2025年11月15日から2025年11月21日の期間に世界の大麻・CBD業界で起きた出来事をまとめた『週刊大麻ニュース』をお届けします。大麻に関する合法化、政治、ビジネスなどのテーマを中心に取り扱っております。
※日本国内の違法行為を推奨するものではありません。
国際ヘンプ博覧会「JIHE 2025」新宿で開催
国際ヘンプ博覧会「JIHE(ジャイヘ)2025」が11月14日(金)・15日(土)、新宿の複合文化施設「LUMINE 0(NEWoMan Shinjuku 5F)」で開催された。展示とフォーラムを同一フロアに集約し、14日は事業者向け「BUSINESS DAY」、15日は一般来場者も対象の「COMMUNITY DAY」を実施。入場は事前登録制で無料(一部プログラムは有料)となった。開催概要やガイドブックは公式サイトで案内された。
登壇者は国内外から集い、国際セッション「JIHE Forum」や国内カンファレンス「CannaCon(カナコン)」で講演・討論を展開。フォーラムのゲストとして、登壇者は国内外から集結。カナコンでは次の面々が登壇した。
・山田耕平(Kohei Yamada)/キセキグループ株式会社 代表取締役CEO
・須藤晃通(Terry Sudo)/全国大麻商工業協議会 代表理事、株式会社CannaTech
・黒田岳士(Takashi Kuroda)/一般社団法人カンナビジオール安心・安全協議会
・太組一朗(Ichiro Takumi)/日本臨床カンナビノイド学会、聖マリアンナ医科大学 脳神経外科学 教授
・ステファン・モレールス(Stephan Moreels)/Control Union(タイ)
・室賀 豊(Yutaka Muroga)/株式会社 八幡屋礒五郎 代表取締役 九代目
このほか、国内外の大学研究者や医療者、行政OB、弁護士、薬剤師、メーカー/農業生産者、輸出入・物流の実務家など多彩な有識者が登壇。法改正後の制度運用、品質・トレーサビリティ、医療現場での使い方、海外展開やサプライチェーンの課題、環境負荷低減まで、分野横断で最新動向を共有した。
会場はJR新宿駅新南エリア直結のLUMINE 0。主催側は「法改正後の市場整備や規制動向、サステナブル素材としてのヘンプ活用まで、産業の“いま”を横断的に共有する」とし、来場者は製品体験からネットワーキングまで一体で参加できる設計とした。
トランプ政権が大麻取り締まり強化か 連邦検事「国立公園で吸う人も対象」
米ワイオミング州の連邦検事・Darin Smith 氏が、連邦政府(Donald Trump 政権)が大麻使用を「公共の安全上の危険(public safety hazard)」と見なしていると明言し、国有地や国立公園など連邦管轄地での大麻所持・使用に対して「厳正に起訴する」と発表した。州法で成人向け大麻が合法化されている地域であっても、連邦法下および連邦土地では大麻所持が犯罪となる姿勢を鮮明にした形だ。
Smith氏によれば、司法省は今年9月29日付で、前政権下で運用されていた「少量所持を起訴優先としない内部指針」を撤回したという。これを受け、国立公園で観光客が個人的に使用するケースなど、従来は軽微とされてきた行為であっても法執行の対象となる可能性が高まる。氏は「大麻所持は州法がどうであれ、連邦法下では依然として犯罪だ」「違反者にはあらゆる起訴手段を用いる」と述べ、取り締まり強化を明言した。
こうした方針に対し、議会および業界から強い批判も出ている。下院議員 Dina Titus 氏(D-NV)は、「少量の大麻所持を公共安全の脅威だとするのは時代遅れの法律で市民を起訴する口実にすぎない」と批判。合法化された産業を認め、連邦法上の大麻分類(スケジューリング)を見直すべきだと述べた。また、Marijuana Policy ProjectやNORML関係者は、「国立公園で友人と吸っている一般市民が対象となるのは税金と司法リソースの無駄だ」と反発している。
一方で、今回の起訴強化の動きは、連邦政府が大麻規制物質法(CSA)における分類を変更し、スケジュールIIIへ移行させる可能性を検討している動きと同時進行している。規制強化と制度緩和が交錯する過渡期であり、政策方向が揺れる中で法執行と制度改正が並行する形となっている。
今回の動きは、大麻合法州をまたぐ物流、国立公園を含む観光市場、越境サプライチェーンなど、米国市場を視野に入れた事業者にとって構造的リスクを示している。州法だけを根拠にした市場参入では不十分であり、連邦法・連邦管轄地におけるリスク設計が欠かせない。制度改革の可能性も残されているものの、短期的には摘発リスク、中長期的には制度変化の双方を織り込む必要がある。
最終的に、今回の方針転換は「大麻合法化が進む中でも、連邦レベルでは規制強化が再始動している」という重要なシグナルだ。米市場に関わる関係者は、州法と連邦法のギャップを前提にした事業設計・法務体制・コンプライアンス整備を求められるだろう。
大麻ベイパライザー市場、2032年に2.4兆円規模へ
世界の大麻用ベイパライザーマーケットが急速に拡大する見通しだ。最新レポートによると、2023年時点で約50.6億ドル(≒7,000億円)だった市場規模が、2032年には17.11 0億ドル(≒2.4兆円)になると予測されており、2024年~2032年の年平均成長率(CAGR)は14.53%に上る。
レポートを発表した調査機関 SNS Insider によれば、これを牽引する主因は大きく3つ。1つめは大麻の医療利用および成人用(レクリエーション)合法化が世界的に進んでいること。2つめは、従来の喫煙方式に代わる「ヴェイプ方式」への消費者需要。一部のユーザーには「煙ではなく蒸気で使いたい」という志向が強く、加熱技術の進化(コンベクション・インダクション式)も市場拡大を後押ししている。
装置タイプ別で見ると、携帯型ポータブルベイパライザーが2023年に市場全体の約69.6%を占めており、最も主要なカテゴリとなっている。乾燥ハーブ用デバイスも同年に約44.8%のシェアを持ち、ハイブリッド型(ハーブ+濃縮物)装置が今後最速で成長すると予測されている。また、加熱方式別では「コンダクション(直接加熱)」方式が2023年に約43.2%を占有、またバッテリー駆動型設備が64.7%を占めた。
地域別では、北米が2023年に世界市場の約37.2%を占め、合法化が進む米国・カナダが中心となっている。アジア太平洋地域は2024年~2032年の期間で最も高い成長率が見込まれており、法規制緩和の動きがある日本・韓国・タイなどが注目されている。
こうした成長ペースは、関連事業者にとって新たなビジネスチャンスを示すと同時に、ヘンプ/カンナビノイド原料バンク構想やデバイス連動サービスを検討する企業にとっては戦略設計の見直しを促す内容となる。デバイス・原料・サプライチェーン・流通インフラが一体で変化しており、参入タイミングを誤ると競争激化の波に飲まれる可能性もある。
一方で、レポートも規制の地域差や安全性懸念を成長リスクとして挙げており、各国の法制度・輸出入規制・品質管理・トレーサビリティ体制など、規制面・技術面・物流面の壁が依然存在する。そのため、急成長の裏にある「参入ハードル」を軽視すべきではない。
この市場の動きは、従来の大麻消費構造を変える“デバイス化”トレンドの波を捉えたものであり、特にグローバル展開を視野に入れるプレーヤーには「今動く」「次を見据える」の両軸で戦略を講じる必要がある。
参考記事:Cannabis Vaporizer Market Projected To Reach $17.11 Billion By 2032(International CBC)



