【大麻上場企業】Innovative Industrial の株価、会社概要、決算、事業内容を解説

みなさん、こんにちは。
CANNABIS INISIGHT(カンナビスインサイト)のたかおみです。

今回は大麻上場企業の「Innovative Industrial」について解説していきたいと思います。

Innovative Industrial Properties(IIP)は、2016年に設立された規制対象の大麻産業に特化した最初の不動産投資信託(REIT)です。州認可の大麻事業者向けに産業用不動産を購入し、セールリースバックなどの不動産ソリューションを提供することで、事業者が資本を効率的に活用できるよう支援しています。この記事ではIIPの事業内容と2023年の決算結果について詳しく解説します。

【目次】

目次

Innovative Industrial Properties の会社概要

画像出典元:会社HP TOP

2016年12月に設立されたInnovative Industrial Propertiesは、規制対象の大麻産業に特化し最初の不動産投資信託(REIT)です。 規制された大麻施設向けに専門の産業用不動産資産の購入に焦点を当てています。

従来の資金調達手段にアクセスするのが難しい大麻事業者にとって、セールリースバックやその他の不動産ソリューションが魅力的な選択肢となると考え、事業を展開。大麻事業が許可されている州で大麻施設を取得しており、今後も取得を継続する姿勢を見せています。ニューヨーク証券取引所(NYSE: IIPR)に上場しています。

事業者はリースされた不動産資本を活用することで、希薄化されていない資本を活用して施設を建設し、地域の患者や顧客へのリーチ拡大にリソースを集中させることができます。

Innovative Industrial Propertiesの企業としての強みは、やはり、規制された大麻産業に特化した唯一のNYSE上場REITであることです。この独自の立場により、公開資本市場にアクセスすることができます。

REIT(Real Estate Investment Trust):
日本語で「不動産投資信託」と呼ばれる金融商品です。これは、多くの投資家から集めた資金を不動産に投資し、その賃貸収入や売却益を投資家に分配する仕組みです。

事業内容

ここからはInnovative Industrial Propertiesの公開情報をもとに事業内容を見ていきたいと思います。免許取得プロセスを経て免許を取得した、資本力の高い企業に焦点を当てて事業を行っているのが特徴です。

IIPの事業内容は、主に以下の3点に集約されます。

規制対象の大麻事業者への不動産賃貸

州の免許を受けたカンナビス事業者に対し、栽培、加工、流通、小売など、あらゆる種類のカンナビス事業に使用できる不動産物件を取得し、長期絶対ネットリース契約に基づき賃貸しています。

セール・リースバック

すでに大麻関連事業を行っている事業者から不動産物件を取得し、リースバックすることで、事業者が不動産を売却した資金を事業運営に再投資することを可能にしています。 これにより、事業者は不動産を保有し続けるよりも高い収益を得ることができます。

セール・リースバック(Sale and Leaseback):

企業が所有している資産(通常は不動産や設備など)を第三者に売却し、その後、その資産を売却先からリース(賃貸)する形で再度利用する取引手法のことです。つまり、企業は一度自分の資産を売却するものの、その資産を引き続き使用するためにリース契約を結び、賃料を支払う形で利用を継続します。

REITとしての賃料収益

所有する不動産から得られる賃料が主な収益源です。

2017年第2四半期以降、普通株主に連続して四半期配当を行っています。REITとして、課税所得の少なくとも90%を株主への配当金として分配する必要があるためです。

決算書を読んでみる

【Innovative Industrial Properties  2023 決算報告】
出典:Innovative Industrial Properties Reports Fourth Quarter and Full-Year 2023 Results

最後にInnovative Industrial Propertiesの決算情報をわかりやすくまとめてみます。会計士ではないので、事実ベースでまとめてみました。また今回の情報は2024年(執筆時:2024/8/21)のデータを参照しています。

以下に決算情報を含む表を以下に示します。

項目

2023年12月期通期

2022年12月期通期

2023年第4四半期

2022年第4四半期

総収入

$309.5百万

$276.4百万

$79.2百万

$70.5百万

純利益(普通株主に帰属)

$164.2百万

$153.0百万

$41.3百万

$41.2百万

希薄化後1株当たり純利益

$5.77

$5.52

$1.45

$1.46

ファンズ・フロム・オペレーションズ(FFO)

