大麻・CBDをビジネス・産業・科学の視点から語るポッドキャスト「ASAラジオ」第3回(後半)を記事化した。前半に続き、710 Network代表・鈴木氏と天野開翔氏をゲストに迎え、①CRD原料の製造コストと1ppm規制の壁、②アメリカのディスペンサリー視察レポート、③合成カンナビノイドの非合法州での実態、④日本産ヘンプからのCBD抽出の可能性、⑤COA(成分分析書)のCBD100%表記の正しい読み方の5テーマを取り上げる。動画とあわせてご覧いただきたい。
710 Network 代表。23歳。小学生のころからイギリス・マルタ・フィリピンなど各国で生活し、17歳で帰国。フリーランスのウェブデザイナーとして活動後、CBD・カンナビノイド業界に参入。ローリングペーパー「Mascotte」の日本展開、カリフォルニアブランド「SevenLeaves」の日本市場参入支援、ヘンプ100%のCRDディスティレート輸入販売を手がける。
KCAラボジャパン / Operations Manager
国立大学法人電気通信大学 情報理工学域卒業。化学生命プログラムにてホタルルシフェリン類縁体の発光基質に関する研究に従事。現在はKCAラボジャパンにてカンナビノイド分析や品質管理に関わる業務を担当。CBDやカンナビノイドの分析・規格・科学的知見をベースに、業界の品質基準や技術的理解の向上に取り組んでいる。
アサバンク / CANNABIS INSIGHT 代表
大麻・CBDのビジネス、経済、規制動向を扱う専門メディア「CANNABIS INSIGHT」代表。日本国内および海外のカンナビノイド産業、ヘンプ産業の市場動向や政策、企業動向を取材・発信している。また、CBD原料の比較・マッチングプラットフォーム「アサバンク(ASABANK)」を運営している。
CRD製造と1ppm規制——コストという現実の壁
前半に続き、CRD(Crystal Resistant Distillate)の製造技術と、日本特有の規制環境が原料供給にどう影響しているかが議論された。ヘンプ由来の原料をクルードオイルから精製していく工程では、エバポレーション(水蒸気蒸留)でまず不純物を取り除き、その後クロマトグラフィーで成分を分離・精製するのが基本的な流れだ。
THC 1ppm規制がもたらすコスト負担
日本では2023年以降、CBD製品中のTHC含有量について1ppm以下という厳格な基準が求められるようになった。この水準をクリアするには高度な精製技術と設備投資が必要で、技術的には達成可能でもコスト面での壁が大きい。「1ppmをターゲットにすると、コスト的に見合わないからやってないというのが正直なところだと思う」と鈴木氏は話す。
一方、710 Networkが取り扱うラスベガスのラボ「Cannvitol」は、日本市場への長期的な投資として採算度外視で対応しているという。「ヨーロッパでのビジネスが確立しているから、日本に投資する余裕がある。短期間で稼ごうとするのではなく、まず品質と信頼を広めることを優先している」。CBD業界を長期的な産業として育てる姿勢が、原料の安定供給を支えている。
規制強化後も続く市場——長期視点の重要性
1ppm規制が発表された時点でCBD業界から撤退した事業者がいる一方、規制を乗り越えて長期的に取り組む事業者も存在する。「短期間で稼いで撤退するか、ちゃんと産業として根付かせるかの分かれ目になった」という見方も示された。規制の壁を越えた先にある市場の可能性をどう評価するかが、事業者としての姿勢を問うことになる。CRD原料に関する詳細はASAラジオ #3|CRDとは何か?CBDの嗜好・医療用途とチェコ大麻政策を解説もあわせてご覧いただきたい。
アメリカのディスペンサリー視察——カリフォルニア・ワシントン・オレゴン
鈴木氏はアメリカのカリフォルニア・ワシントン・オレゴンの3州を巡り、現地のディスペンサリー(大麻小売店)を視察した。いずれの州も嗜好品としての大麻使用が合法化されており、州によって店舗の運用スタイルや入店プロセスに違いがあることが分かった。
医療用と嗜好品用が「2店舗」ある
ワシントン州で話を聞いたあるディスペンサリーは、かつて隣接する2店舗で医療用と嗜好品用を分けて営業していたという。「医療患者は一般の嗜好品ユーザーと同じ場所にいたくないという声があったから分けていた。でも今は1店舗に統合した」とのことだった。医療目的と嗜好目的の双方のニーズに対応しながら、運用を柔軟に進化させてきた歴史が垣間見える。
入店プロセスと品揃えの州ごとの違い
ディスペンサリーへの入店プロセスは州や店舗によって異なる。ある店舗では入口に受付があり、最初に個人情報を登録してから入店するスタイルを採っていた。一方、別の州では入口で身分証を確認するだけで入店できるシンプルな運用だった。いずれも21歳以上であることの確認は共通している。
