英国で医療用大麻へのNHS(国民保健サービス)経由のアクセスを広げれば、今後10年で英経済に133億ポンド(約2.7兆円)規模の押し上げ効果が見込める――そんな経済分析を、業界メディアが17日に伝えた。分析は英調査機関Cebrがまとめたもので、NHSでの処方を拡大すれば慢性疾患などで就労から離れている人々の復職が進み、5年で45億ポンド、10年で133億ポンドの経済効果が生じると試算している。報道は、対象患者の入院件数が年間28%減る可能性にも言及した。分析は医療大麻クリニックのCuraleaf Clinicが委託したもの。2018年の合法化以降、民間処方だけでも既に2億8300万ポンドの付加価値が生まれたとする。
背景には、長期の病気・障害で働けない人が約280万人に上るという英国の現状がある。伴走して実施した世論調査では、就労離脱を経験し薬物治療を受けた人の62%が「従来治療を出し尽くした」と回答。医療用大麻を「NHSでより広く受けられるなら試したい」とした人は44%に達した。一方で、医療用大麻が英国で合法的に処方可能であること自体を「知らない」と答えた人も40%いたという。
Cebrのエコノミストは「適切に処方された医療用大麻は、慢性疾患の患者が職場復帰する助けになり得る」と述べ、Curaleaf Clinicの研究責任者も「NHSでのアクセス拡大に向けたロードマップが必要だ」と指摘。報告書は、NHSの明確な処方経路の整備、研究投資の拡充、医療者教育の標準化などを提言している。政策決定には至っておらず、今後は政府・NHSの対応が焦点となる。
参考記事:NHS Access to Medical Cannabis Could Unlock £13.3 Billion for Economy(cannabishealthnews)