大麻・CBDをビジネス・産業・科学の視点から語るポッドキャスト「ASAラジオ」第4回を記事化した。今回は、
710 Network代表・鈴木氏(23歳)をゲストに迎え、①ヨーロッパ育ちがもたらす「言語×専門知識」の強み、②ローリングペーパー「Mascotte」の日本展開の経緯、③海外ブランドの日本市場参入支援、④CRDディスティレートの製造工程と品質の4テーマを取り上げる。動画とあわせてご覧いただきたい。
KCAラボジャパン / Operations Manager
国立大学法人電気通信大学 情報理工学域卒業。化学生命プログラムにてホタルルシフェリン類縁体の発光基質に関する研究に従事。大学では有機化学・生化学を中心に学び、研究分野では分子レベルでの生体反応の解析に取り組む。
現在はKCAラボジャパンにて、カンナビノイド分析や品質管理に関わる業務を担当。CBDやカンナビノイドの分析・規格・科学的知見をベースに、業界の品質基準や技術的理解の向上に取り組んでいる。
ポッドキャスト「ASAラジオ」では、カンナビノイドの科学的背景や研究動向、原料技術などを分かりやすく解説している。
アサバンク / CANNABIS INSIGHT 代表
大麻・CBDのビジネス、経済、規制動向を扱う専門メディア「CANNABIS INSIGHT」代表。日本国内および海外のカンナビノイド産業、ヘンプ産業の市場動向や政策、企業動向を取材・発信している。
また、CBD原料の比較・マッチングプラットフォーム「アサバンク(ASABANK)」を運営。CBD事業者やメーカー向けに、原料調達やサプライヤー選定の情報プラットフォーム構築を進めている。
ヨーロッパ育ちがもたらす「言語×専門知識」の強み
鈴木氏は小学生のころからイギリス・マルタ・フィリピンなど各国で生活し、17歳で帰国した。イギリスでは現地の学校に通い、各国の人々との交流を重ねる中で、異文化コミュニケーションへの感覚を自然に身につけていった。「学校に行くよりも人と話すのが好きだった。各国の人の特徴が、今の海外との取引にすごく役立っている」と語る。
日本のCBD業界における言語の壁
帰国後、フリーランスのウェブデザイナーとして活動していた鈴木氏が、CBD・カンナビノイド業界に目を向けたのは「自分にしかできない仕事を探していた」からだ。「ウェブデザインはAIも出てきているし、母数が多い。自分以外でも代用できる仕事だと思った」と振り返る。
そこで着目したのが、海外からの参入企業が多い日本のCBD業界が抱える「言語の壁」だ。「CBD産業で使う言葉は専門的で、英語から日本語に翻訳する際に100%伝わらないことが多い。英語を話せるだけでなく、カンナビノイドの専門知識も必要。そのどちらもわかる人間が、まだほとんどいない」と話す。
英語力に加え、カンナビノイドの専門知識を独自に習得した鈴木氏は、アメリカの教育機関「MM411」のコースで体系的に学びを深め、海外事業者との専門的な交渉を担えるポジションを確立した。現在は原料の輸入販売・テルペン(香り成分)の取り扱い・海外ブランドの日本展開コンサルティングを手がけている。
「伸び代のある業界」への直感
鈴木氏がCBD業界に飛び込んだもうひとつの理由は、業界の可能性への直感だ。「ヨーロッパに長くいたので、大麻は身近なものだった。ただ、日本に帰ってきた時はTHCしか知らなかった。CBDというものがあると知った時、THCとは違う切り口で業界に入れると思ったし、本当に伸び代のある業界だと感じた」と語る。
CBDが日本に本格的に浸透し始めたのはここ数年のことであり、市場形成の初期段階から参入できたことが、鈴木氏の現在のポジションを支えている。詳しくはCBDとは?カンナビジオールの基礎から事業者向け実務情報まで完全解説もあわせてご覧いただきたい。
喫煙所での出会いが生んだローリングペーパー事業
鈴木氏の事業の柱のひとつが、オランダの老舗ローリングペーパーブランド「Mascotte(マスコット)」の日本展開だ。100年以上の歴史を持つ同ブランドとの出会いは、2023年に開催されたCBD業界イベント「CBD Journey」の喫煙所だった。
