合成カンナビノイドとは|市場規模、課題、ビジネスを調査

こんにちは。大麻・CBDのビジネス、経済メディア「CANNABIS INSIGHT」です。

大麻市場とはまた毛色が違った合成カンナビノイド市場は、年々存在感を見せつつあります。大麻の「合法的」代替品として市場に登場したこの物質は、今や独自のポジションを確立し、世界中の規制当局に新たな課題を突きつけています。本記事では、合成カンナビノイドについて、市場規模、課題、ビジネスを解説します。

法改正によって、成分の規制は変化しています。最新情報は政府HP等をご参照ください。

目次

合成カンナビノイドとは

合成カンナビノイドは、人工的に作られた化学物質であり、大麻植物に含まれる天然のカンナビノイド、特にTHC(テトラヒドロカンナビノール)の効果を模倣するように設計されているケースが多いです。しかし、その化学構造と作用は天然のカンナビノイドとは大きく異なり、研究が進んでいないことや予測ができない成分のため危険な効果をもたらす可能性があります。

海外では「スパイス」や「K2」などの俗語で知られているケースがありますが、それらは各国の規制状況や合成カンナビノイド市場によって異なります。例えば、日本国内では「HHC」「THCH」「HHCH」「THC-O」「HHCP」など有名な合成カンナビノイド(semi-synthetic cannabinoidやSynthetic cannabinoids)が流通していますがこれらは必ずしもどの国でも流通しているわけではありません。

合成カンナビノイドはTHC(テトラヒドロカンナビノール)に似た効果を得るための成分です。多くの国ではTHCが規制されている現状があることからTHC規制国で人気が上昇しており、研究や規制が追いつかないことから大麻業界では問題視されています。

市場規模は30億ドル?合成カンナビノイド市場について

2023年、世界の合成カンナビノイド市場は15億ドル-30億ドルに達するとされています。さらに衝撃的なのは、この市場が2032年までに201億米ドルにまで膨らむという予測です。年平均成長率23.5%という数字は、この市場の爆発的な拡大を如実に物語っています。

合成カンナビノイド市場は定義が広義になりやすいことから調査機関によって市場規模が異なりますが、現時点で1000億円ほどの市場はありそうです。

この急成長の背景には、複雑な要因が絡み合っているとされています。まず、合成カンナビノイドは大麻よりも安価で入手しやすく、その効果もTHCより強力になることが多いです。これが、社会的弱者を中心に、急速に普及する一因となっています。さらに、一部の薬物検査で検出されにくいという特性が、薬物治療中の人々や厳重な監視下にある人々にとって「魅力的な」選択肢となっていることが挙げられます。

参考記事
Synthetic Cannabinoid Market Size, Growth Analysis to 2032

合成カンナビノイド製品の種類が増加中

合成カンナビノイドの市場は、最近、リキッドや食品形態での流通が増加しています。特に懸念されるのは、キャンディなどのお菓子の形をした製品であり、アイルランドの調査では、2022年に検査したキャンディの半数以上に合成カンナビノイドが含まれていたという衝撃的な結果が報告されています。

生産拠点の変化と欧州での生産増加

従来、合成カンナビノイドの原料粉末の大半は中国で生産されていましたが、2021年7月に中国が導入した包括的規制を契機に、状況は変化しつつあります。欧州内での加工と包装が増加傾向にあり、欧州内で合成する傾向も見られます。

2023年、ギリシャとスペインで大規模な合成カンナビノイド生産施設が摘発されました。これらの施設は単なる加工・包装拠点ではなく、合成までをも行っていた可能性が高いとされています。

合成カンナビノイドはアメリカ国内でマニアックな方への流通や違法地域でTHCの代替品になることがしばしありましたが、最近ではヨーロッパ圏でもHHCや合成カンナビノイドに関するニュースを確認することが増えてきました。

フィンランドの医薬品庁は、欧州中での流通量が増加している「HHC」を精神作用物質として、禁止物質に指定しました。HHCが身体にどのような影響を与えるのかがわからないことに加え、ヨーロッパ市場での流通量の増加が懸念されているため、禁止物質に指定されました。また、隣国スウェーデンもフィンランドと同様にHHCの規制を計画しており、スカンジナビア諸国(スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド)を中心に規制の動きが加速しています。

使用することで健康的なリスクはあるのか?

合成カンナビノイドがもたらす健康リスクは深刻であるとされています。その高い効力と製品内の濃度のばらつきは、使用者を予期せぬ過剰摂取の危険にさらすことがあります。

特に懸念されるのは、若者への影響です。食品形態の製品の出現により、意図せずに摂取してしまうケースや、その危険性を軽視して使用するケースが増加しています。

日本国内でもHHCHの成分が含まれたグミを食べて健康被害にあった件数が増加しています。摂取方法や製品、成分自体のどれに問題があったかは定かではないですが、前提知識がない状態で合成カンナビノイドを摂取することはリスクになると考えられます。

数年前に流行ったHHCを皮切りに合成カンナビノイドの成分効果が年々過激化しており、大麻を規制していることの弊害や事業者のモラルなど様々な課題があり、世界中でもこれら同様のことが問題視されています。

ヨーロッパ圏の規制と今後について

欧州薬物・薬物依存監視センター(EMCDDA)は現在、247種類もの合成カンナビノイドを監視下に置いています。2021年と2022年には新規物質の報告が急増しましたが、2023年には一転して減少に転じました。この変化は、規制当局の努力が一定の成果を上げていることを示唆していることになります。

しかし、市場の急速な変化と新たな生産・流通手法の出現は、規制当局に継続的な課題を突きつけています。今後は、国際的な協力体制の強化、新たな検出技術の開発、そして予防と合成カンナビノイドの知識を増やしてもらう教育プログラムの充実が不可欠になるかもしれません。

まとめ

合成カンナビノイド市場は急速な成長を遂げており、絶え間ない変化が見られます。この成長が示すように、合成カンナビノイドには一定の需要があるため、すべてが悪いわけではないと考えられます。しかし、研究情報の不足や健康面での問題点が存在することから、リスクを忘れてはなりません。「成分」の観点からは現在違法ではないとされる場合でも、今後、規制対象になる可能性は十分にあります。

世界的にも、今後この市場にどのように対処していくかは、各国の薬物政策の有効性を測る重要な指標となるでしょう。合成カンナビノイド市場に適切に対応するためには、継続的な研究、効果的な規制、そして包括的な公衆衛生アプローチが必要です。これらの対策を講じることで、リスクを管理しつつ、市場と向き合うことができるかもしれません。

※本記事は、日本国内ならびに国外での違法行為を助長する意図はありません。
この記事の内容は、あくまで読者の皆様のリサーチや学習の一環として提供しています。
法律に関する最新情報は各国の公式サイトをご確認ください。

編集者

CANNABIS INSIGHT代表/編集長
世界の大麻・CBDのビジネスや経済情報を調べています。

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