週刊大麻ニュース|8月2日 – 8月8日

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2025年8月2日から2025年8月8日の期間に世界の大麻・CBD業界で起きた出来事をまとめた『週刊大麻ニュース』をお届けします。大麻に関する合法化、政治、ビジネスなどのテーマを中心に取り扱っております。

※日本国内の違法行為を推奨するものではありません。

目次

スロベニア、大麻合法化に向けて動き出す

スロベニアでついに嗜好用大麻をめぐる本格的な立法プロセスが動き出した。与党「自由運動」と左派「レヴィツァ」の議員が共同で提出した新法案は、21年の国民投票で示された「個人使用容認」の民意を反映。成人に “1人4株(世帯6株)” までの自家栽培と、家庭内最大150 g(公共の場では7 g)までの所持を認める内容だ。商業販売は対象外となるものの、非営利目的での少量シェアは合法化され、運転時のTHC閾値や職場での薬物検査禁止など、細かなルールも盛り込まれている。法案は今後、野党・社会民主党を含む追加協議とパブリックコメントを経て修正される見通しだが、成立すればスロベニアはマルタ、ルクセンブルク、ドイツに続くEU4番目の“自家栽培・所持容認国”となる。今回の動きは、欧州各国で広がる「販売を伴わない段階的合法化」モデルの一例として注目される。

参考記事:Slovenia Takes Steps Toward Cannabis Legalisation(Business of Cannabis)

大麻とサイケデリックが摂食障害に効果との調査結果

摂食障害を抱える患者を対象に行われた最新アンケート調査の結果を報じた。調査によると、回答者の多くが「大麻やサイケデリックス(幻覚剤)の方が、従来の医薬品より症状の改善に役立った」と感じていることが明らかになった。

 調査は摂食障害の当事者コミュニティー「Psychedelic Research & Therapy Development(PRT)」がオンラインで実施し、計1,169人が回答。大麻やサイロシビン(マジックマッシュルーム由来の成分)、MDMA など複数のサイケデリック体験と、従来の向精神薬や抗うつ薬など “ビッグファーマ” 医薬品の効果を比較する内容だった。

 主なポイントは次の通り。

  • 大麻の有効性:回答者の約55%が「食思の回復や不安軽減に最も効果があった治療法」として大麻を挙げた。
  • サイケデリックスの高評価:サイロシビンを挙げた人は43%、MDMA を挙げた人は38%で、ともに「一度のセッションでも長期的な症状軽減を感じた」と報告。
  • 従来薬への不満:一方、標準的な SSRI(抗うつ薬)などを「効果的」と評価した人は全体の22%にとどまり、半数以上が「副作用が強い、あるいは変化が感じられなかった」と回答した。

 PRT の研究者は「従来薬だけで行き詰まりを感じていた患者が、大麻やサイケデリック介入で心理的な気づきを得て行動パターンが変わるケースが増えている」と説明。とはいえ、用量管理やトリップ時の安全確保など課題も残るため、臨床試験とガイドライン整備が不可欠だと指摘した。

 米国ではサイケデリックをうつ病やPTSD治療に応用する研究が急増しているが、摂食障害にフォーカスした実証データはまだ限定的だ。今後は公認の臨床プロトコルを整え、副作用リスクを最小化しつつ“心理的リセット”効果を医学的に検証する動きが加速するとみられる。

参考記事:Weed & Psychedelics Are Doing for Eating Disorders What Big Pharma Couldn’t, Survey Says(hightimes)

米ケンタッキー州、医療用大麻の店頭販売を今秋開始

米ケンタッキー州でようやく患者が店頭で医療用大麻を購入できる見通しとなった。アンディ・ベシア知事は17日、X(旧ツイッター)で「今秋から販売が始まる」と投稿。すでに約1万6,000人が医師の推薦状を取得していながら入手手段がなかった“制度だけ先行”の状況に終止符が打たれる。

 最初の販売拠点となるのは、オハイオ郡ビーバーダム市の「ザ・ポスト・ディスペンサリー」。同店に納入される大麻は、州内の栽培企業アーモリー・ケンタッキーが7月11日に温室へ定植した数千株で、9月に収穫・乾燥を終えた後、10月にも店頭に並ぶスケジュールが組まれている。

 ケンタッキー州では2023年3月、医療用大麻を認める法案(SB47)が成立。制度自体は今年1月1日に施行されたが、流通体制が整わず販売は“ゼロ”のままだった。昨年11月に行われた州規制当局によるライセンス抽選では、36のディスペンサリー許可証をめぐり5,000件超の応募が殺到。外資系企業の大量当選に対する地元業者の不満が訴訟に発展するなど、プログラム立ち上げは混乱が続いていた。

 業界調査のMJBiz Factbookは、同州の医療用大麻売上が2026年には1億2,600万ドル(約200億円)規模へ達すると予測。また州議会は、ヘンプ由来低用量THC飲料の規制枠組みも検討しており、医療用大麻とヘンプ派生製品が併存する独自市場が形成される可能性が高い。