CBDジャーニーの喫煙所から始まった縁
「その時はペーパーに詳しくなかったが、喫煙所でたまたま隣になった世田谷区のコーヒーショップ『Mellow Yellow』の代表が、オランダのペーパーが欲しいという話をしていた」と鈴木氏は振り返る。その場の流れで、「とりあえずMascotte本社に連絡してみる」と伝えたことが事業の起点となった。
「Mascotteに連絡したら、担当者がすぐに来日してくれた。そこから本格的に話が進んだ」。偶然の出会いをチャンスとして即座に行動に移したことが、その後の事業展開につながっていった。「本当に人との巡り合わせ。自分一人では何もできない」と鈴木氏は語る。
全国のタバコ屋から音楽イベントへ
現在、Mascotteは全国のタバコ店を中心に展開しており、ラインナップはレギュラーサイズからキングサイズ・クイーンサイズ・グラインダーまで拡充している。「元々は輸入会社の方がいて、その方とパートナーとして協力体制でやっている。タバコ屋担当とそれ以外で担当分野を分けている」という。
今後はCBDショップや音楽イベントへの出展も視野に入れている。ペーパーには根強いブランドロイヤルティがあり、「タバコと同じように、絶対これというこだわりがある。Mascotteがその選択肢のひとつとして定着してほしい」と話す。
海外ブランドの日本窓口として——SevenLeavesとタイとの連携
コンサルティング事業では、日本市場への参入を検討する海外CBD・カンナビノイドブランドの日本側窓口として機能している。カリフォルニアのブランド「SevenLeaves(セブンリーブス)」やタイのウェルネス系ブランドとの商談が現在進行中だ。
「ただの代理店」ではなくプロデューサー型アプローチ
「代理店として海外の商品を持ってきて日本で売るだけならつまらない。せっかく日本向けに出すなら、商品設計の段階から関わって、日本市場用にカスタマイズしたオリジナルを出したい」というのが鈴木氏のスタンスだ。
SevenLeavesのベイプ製品開発では、実際にアメリカのラボへ直接出向き、テルペンを一種類ずつ試して配合を決めていったという。「これがいい、これは違うと自分の目と感覚で確かめた。自分で確認した商品は、自信を持って提供できる」。日本向けには日本語表記を入れた専用パッケージを制作し、デザインをカスタマイズした上で展開している。
現地在住だから伝えられるリアルな情報
海外事業者から見た日本市場参入の壁は、最新の法令状況と市場実態の把握だ。「日本に今住んでいるので、今どんな商品が売れているか、法令はどう変わっているかをリアルに説明できる。それが強み」と話す。
日本のCBD市場の最新動向は、CANNABIS INSIGHTでも継続的に取り上げている。海外事業者が日本市場に参入する際の法令情報については、CBD原料の輸入手続き完全ガイドも参考にされたい。
ヨーロッパでの大麻文化——タバコやお酒と同じ「嗜好品」
鈴木氏が長く過ごしたヨーロッパでは、大麻はタバコやアルコールと同様の嗜好品として扱われている文化圏も多い。「マルタはビーチで吸っている人が珍しくなく、警察も容認スタンスだった。親と一緒に吸っている友人もいた。昔から生活の一部だった」と語る。
ヨーロッパのマクドナルドで、Uber Eatsのドライバーたちが店の前でジョイントを回している光景も目にした。「日本で言えば、高校生がタバコやお酒に興味を持ち始める感覚に近い。毎日というわけでなく、友達と遊ぶ時の楽しみのひとつとして扱われていた」という。
一方、フィリピンでは事情が全く異なった。「テルテ大統領の時代は、ドラッグ関連は撃っていいと宣言されるような状況だった。同じ海外でも、国によって全く違う」。この対比が、法律と文化・実態の複雑な関係を体感させる経験となった。
