スリランカ政府が、医療用オイルの輸出を目的とした大麻栽培プロジェクトを本格的に動かし始めた。ロイターによると、投資委員会(BOI)は米欧向け輸出を見込む6件の案件で、合計1億ドル規模の投資誘致を進めており、まずは厳重管理区域での栽培をコンテナ型のパイロットから開始する計画だという。大統領府はIMF支援の枠組みを維持しつつ外資導入を加速しており、大麻産業は外貨獲得の新たな柱として位置づけられる。
同国は2022年の経済危機でデフォルトに陥り、財政再建の一環として国営部門の改革や投資優遇策を拡充してきた。政権は「5000万ドル超の大型投資に透明な税優遇を適用する」方針を示しており、医療用大麻もその対象になり得る。輸出先としては米国と欧州が想定され、現地での医薬・ウェルネス用途のオイル需要を取り込む狙いがある。
国内では雇用や外貨収入への期待がある一方、栽培区域の管理、逸脱流通の防止、医薬用途としての品質・トレーサビリティの確保など、制度設計の課題も残る。電力やエネルギーなど他分野の構造改革と並行して、どこまで実装を進められるかが注目点だ。
政権は年内のIMF審査や大型投資計画の進捗と連動させながら、試験栽培から商業規模への移行を探る見通し。大麻を巡る規制・輸出実務の詳細が固まれば、周辺国を含む南アジア市場にも波及効果が広がる可能性がある。
参考記事:From crisis to cannabis: Sri Lanka’s president surprises with pro-market pivot(Reuters)