$231.6百万

$210.7百万

$58.4百万

$53.9百万

希薄化後1株当たりFFO

$8.20

$7.64

$2.07

$1.92

調整後FFO

$234.1百万

$214.8百万

$58.6百万

$55.0百万

希薄化後1株当たり調整後FFO

$8.29

$7.76

$2.07

$1.95

調整後FFO(AFFO)

$256.5百万

$233.6百万

$64.3百万

$59.6百万

希薄化後1株当たりAFFO

$9.08

$8.45

$2.28

$2.12

総資産

$2,391.1百万

$2,414.8百万

総負債

$438.1百万

$452.9百万

総資本

$1,953.0百万

$1,961.9百万

ファンズ・フロム・オペレーションズ(FFO):
不動産投資信託(REIT)が賃料収入からどれだけのキャッシュを獲得しているかを表す指標。REITの収益力を示す。

2023年の決算報告の記述、決算の数値情報からは、以下のことが考察できます。

1. 収益の拡大と持続可能性

2023年12月期通期の総収入が前年同期比で12%増加したことは、イノベーティブ・インダストリアル・プロパティーズ(IIP)のビジネスモデルが堅調であることを示しています。特に、新規物件の取得や既存物件テナントへの追加インフラストラクチャ費用の影響が大きいことから、積極的に投資を続け、ポートフォリオの質を向上させていることがわかります。この成長が持続可能かどうかは、今後の規制環境や市場動向に大きく依存しますが、現時点では順調に拡大していると言えます。

2. 安定した収益性とFFOの成長

純利益と調整後FFO(AFFO)の増加は、IIPが効率的に事業を運営し、安定した収益を生み出していることを示しています。希薄化後1株当たりAFFOの成長率(約7%)は、株主にとって魅力的なリターンを提供していることを意味します。また、REITにおけるFFOやAFFOの成長は、賃料収入が安定していることと、コスト管理が効果的に行われていることを反映しています。これにより、将来的な配当の増加も期待できます。

3. ポートフォリオの多様化とリスク管理

IIPのポートフォリオが19州に108物件、総賃貸可能面積890万平方フィートを有することは、リスクの分散が効果的に行われていることを示します。特に、MSO(複数州で事業を行う大麻事業者)が90%を占めることで、特定の州やテナントへの依存度を低く保ち、ビジネスリスクを軽減しています。この戦略により、規制の変更や市場の変動に対しても、安定した運営が可能になります。

4. 財務の健全性と資本構造

総資産が約23億9,110万ドルで、総負債が4億3,810万ドル、負債比率が12%と低いことは、IIPの財務基盤が非常に健全であることを示しています。特に2026年5月までは多額の債務満期がない点は、キャッシュフロー管理において非常に重要であり、近い将来の資金調達リスクを低減しています。この安定した財務状況は、将来的な物件取得や株主への配当を継続する上での強力な基盤となります。

5. 成長戦略と市場展望

IIPの成長戦略は、大麻産業の成長を背景にした物件取得とリースバックに焦点を当てています。規制当局の認可を受けた経験豊富な大麻事業者とのパートナーシップにより、信頼性の高い収益源を確保しています。今後も大麻産業が成長を続けると予想される中で、IIPは市場での競争力を維持しつつ、重要な不動産資本源としての役割を強化していくでしょう。

6.決算書のまとめ

イノベーティブ・インダストリアル・プロパティーズの2023年の決算結果から、同社のビジネスモデルは堅調に推移しており、今後も安定した成長が見込まれます。収益性の向上や財務の健全性、ポートフォリオの多様化が組み合わさることで、IIPは将来の市場変動に対しても強い耐性を持ち、持続的な成長が期待されます。特に、AFFOの増加と低い負債比率は、株主に対する配当増加や将来的な資本還元策の余地を広げる要因となるでしょう。

株価

まとめ

Innovative Industrial Propertiesは、規制が厳しい大麻業界の不動産問題を解決するシステムを提供しており、小売事業や医療用大麻事業などとは違ったユニークな事業となっています。一般的には不動産投資信託(REIT)はあまり知られていない金融商材ですが、正直地味な領域ですが、規制が厳しい大麻業界にハマったことから順調な成長を見せています。

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※本記事は、日本国内ならびに国外での違法行為を助長する意図はありません。
この記事の内容は、あくまで読者の皆様のリサーチや学習の一環として提供しています。
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編集者

CANNABIS INSIGHT代表/編集長
世界の大麻・CBDのビジネスや経済情報を調べています。

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