本記事は、CBD部アドベントカレンダー企画の一環として執筆され、大麻・CBDのビジネスや経済ニュースを配信する「CANNABIS INSIGHT」が、2024年から2025年にかけての主なトピックを分析し、各国のトレンドをお届けする内容となっています。
今回は、2024年4月20日から2025年3月20日までの約1年間に起きた大麻・CBDに関するニュースを振り返り、アメリカ、日本、ドイツ、カナダ、タイの5カ国を中心に、各国の現状をお伝えしたいと思います。
世界の大麻・CBD市場がどのように変化しているのか、新たな気づきを得ていただけると嬉しいです。
CBDアドベントカレンダーとは?
3月24日〜4月20日の28日間にかけて、CBDに関わる様々な方々がCBD/麻に関する知見や熱い思いに関するブログ記事(もしくは動画)を日替わりで発信、そこから生まれる知見共有や議論によりCBD/麻産業を盛り上げるきっかけをつくりたいという趣旨です。
アドベントカレンダー企画は、通常クリスマス時期に開催されることが多いですが、今回の日付の設定理由としては、Japan CBD Day(※)である3月24日を開始日、CBDの由来である大麻を祝う日である4月20日を最終日としました。
新たにCBDに興味を持つ方が増えたり、既にCBDを好きな方がCBDに関する知見を更に深めたり、家族や友人との間でCBDに関する会話が始まったりと、何かCBD/麻産業が盛り上がるきっかけの一つになれば嬉しいです。

アメリカ合衆国:連邦と州で進む議論
アメリカではこの1年間、嗜好用大麻をめぐる連邦政府と州政府の動きが注目を集めました。連邦レベルでは依然として違法のままですが、トランプ大統領に変わり、大麻政策への注目が高まっています。
2024年4月20日(通称「420の日」)には、バイデン大統領が大麻に関するユーモアを交えたSNS投稿を行い話題に。一方で、トランプ前大統領も嗜好用大麻の非犯罪化に前向きな発言をしたとされ、関連株が急騰する場面もありました。さらに、トランプ陣営からは州レベルの合法化を覆す可能性に言及する声が上がり、DEA(麻薬取締局)の新長官が大麻に否定的な姿勢を示すなど、政権によるスタンスの違いが浮き彫りになっています。
州レベルでは合法化がさらに進み、合法州と非合法州の差が拡大しています。2024年11月の大統領選に向け、各地で法案審議や住民投票が行われ、ニューハンプシャー州では嗜好用大麻の合法化法案が下院を通過。一方でハワイ州では再び否決されるなど、対応は州によって異なります。
違法市場の問題も続いており、2025年2月には連邦政府が各州の合法市場と違法市場の実態を報告。例えばイリノイ州では2024年の大麻税収が5億ドル(約650億円)と過去最高を記録した一方、カリフォルニア州では違法な高濃度THC製品や合成カンナビノイドの流通が問題視されています。
医療・研究分野でも動きがあり、米国立薬物乱用研究所(NIDA)は大麻政策研究の新たな方針を発表。大麻の医療効果や公衆衛生への影響に関する本格調査が進められています。また、「大麻使用でアルコール摂取が減る」という調査結果や、睡眠薬より大麻を選ぶ人が多いという統計も報じられました。
医薬品分野では、米FDAが大麻由来の自閉症治療薬の承認申請を受理したことがニュースとなり、医療利用の可能性も注目されています。
産業面ではアメリカが引き続き世界最大の大麻市場として成長中です。2025年1月時点で月間売上は3,000億円を超え、従事者数は約44万人に。ニューヨーク州では店舗数が急増し、2025年初めには275店から625店以上へと倍増しました。イリノイやミズーリなど新たに合法化した州でも市場が活発化しています。
一方で業界再編も進み、「Leafly」のNASDAQ上場廃止やマーケティング団体の閉鎖など淘汰も起きています。そんな中、DoorDashがヘンプ由来製品の取り扱いを始めるなど、新たな企業の参入も見られました。
このようにアメリカでは、政策、産業、研究といったさまざまな分野で動きがあり、引き続き世界の大麻市場をリードする存在となっています。
カナダ:合法化5年目の課題
世界で2番目に嗜好用大麻を合法化したカナダでは、産業の成熟とともにさまざまな課題が浮き彫りになっています。合法化から5年以上が経ち、市場は安定成長を続ける一方で、供給過剰や業界再編が進んでいます。
市場規模は堅調で、2024年末には月間売上が約425億円に達し、前年同月比でも増加傾向にあります。また、国民の52%が大麻合法化をトルドー首相の最大の功績と評価するなど、社会的な受け入れも広がっています。
しかし、供給過多により在庫が積み上がり、2024年には約5,370万個の大麻製品が売れ残ったと報じられました。生産者数も減少が続き、競争の激化により小規模事業者の撤退が相次いでいます。有名ブランド「Tokyo Smoke」も29店舗の閉鎖を発表しました。
