フランスで医療用大麻の提供が、また“延長”されることになった。保健省は、長年続く医療大麻のパイロット制度について、2026年3月31日の期限を超えて継続すると明らかにした。対象となるのは、すでに制度に登録している患者で、突然治療が打ち切られる事態を避けるための措置だという。
今回の発表は、フランス医薬品・保健製品安全庁(ANSM)の臨時科学委員会の会合で示された。ただ、延長期間が「どれくらいになるのか」は現時点で明確にされておらず、患者や関連企業の間では不透明感が残っている。
一方で、より大きな問題として浮上しているのが、医療大麻を全国で恒久的に利用できる「一般化制度(恒久制度)」の停滞だ。フランスでは5年にわたり制度設計が進められ、恒久制度はすでに“準備完了”に近い段階にあるとされてきた。それでも最終的な施行が進まず、患者アクセスの拡大は足踏み状態が続いている。
報道によれば、恒久制度は2025年3月に欧州委員会へ提出され、6月に承認、さらに8月にはフランスの行政最高裁にあたるコンセイユ・デタ(国務院)でも検証が済んだという。それでも残る手続きは閣僚の署名と官報(Journal Officiel)での公布のみで、制度が動き出す“最後の一手”が止まったままになっている。
業界側からは「患者の治療継続のため延長は必要だが、本当に求めているのは新規患者が恒久的にアクセスできる仕組みだ」との声も出ている。患者団体側も延長を歓迎しつつ、「延長だけでは限界がある。政府は実験を終え、恒久制度に移行すべきだ」と訴えている。
背景には政治の混乱もあるとされる。国民議会の解散や政権交代によって医療大麻が政治優先順位の下位に押し下げられ、行政手続きが停滞してきたという指摘もある。
さらに制度が動かないことで、費用負担の設計も決まらない。恒久制度が公布された後は、高等保健当局(HAS)が償還(保険適用や価格設定)評価を進める必要があるが、HASは「評価手続きの根拠となる政令が正式に公布されない限り、作業を完了できない」との立場を示しているという。患者が最終的にいくら支払うのかも、依然として見通せない状況だ。
患者の治療は途切れない一方、制度の“本番”は見えないまま――。フランス医療大麻は、延長でつなぎながらも、恒久制度の停滞という根本課題を抱え続けている。