日本においては大麻草の使用・所持は法律により規制されており、本記事は国内外のカンナビノイド産業の動向および業界関係者の見解を紹介するものである。合法化と非犯罪化の違いについては世界の大麻合法化の動向もあわせてご覧いただきたい。
TS BotanicalのCRD原料——ヘンプ100%、添加物ゼロ
後半では、TS Botanicalが取り扱うCRD(Crystal Resistant Distillate:結晶化しにくいディスティレート)原料について詳しく解説された。この原料は、ラスベガスのラボ「Cannvitol(キャンビトル)」が製造するヘンプ100%のCRDだ。
CRDとは何か——製造工程の基礎
CRDを理解するには、ヘンプ原料がどのように加工されるかを知る必要がある。まずヘンプから抽出した「クルードオイル」(非常に濃い黒っぽい油)を生成していくと「ディスティレート」ができあがる。この段階でCBD含有率はおよそ90%以上。さらに精製するとCBDアイソレート(純度99%以上の粉末)が得られる。
鈴木氏はこの工程を「作っているというより洗っている」と表現する。「不純物をこしてこしてピュアなものにしていく。ザルで不純物を取り除き続けるようなイメージ」だという。
マザーリカーから生まれるレアカンナビノイド
アイソレートを作る工程で、「マザーリカー」と呼ばれる余剰の油が発生する。この余り油はかつて産業廃棄物として処分されていたが、検査にかけてみるとCBC・CBT・CBLなど多数のマイナーカンナビノイドが含まれていることが判明した。「捨てていたものをもう一度精製したら、フルスペクトラムに近い原料になった。それがCRDの正体」と鈴木氏は説明する。
CBTやCBLは純度が高い状態でも液体であることが特徴で、CBDアイソレート(固体)を液体状に保つための「溶剤」として機能する。「塩を水に溶かすと液体になるのと同じ原理。液体のCBT・CBLにアイソレートを混ぜることで、全体を液体のまま保てる。だからカートリッジ内で固まらない」。冬場にベイプが結晶化して使えなくなる問題を解消できる理由がここにある。
色の透明度が品質の証
Cannvitolのキャンビトルの強みは「色の綺麗さ」だという。「原料のボトルの状態では明るい赤茶色で、ベイプリキッドに調合すると黄金色になる。ディスティレート原料は色が重要で、色が濃い原料は不純物が除去しきれていないことが多い」と鈴木氏は解説する。
日本市場でCRDが待望されている背景には、2023年以降の国内規制強化がある。THCなどの違法成分を完全に排除するためにCBDアイソレートが主流となったが、アイソレート単体では結晶化しやすく、ベイプとしての使い勝手に課題があった。ヘンプ100%のCRDはその解決策として需要が高く、「営業で連絡した時から『待ってました』という反応だった」という。
なお、PG(プロピレングリコール)やVG(ベジタブルグリセリン)などの添加物は一切使用していないという。「Hemp会社なので、わざわざ添加物を使う理由がない。本当にヘンプ成分だけのCRDになっている」と鈴木氏は強調する。ベイプリキッドに使われる溶媒の種類と安全性についてはASAラジオ #3|CRDとは何か?CBDの嗜好・医療用途とチェコ大麻政策を解説でも詳しく取り上げている。
まとめ
ASAラジオ第4回では、710 Network代表・鈴木氏が語る事業の全体像と、CRD原料の製造工程が掘り下げられた。ヨーロッパで培った「英語×カンナビノイド専門知識」というユニークな強みを軸に、ローリングペーパー輸入・海外ブランドの日本窓口・CBD原料販売と多角的に事業を展開する23歳の起業家の姿が浮かび上がった。
「ただの代理店ではなく、商品設計の段階から関わるプロデューサー型のアプローチ」という姿勢は、今後の日本CBD市場における海外ブランドの展開事例としても注目に値する。CANNABIS INSIGHTでは引き続き、業界関係者へのインタビューを通じて国内CBD産業の実態を発信していく。
ASAラジオはYouTubeにて配信中です。チャンネル登録・高評価もぜひよろしくお願いします。