こうした背景から、政府は税制や規制の見直しに着手。2024年6月には大麻法改正案を提出し、12月には物品税改革案も公表されました。CBDを含む保健食品への対応についても、カナダ保健省が新たな指針の策定を進めています。
また、違法市場対策として基準を超える農薬が検出された製品の摘発など、品質管理の強化も進められています。一方、アルバータ州ではUber Eatsによる大麻宅配が解禁されるなど、消費者向けサービスの拡充も進行中です。
国際展開も活発で、大手のTilrayやAuroraはドイツで医療用大麻の生産を開始。さらに、タバコ大手から約136億円の資金を調達するなど、異業種との連携も注目されています。
カナダは今、合法化後の安定期に入り、市場の持続性を模索する段階にあります。課題に対応しながらも成熟を続けるカナダの取り組みは、他国の参考例として今後も注目されるでしょう。
ドイツ:段階的な合法化と医療市場の拡大
EU最大の経済国ドイツでは、嗜好用大麻の段階的な合法化が本格的に進みました。2023年に策定された大麻合法化の予定に基づき、まず「大麻ソーシャルクラブ」を通じた限定的な大麻解禁がスタート。2024年7月には国内初のクラブが承認され、年末までに合計83件が認可されました。これにより、一部地域では登録会員がクラブを通じて少量の大麻を取得・使用できるようになっています。
ただし、制度導入にあたっては課題も浮上しています。申請が急増したことで行政手続きの遅れや違法営業が発生。ドイツ政府は商業化を抑えつつ、安全な供給体制の構築に取り組んでおり、2024年7月には過剰生産を防ぐ計画も発表されました。
医療用大麻の需要も大きく拡大し、2024年の年間売上は約600億円に。輸入量は前年比で70%増となり、供給体制が強化されています。国内生産も進んでおり、Tilray傘下やカナダのAuroraなどがドイツ国内での栽培と出荷を実現し、安定供給の基盤が整いつつあります。
こうした動きはEU諸国にも影響を与えており、2024年10月には欧州5カ国による大麻規制の合同会議が開催。ドイツ型の「クラブ方式」が参考モデルとして取り上げられました。フランスでは国民投票の提案が浮上し、チェコでも嗜好用大麻の解禁に向けた議論が進行中です。
2025年にはドイツで連邦総選挙が予定されており、政権交代による政策の変化も注目されています。現政権(信号連立)は合法化推進派ですが、すでに始まった制度や医療市場の拡大を踏まえると、方向転換は難しいとの見方が強まっています。今後は制度の改善や適切な規制の運用に焦点が移っていくと見られます。
総じてドイツは、段階的な合法化と医療・産業両面での市場育成を両立しながら、欧州の大麻政策をリードする存在となっています。
日本:法改正とCBD市場の成長
日本でもこの1年、大麻規制に関する大きな変化がありました。2023年に成立した大麻取締法の改正が2024年12月12日に施行され、「大麻使用罪」が新設された一方で、医療大麻に関する整備も始まりました。使用罪は乱用防止を目的としたものですが、医療用途については厚生労働省が承認制度の検討を進めています。
CBD製品に関しても注目が集まりました。市場規模は2024年に約240億円と推計され、化粧品や食品への応用が広がる中、規制の転換も進められました。従来の「使用部位」による規制から、THCの含有量に基づく成分規制へ移行する方針が示され、業界では輸入原料の検査や製造工程の見直しが進んでいます。
違法薬物対策でも動きがありました。2025年2月には、東京地裁が違法な捜査手続きに対し、東京都に賠償を命じる異例の判決を下しました。取り締まり強化が進む一方で、捜査手続の適正性にも注目が集まっています。また、若年層対策として2025年3月からは改正薬機法が施行され、SNS上での薬物売買情報の発信が禁止(プラットフォーム規制)されるなど、新たな対策も講じられています。
国際的な対応では、嗜好用大麻が合法の国から来日する外国人への注意喚起が行われました。2025年のMLB日本開催時には、米国務省が「大麻を日本に持ち込まないように」と異例の警告を発し、日本の厳しい規制を改めて世界に示す形となりました。
総じてこの1年は、日本が大麻政策を大きく見直した転換期でした。引き続き厳格な取り締まりを維持しつつも、医療利用やCBDビジネスの可能性にも目を向ける、日本独自のアプローチが進んでいます。今後、医療用大麻の実用化と、CBD市場の健全な発展にどうつなげていくかが注目されます。
タイ:合法化後の見直しと国内議論の変化
