米ニューヨーク州が、産業用ヘンプ(麻)を建材などに加工する製造拠点の整備に乗り出した。米レンセラー工科大学(RPI)は、ヘンプを建設資材・繊維・包装材へ転換する製造ラボ設立に向けて100万ドル(約1億5,000万円)を確保したと発表。州として持続可能なバイオ製造の先進地域を目指す動きが鮮明になっている。
資金は、RPIの「Seed to City」イニシアチブに対して提供されるもの。ニューヨーク州農業・市場局(New York State Department of Agriculture and Markets)が行う総額500万ドルの投資枠の一部として交付された。背景には、政府や産業界が“炭素集約型素材”に代わる選択肢を求めている現状がある。
注目されるのが、ヘンプが「成長が早く、効率よく炭素を吸収する作物」として位置づけられている点だ。RPI側は、建築分野が大きなCO2排出源となっていることを踏まえ、低炭素・健康志向の建材需要が高まっていると説明。だが一方で、再生可能素材の供給網が十分に整っていない現実があり、今回の取り組みはその“空白”を埋める狙いがあるという。
新設される「Seed to City Manufacturing Lab」には、ヘンプ繊維を高性能素材へ加工するための専用設備が導入される予定。構造ブロック、天然繊維の鉄筋(リバー)、断熱リフォームパネル、次世代サイディングなど、従来は炭素負荷の高いプロセスで作られてきた建材に対抗しうる製品開発を進めるという。
また、米国では2018年の農業法(Farm Bill)以降、ヘンプ栽培自体は広がったものの、加工インフラ不足や市場の不確実性から、産業としての拡大には課題が残ってきた。RPIはこのギャップを埋めるため、製造プロセスの開発や試作品づくり、ニューヨーク州内のヘンプ関連企業との連携を通じて、需要創出を狙うとしている。
研究チームは、将来的にヘンプ由来素材が州内の建設プロジェクトへ流れ込むことで、植物由来の循環型経済(plant-based circular economy)につながる可能性を示唆。輸入材への依存を減らし、農村地域の雇用創出にもつなげたい考えだ。
大麻・ヘンプ産業は“嗜好品”の文脈で語られがちだが、建築・素材分野では脱炭素の切り札として存在感を強めている。ニューヨーク州がヘンプの「下流工程(製造)」に投資した今回の動きは、ヘンプ産業の新たな勝ち筋を示す材料になりそうだ。



