国内の産業用大麻(ヘンプ)産業の現状

ヘンプ(Hemp)とは日本語では「産業用大麻」のことで、THCを基準値以下含む大麻品種になります。「水が比較的すくなくても育つ」、「大量の繊維を生産する」、「環境に良い素材」など注目を集めています。またGX(グリーントランスフォーメーション)という観点からも活用が進んでいます。

日本では2024年12月12日から施行される「大麻の栽培に関する法律」によって規制が行われるようになり、従来と比べて規制が緩和されたため、農業事業者などがヘンプを活用できるケースが増えることが予測されます。

今回は、このヘンプの活用を推進されている関係者の方にインタビューを行ってきました。その内容や、ヘンプ産業がどのような状況なのかについてお伝えできればと思います。

2024年冬の法改正で、「大麻取締法」から「大麻の栽培に関する法律」へと規制が変わります。従来の規制の問題点としては、THC含有量が少ない品種にも厳しい管理が課され、栽培者の負担が大きいことなどが挙げられ、近年の大麻事犯の増加や、大麻由来医薬品に対する医療ニーズの高まりが、法改正を後押ししました。法改正後においては、部位規制から成分規制に移行し、THC含有量に応じた規制が導入されました。これにより栽培規制の見直しが行われ、乱用防止と医療・産業利用の両立が図られています。

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【CBD事業者向け】2024年施行の大麻栽培規制の変更点について

目次

日本国内の産業用大麻(ヘンプ)市場について

一般社団法人等の業界団体

日本の産業用大麻(ヘンプ)業界にはいくつかの業界団体があり、それぞれの地域で活動されています。「環境にやさしい素材を使うことで持続的な社会をつくっていく」「伝統的な文化(神事)での継続使用を推進する」など業界によって様々な活動理念があります。

今後は法改正によって、この業界に参入する団体も増えてくることでしょう。

例えば、現在は以下のような団体が事業を行なっています。

  • 一般社団法人日本ヘンプ協会

  • 一般社団法人北海道ヘンプ協会

  • 一般社団法人九州ヘンプ協会

  • HEMP HUB

  • 一般社団法人麻産業創造開発機構(HIDO)

産学官で連携する活動も増えてきており、例えば、「天津菅麻プロジェクト」では栽培に関する法改正に先駆けて、産業用大麻の活用に関する検証を行なっています。これは明和町・明和観光商社・皇学館大学・ヘンプイノベーション株式会社など、さまざまな団体が協力して、麻文化の継承と産業化を目指しているプロジェクトになります。

三重県のヘンプ活用の推進:
三重県がヘンプに関して積極的に活動を行っていますが、これは大麻栽培の免許が都道府県知事の許可を受けなければならないという規制が関係しています。この県の規制は監視カメラ設置が必須であったり見回りが必要といった厳しいものなのですが、関係者の方による地道な訴え等によって、三重県はこの規制を緩和しました。

三重県明和町「天津菅麻プロジェクト」に参画するヘンプイノベーション(株)が、三重県の許可を受け「産業用大麻」の栽培を開始。(プレスリリース)

産業用大麻業界で事業展開している国内企業

また一般社団法人だけでなく、産業用大麻(ヘンプ)市場に進出している国内企業もたくさんあります。

代表的な会社には以下のような会社が有名です。

  • 日本ヘンプ産業株式会社

  • 無印良品

  • エイベックス(majotae)

インタビューコメント

今回、インタビューさせていただいた方によると、現在、産業用大麻(ヘンプ)業界に参入しようと検討されている企業が増えており、ヘンプクリートや断熱材といった建築資材やバイオマス由来樹脂の活用など、建築やマテリアル関連企業にヘンプ活用と相性の良い企業が多いとのことです。国内の産業大麻活用にまだまだ課題があることから参入が進んでいない状況があるというお話がありました。

