世界の大麻用ベイパライザーマーケットが急速に拡大する見通しだ。最新レポートによると、2023年時点で約50.6億ドル(≒7,000億円)だった市場規模が、2032年には17.11 0億ドル(≒2.4兆円)になると予測されており、2024年~2032年の年平均成長率(CAGR)は14.53%に上る。
レポートを発表した調査機関 SNS Insider によれば、これを牽引する主因は大きく3つ。1つめは大麻の医療利用および成人用(レクリエーション)合法化が世界的に進んでいること。2つめは、従来の喫煙方式に代わる「ヴェイプ方式」への消費者需要。一部のユーザーには「煙ではなく蒸気で使いたい」という志向が強く、加熱技術の進化(コンベクション・インダクション式)も市場拡大を後押ししている。
装置タイプ別で見ると、携帯型ポータブルベイパライザーが2023年に市場全体の約69.6%を占めており、最も主要なカテゴリとなっている。乾燥ハーブ用デバイスも同年に約44.8%のシェアを持ち、ハイブリッド型(ハーブ+濃縮物)装置が今後最速で成長すると予測されている。また、加熱方式別では「コンダクション(直接加熱)」方式が2023年に約43.2%を占有、またバッテリー駆動型設備が64.7%を占めた。
地域別では、北米が2023年に世界市場の約37.2%を占め、合法化が進む米国・カナダが中心となっている。アジア太平洋地域は2024年~2032年の期間で最も高い成長率が見込まれており、法規制緩和の動きがある日本・韓国・タイなどが注目されている。
こうした成長ペースは、関連事業者にとって新たなビジネスチャンスを示すと同時に、ヘンプ/カンナビノイド原料バンク構想やデバイス連動サービスを検討する企業にとっては戦略設計の見直しを促す内容となる。デバイス・原料・サプライチェーン・流通インフラが一体で変化しており、参入タイミングを誤ると競争激化の波に飲まれる可能性もある。
一方で、レポートも規制の地域差や安全性懸念を成長リスクとして挙げており、各国の法制度・輸出入規制・品質管理・トレーサビリティ体制など、規制面・技術面・物流面の壁が依然存在する。そのため、急成長の裏にある「参入ハードル」を軽視すべきではない。
この市場の動きは、従来の大麻消費構造を変える“デバイス化”トレンドの波を捉えたものであり、特にグローバル展開を視野に入れるプレーヤーには「今動く」「次を見据える」の両軸で戦略を講じる必要がある。
参考記事:Cannabis Vaporizer Market Projected To Reach $17.11 Billion By 2032(International CBC)



