に薬を使って効果を確認する実験です。ただ、カンナビノイドとテルペンの組み合わせに関する人を対象とした試験はまだ少ないです。ラベンダー精油を使った実験では、不安が軽くなることが確認されているため、これらの物質が気分障害に効果を持つ可能性があります。特に、どの組み合わせや量が最適か、人によってどう違うのかを調べることが重要です。
CBDとアントラージュ効果
CBD(カンナビジオール)は、気分障害、うつ病、不安、双極性障害の緩和に効果があるとされています。THCとは異なり、CBDには精神活性作用がないため、てんかんや多発性硬化症などの神経疾患にも有効であり、神経保護作用を持つと考えられています。またこの物質は日本でも利用可能です(2024年10月25日現在)。
CBDとテルペンの組み合わせによるアントラージュ効果は、気分安定効果をさらに高める可能性があります。テルペンがCBDの働きを補強することで、うつ病や不安、双極性障害の症状をより効果的に緩和できることが期待されています。この相乗効果により、治療効果が強化される可能性があると示唆されています。
まとめ
アントラージュ効果は、複数の化合物が組み合わさることで相乗的な効果を発揮し、単一成分よりも優れた治療効果が得られる可能性を示唆しています。今後の研究では、最適な成分の組み合わせや投与量を明らかにし、個人差に対応した治療法がさらに発展することが求められています。
参考文献
- Ferber SG, Namdar D, Hen-Shoval D, Eger G, Koltai H, Shoval G, Shbiro L, Weller A. The “Entourage Effect”: Terpenes Coupled with Cannabinoids for the Treatment of Mood Disorders and Anxiety Disorders. Curr Neuropharmacol. 2020;18(2):87-96. doi: 10.2174/1570159X17666190903103923. PMID: 31481004; PMCID: PMC7324885.