東南アジアで初めて嗜好用大麻を実質的に合法化したタイでは、この1年で政策の方向転換が進みました。2022年の解禁以降、無規制状態への国内外の批判が高まり、2023年に発足した新政権は大麻を再び規制薬物に戻す方針を打ち出しました。
2024年5月には「12月から嗜好目的の使用を禁止する」との政府方針が報じられ、これに対し市民や事業者が反発。再規制に反対するデモや署名活動も起こりました。一方で、世論調査では6割以上が再び薬物指定に賛成と回答するなど、タイ国内では意見が大きく分かれています。
その後、完全禁止ではなく「医療用は合法・嗜好用は禁止」とする折衷案が検討され、2024年9月には新法案の草案が発表されました。正式な法整備は2025年に持ち越されましたが、タイ政府は乱用を防ぎつつ医療・経済的な利点を残す形での制度再構築を目指しています。
一方で、大麻を活用したビジネスの動きも続いています。2024年9月には、南部のリゾート地でアジア初となる「大麻リトリート(体験型宿泊施設)」が登場し、新たな観光資源として注目されました。また、タイ企業「Dr. CBD」がマレーシア市場への進出を計画するなど、海外展開の動きも進んでいます。
タイは現在、解禁から規制強化へと揺れ動く中で、持続可能な大麻制度を模索している段階にあります。依然として東南アジアで最も進んだ大麻政策を持つ国として、他国にとっても「合法化後に何が起こるのか」を示す重要なケースとして注目されています。
その他の国・地域の動向
欧州(ドイツ以外)
フランスでは、国民投票による大麻合法化の是非を問う提案や、超党派議員による合法化法案の提出など、議会内での動きが活発化しました。スイスでも、国会委員会が嗜好用大麻合法化案を提出し、本格的な法改正に向けた議論が進行中です。チェコでは、既存の医療用に加え、低THC製品の販売制度や個人栽培の制限導入が検討されています。
スペインは2025年夏までに医療用大麻規制の緩和が見込まれており、欧州全体で「医療利用の拡大」と「慎重な嗜好利用の容認」という流れが広がっています。イタリアでは政府の対応が混乱する中、裁判所がCBD製品の禁止処分を無効と判断。EU司法裁判所の判断に基づく動きが見られました。
英国・アイルランド
英国では、医療大麻の患者数増加やヘンプ建材の実用化など、産業・医療面での前進がある一方で、嗜好用の合法化には依然慎重な姿勢が続いています。ただし、最新の世論調査では55%の国民が合法化または非犯罪化を支持しており、意識の変化も見られます。医療大麻の栽培・輸出では、英国企業が世界シェアの約45%を占めるなど、国際市場での存在感は大きいです。隣国アイルランドでは、ドイツのようなモデルを参考にした合法化の検討が始まっています。
中南米
コロンビアは約135億円を投資して大麻・ヘンプ産業の成長を促進し、「大麻供給国」としての地位を確立しつつあります。ペトロ大統領は嗜好用合法化にも意欲的です。ブラジルでは最高裁が個人使用の非犯罪化を判断し、市民による支持デモも発生しました。農業機関による長期栽培研究の開始など、将来の合法化を見据えた動きも進行中です。
一方、アルゼンチンでは政権交代により方針転換があり、2025年2月には産業用大麻ライセンスを一斉取り消し。不正許可の見直しが背景にあります。またベリーズやアンティグア・バーブーダでは、大麻関連の前科抹消を進める法改正が行われ、社会復帰支援が強化されました。ウルグアイでは、商業採算の難しさから事業撤退が相次いでいるとも報じられ、地域ごとの課題が浮き彫りになっています。
アフリカ・中東
南アフリカでは、大麻の私的使用を合法化する法案に大統領が署名し、正式に施行されましたが、警察による不当な所持逮捕が続き、人権委員会が懸念を表明しました。モロッコでは、医療・産業用大麻の合法化後にライセンス発行が急増し、関連の受刑者約5,000人に恩赦が与えられるなど、政策の進展が続いています。特に欧州向けの供給国として注目されています。
ルワンダでは大麻生産施設の新設が進められ、ナミビアでは大麻禁止が憲法違反かを問う裁判が始まるなど、各国で法整備の動きが見られます。中東では厳しい規制が続くものの、イスラエルでは医療研究や宗教との整合性をめぐる議論が行われており、独自の展開を見せています。
編集後記
CANNABIS INSIGHTではこれまで1000以上の世界の大麻・CBDニュースを取り上げてきました。数百件のニュースをピックアップすると世界の大麻・CBDの傾向が見えてきます。そこで見えたことを今回のCBDアドベントカレンダーではお届けしてみました。一年を通すと世界の大麻・CBD業界は動いているなと。また日本国内でも良くも悪くも大麻規制が変わるつつあることから「停滞」ではなく、「変化」していることを感じられます。2025年はどのような年になるのか、CANNABIS INSIGHTは引き続き大麻・CBDニュースを追いかけていきます。