産業用大麻(ヘンプ)の活用事例

ヘンプクリート・衣服・神事等での利用・CBDの抽出素材・食用が活用先として挙げられます。

例えば麻の茎の芯と石灰を混ぜたバイオ複合材料である「ヘンプクリート」は既に日本でも活用が始まっており、世界的にも注目をあつめる素材です。

以下にヘンプクリートの事例と、ヘンプクリートについて解説した記事を紹介します。

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日本初のヘンプサウナ設置事例

ヘンプクリートとは?産業用大麻と建築材料について

産業用大麻(ヘンプ)栽培の課題について

一方で、産業用大麻(ヘンプ)の取り扱いなど厳しい規制によって制限されていたことから産業用大麻の栽培・産業化について様々な課題が残っています。

インタビューを通じて、大きく三つの課題があることがわかりました。

手作業による非効率な栽培

産業用大麻(ヘンプ)の栽培はほとんどが手作業での栽培になっており、育てることに大きなコストがかかってしまいます。原因としてこれまでの厳しい規制があったことから、栽培ノウハウや技術が確立していない問題が挙げられます。

現在も大正時代にも使われていたような栽培道具を使って産業用大麻(ヘンプ)栽培をしている状態で、これからより効率的に大麻栽培ができる道具の開発や活用が始まるかもしれません。

農薬が使えない

産業用大麻(ヘンプ)の栽培規制があることから農薬の開発や適切な農薬が見つかっていないことから現在は産業用大麻(ヘンプ)の栽培は農薬が使えないという問題があります。

農薬を登録することや管理する、また活用していくには時間と費用がかかることから産業用大麻(ヘンプ)の農薬活用にはまだまだ時間がかかる可能性が高いです。

種子が鳥に食べられる被害も出ています。

栽培マニュアルの不足

産業用大麻(ヘンプ)の栽培がようやく規制緩和されたので、まだ栽培マニュアルも整備されていないそうです。どのような栽培法が効果的なのかを調査してまとめることで再現性のある栽培が可能となり、産業用大麻(ヘンプ)の活用がより現実的になるかもしれません。

まとめ|産業用大麻についてインタビューをして

今回は名前は伏せていますが、インタビューをさせてもらった産業用大麻関連の有識者の方は以下のようにコメントしていました。

産業用大麻を産業にしていくには、まずは事業者のマニュアル制作や法律の整理をはじめ、HEMP HUBや業界団体のような組織が産業用大麻の活動にどのように動いていくのかが重要になってきます。三重県だけではなく産学官のプロジェクトで活動基盤を作り、実際に産業用大麻(ヘンプ)の栽培を運用していくなかで落とし所を見つけていく必要があります。

まだまだ国内のヘンプ活用は発展途上で、実際にどのような市場が形成されるかというのも未知数です。一方で、麻の服・繊維・CBD・食用品は(気づかれないことも多いですが)日本の文化のなかに既に存在している重要なものです。それらの生産が国内で行われ、継続した産業になるということは、経済や多様性、農業のあり方等さまざまな観点から不可欠なように思えます。

一方で、いきなり「産業用大麻(ヘンプ)」産業を始めようにも、土地を基盤にしたビジネスであるため地域住民とのすり合わせ等も不可欠になっています。実際の現場では地道にコミュニケーションをとりながら、活動の理解を得ることが重要です。

産業用大麻(ヘンプ)市場の情報をさらに知る

現在ではさまざまなメディアでヘンプに関する発信を行なっています。『農業経営者』の赤星栄志環境科学博士の連載が有益な情報を毎月発信されていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。わたしたちも注目しているメディアです。

知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

わたしたち、CANNABIS INSIGHTも積極的に調査を行なっています。以下のようにヘンプ産業の最新ニュースを随時お届けしておりますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

米国の建築素材メーカー「Hempitecture」社が、カーボンネガティブな麻素材の開発を目指し、米国エネルギー省から840万ドルの助成金を受けることが発表されました。同社は、麻を原料とする断熱材や包装材、自動車部品などの製品を開発し、従来の素材と比べ炭素強度を60~80%削減する計画です。この資金をもとに、同社はテネシー州ロジャースビルに新しい産業施設を建設し、地域社会の活性化にも貢献する見込みです。

 

編集者

CANNABIS INSIGHT代表/編集長
世界の大麻・CBDのビジネスや経済情報を調べています。

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