品揃えについては、フラワー(花穂)・ワックス・シャッター(濃縮製品)などは置いてあるが、日本で普及しているベイプカートリッジはほとんど見かけなかったという。「なぜ置いていないのか不思議だったが、おそらく何らかの規制上の理由があるのだと思う」と鈴木氏は語る。
合成カンナビノイドの非合法州での実態——HHCとアルタノイド
嗜好品としての大麻がまだ違法な州では、HHC(ヘキサヒドロカンナビノール)やTCPなどの合成カンナビノイドが流通していたという。かつてはガソリンスタンドでも購入できるほど広まっていたが、規制強化により現在は縮小傾向にある。
興味深いのは、ベイプリキッドを自作するコミュニティの存在だ。「オンラインコミュニティで、こういう配合でやったらいいよというノウハウが共有されている。成分の特徴を理解した上でDIYしている人たちがいる」と鈴木氏は紹介する。こうした動きは、合法製品が手に入りにくい規制環境下でのユーザーの対応策として生まれているものだ。
日本では、HHCをはじめとする合成カンナビノイドは順次指定薬物に指定されており、使用・所持は法律により規制されている。アメリカでもTHC由来でない合成カンナビノイドの扱いは州ごとに異なり、一律に「合法」とは言えない複雑な状況が続いている。
日本産ヘンプからのCBD抽出——2024年法改正が開いた可能性
日本国内での産業用ヘンプをめぐる状況が、2024年の法改正を機に変わりつつある。改正では、THC含有量が0.3%以下のヘンプ草を「ヘンプ」として扱う区分が設けられた。これにより、国産ヘンプからCBDを抽出する取り組みが、一定の条件のもとで可能になった。
麻薬研究者免許があれば抽出が可能に
ヘンプからテルペンやCBDを抽出する行為は、従来は大麻取締法ではなく麻薬及び向精神薬取締法の管轄となっており、麻薬研究者免許が必要だ。この条件さえクリアすれば、国産ヘンプを原料としたCBD製品の製造が一応可能な法的環境が整ったことになる。「実際にその免許を持って取り組みを始めている方もいる」と語られ、国内での生産基盤整備に向けた動きが始まっていることが示された。
一方で、産業用ヘンプの出口としての課題も指摘された。「ヘンプはたくさん収穫できるが、取れたものをどう使うかが課題になっている」という声があるように、栽培から製品化までのサプライチェーン整備はまだ途上にある。詳しくはヘンプ・産業用大麻カテゴリの記事もあわせてご覧いただきたい。
アメリカとの制度比較——ヘンプとマリファナの区分
アメリカでもヘンプとマリファナの区別はTHC含有量0.3%が基準となっており、日本の2024年改正と同じ水準だ。「アメリカはマリファナの運用もしているから、同じ0.3%という数字でヘンプとマリファナを分けているだけの話」と説明された。日本が嗜好品大麻の合法化に至っていない中でも、法令の枠組みはグローバルなスタンダードに近づきつつある。
COAのCBD100%表記——正しい読み方を知る
第三者機関による成分分析書(COA:Certificate of Analysis)に「CBD 100%」と記載されている製品を見かけることがある。この表記の正確な意味について、KCAラボジャパンの天野氏が解説した。
100%は「他の成分が検出限界以下」を意味する
「CBD 100%」という表記は、THCなど他の成分が「検出されなかった」ことを示しているのであって、CBDが文字通り100%存在することを証明しているわけではない。検査機器の検出限界(LOD:Limit of Detection)以下の微量な成分は「不検出」として扱われる。
実際の分析値では「99.何%」という数値が出ることが多く、測定誤差の範囲で101%と表示されることすらある。天野氏は「絶対にTHCが入っていないという証明にはならない。検出限界以下というだけで、微量に含まれている可能性は否定できない」と説明する。
CBD製品を選ぶ際は、COAの「CBD 100%」という表記を過信せず、検出限界値(LOD・LOQ)の記載があるかどうか、信頼性の高い第三者機関が発行したものかどうかを確認することが重要だ。CBD製品の成分と品質の見方についてはCBDとは?カンナビジオールの基礎から事業者向け実務情報まで完全解説もあわせてご覧いただきたい。
まとめ
ASAラジオ第3回後半では、CRDの1ppm規制対応コスト、アメリカのディスペンサリー視察レポート、合成カンナビノイドの非合法州での実態、日本の法改正が開いた国産CBD生産の可能性、そしてCOA表記の正しい読み方と、幅広いテーマが議論された。
日本のCBD市場は規制の壁が高い一方で、法整備の進展により新たな可能性も生まれつつある。海外の最新状況を直接目で確認し、国内市場に応用していく視点こそが、今の業界関係者に求められている姿勢といえる。CANNABIS INSIGHTでは引き続き、業界の最前線を発信していく。
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