 知事は「患者が安心して医療として大麻を利用できる環境を整えることが最優先だ」と強調したが、今後は供給体制の安定化や、訴訟に揺れるライセンス制度の調整が課題となる。秋の店頭販売開始がスムーズに進むか、医療用大麻“後発州”の実力が試される。

参考記事:Governor: Kentucky medical marijuana sales to launch this fall(MjBizDaily)

オハイオ州、嗜好用大麻の解禁1年で約1,120億円販売&税収160億円突破

オハイオ州の嗜好用大麻市場が、制度施行からわずか1年で7億025万ドル(約1,100億円)の売上高を達成したことがわかった。米非営利メディア「States Newsroom」系の報道によれば、同州では昨年7月1日に大麻の店頭販売が解禁されて以降、購入総数は約1,500万件に上り、税収も1億ドル超を計上。州財務局は「予想を上回るペースで合法市場への移行が進んでいる」と分析している。

オハイオ州の嗜好用大麻は、購入時に10%の物品税が課される仕組みで、その7割が自治体の薬物治療や教育プログラム、残り3割が州のインフラ基金などに充てられる仕組みだ。今回判明した7億ドル超の売上は、直接的な物品税だけで7,000万ドル以上の歳入を生み出した計算になる。さらに所得税や雇用創出による波及効果を含めれば、経済全体へのインパクトは数十億ドル規模に達するとの試算もある。

市場の主力は、乾燥フラワーとプレロール(あらかじめ巻かれた大麻製品)で全体の6割超を占める。一方で、エディブルやベイプカートリッジなど加工品の需要も伸びており、ディスペンサリー各社は「嗜好用と医療用の垣根が薄れ、消費者の選択肢が広がった」と口をそろえる。州規制局によると、解禁前に存在した250店程度の医療用ディスペンサリーのうち、約8割が嗜好用ライセンスに切り替え、今年3月時点で新規店舗を含む340店が営業中だという。

一方、違法市場からの完全移行には課題も残る。州警察は「依然として品質不明の大麻がネット販売や路上取引で流通している」と警告。州議会では、税率を引き下げて価格競争力を高める案や、家庭栽培の上限を見直す法案などが議論されている。消費者団体は「合法店のアクセス向上と価格安定がカギ」と指摘し、行政・業界に対し違法市場を縮小する総合対策を求めている。

それでも、初年度に7億ドルを突破したオハイオ州の成長ペースは、解禁済みの他州と比較しても上位に位置する。州開発サービス機構は「今後2~3年で年間売上が10億ドル台に乗る可能性が高い」とし、関連産業の拡大や税収の増加に期待を寄せている。

参考記事:Ohio’s recreational marijuana sales surpassed $702.5 million in first year | News From The States

国内8団体が「日本カンナビノイド関連団体連盟(JCF)」発足 安全基準と情報発信を強化

一般社団法人 全国大麻商工業協議会(全麻協)など国内の主要団体は8月6日、カンナビノイド産業の健全な発展と消費者保護を目的に横断連携組織「日本カンナビノイド関連団体連盟(Japan Cannabinoid Federation/JCF)」を発足した。拡大する市場で健康被害の未然防止とルール整備を進めるのが狙い。連盟は正確な情報発信、プラットフォームと連携したガイドライン策定支援、新規合成カンナビノイドへの自主規制勧告や調査研究などに取り組む。

役員体制は、代表に全麻協の須藤晃通氏、副代表に日本カンナビジオール協会の伊藤俊彦氏と日本カナビス産業協会のマイケル・ボブロブ氏、事務局長にAsabis株式会社の中澤亮太氏。参画団体(発足時の正会員)は、全麻協、日本カンナビジオール協会、日本カナビス産業協会、日本カンナビノイド協会、麻産業創造開発機構、日本ヘンプ協会、GREEN ZONE JAPAN、オール・カンナビノイドの8団体となる。

須藤代表は「業界の健全な発展と消費者保護を最優先に、主要団体が力を合わせて立ち上げた。自主的な安全対策と正確な情報発信で、安心して利用できる市場をつくる」とコメント。連盟事務局は東京・渋谷に置き、問い合わせ窓口や公式サイトも公開された

参考記事:連団体連盟(JCF)」を設立 | 一般社団法人全国大麻商工業協議会のプレスリリース

※本記事は、日本国内ならびに国外での違法行為を助長する意図はありません。
この記事の内容は、あくまで読者の皆様のリサーチや学習の一環として提供しています。
法律に関する最新情報は各国の公式サイトをご確認ください。

編集者

Takaomi Akagiのアバター Takaomi Akagi CANNABI INSIGHT代表/編集長

CANNABIS INSIGHT 編集長。2022年にメディアを立ち上げ、国内外のCBD・大麻産業を政治、経済、ビジネスという観点から取材・分析。日本国内のCBD市場調査レポート『CBD白書』の編集発行をはじめ、年間ニュースを俯瞰する企画『大麻・CBDニュース総選挙』を主宰・運営。CBDジャーニー、カナコン等の業界カンファレンスやコミュニティでの登壇・モデレーション、事業者向けの寄稿・解説を通じ、大麻・CBDについての社会的意義や経済可能性を調査しています。

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