大麻に依存症はあるのか?「大麻と依存」について解説

本記事では、大麻依存症に焦点を当て、その発症過程と脳への影響を考えます。また「依存症の定義」と大麻依存症の段階ごとの症状を紹介し、依存症がどのように進行し治療が可能であるかを参考文献から紐解きます。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療の専門家によるものではありません。個別の健康状態に関するご質問や治療についての判断は、必ず専門の医師や医療機関にご相談ください。

目次

依存の定義と、大麻の依存症

依存症

依存症は、単なる医師や行動の選択の問題ではなく、脳の病気として定義されています。依存症にかかると、脳の構造や機能に長期的な変化が生じ行動のコントロールが失われることが特徴です。薬物やアルコールを求める強い渇望により、家庭や仕事などに悪影響が及ぶことを承知の上で、それらを摂取し続けてしまいます。

健康な脳では、食事や運動といった行動が脳の報酬回路を活性化させ、繰り返しその行動を行うよう促します。多くの依存性薬物は、脳の報酬系において神経伝達物質であるドーパミンを大量に放出させるようにするのです。その結果、依存症では薬物やアルコールがこの回路を乗っ取りさらなる摂取を促進します。離脱症状やネガティブな感情に対処するため、快楽を得る目的ではなく、気分の低下を避けるために薬物を使用し続けるようになります。

脳の報酬回路とは:
快感や満足感を感じさせる神経系のネットワーク

依存症の発症には、遺伝的要因と環境的要因の両方が関与しています。家族内で依存症が発生しやすく、特定の遺伝子が依存症に関連しています。またストレスの多い環境や、その依存症の家庭で育つことなどの社会的要因も影響します。

大麻の依存症についての特徴

慢性的な大麻使用は、脳の報酬やストレスに関連する回路に変化をもたらし、特に若年層においては実行機能の低下が報告されています。他の薬物と違う点も報告されており、さまざまな面に目を向けて、総合的な判断をすることが重要です。

ドーパミン放出量:

多くの依存性薬物は、脳の報酬系において神経伝達物質であるドーパミンを大量に放出させます。しかし、大麻の主要な精神活性成分であるTHCは、他の薬物と比較してドーパミン放出量が少なく、その程度は低いと考えられています。

ドーパミン受容体への影響:

アルコール、コカイン、メタンフェタミン、ニコチン、ヘロインなどの薬物は、腹側線条体におけるドーパミンD2受容体の数が減少することが示されています。しかし、大麻使用者は、健常者と比較して、線条体におけるドーパミンD2/D3受容体の基底レベルに差が見られないことが分かっています。これは、大麻が他の薬物とは異なるメカニズムでドーパミン系に影響を与える可能性を示唆しています。

一方で、身体・精神への影響について大麻に特有の未知の影響もあるかもしれません。研究の進行を注意深く追っていく必要があります。

線条体:
大脳基底核の主要な構成要素。運動制御に重要な役割を果たし、意思決定、報酬処理、学習にも関与しています。ドーパミンの主要な標的部位。

大麻依存症とは?

大麻依存症は、強迫的な薬物摂取や摂取制限のコントロールの喪失、摂取できない状況でのネガティブな感情が特徴です。大麻依存症は脳の病気であり、治療は可能ですが、再発のリスクは常に存在します。大麻依存症も他の依存症と同様、遺伝的および環境的要因の影響を受け、特定の遺伝子が関連しています。

大麻依存症は、次の3つの段階に分類されます。またその段階に応じた治療薬が存在しており、それも合わせて記載しています。

過食/中毒段階

脳の報酬回路が過剰に活性化し、薬物摂取による快感を得ようとする段階です。THCの急性投与は、脳内のドーパミン放出を促し、さらなる摂取を誘発します。 この過剰活性化はほとんどの薬物に見られ、大麻中毒にも存在するようですがその程度は低いようであると報告されています。

治療薬

CB1受容体拮抗薬: リモナバンなどのCB1受容体拮抗薬は、CB1受容体を遮断することでTHCの精神活性効果と心拍数増加効果を遮断することが示されています。しかし、リモナバンによる直接的な拮抗作用は、不安や抑うつなどの望ましくない副作用と関連しているため、臨床使用は制限されています

離脱/負の影響段階

薬物使用を中止すると、イライラや不安、抑うつなどの症状が現れます。身体的にも、震えや頭痛などの症状が見られ、これらは薬物を摂取することで和らげられるため、再び摂取に戻る可能性があります。

治療薬

CB1受容体アゴニスト: ドロナビノール(経口THC)、ナビキシモルス(THCとCBDの組み合わせ)、ナビロンなどのCB1受容体アゴニストは、カンナビノイド受容体に作用することで離脱症状を軽減することが示されています。これらのアゴニストは、THCの精神活性効果を模倣しますが、経口投与されるため、吸引されたTHCよりも作用が遅く、乱用の可能性が低くなります

没頭/予期段階

禁欲後の薬物渇望が強まり、再発のリスクが高まる段階です。大麻に対する過度な期待や顕著性が渇望を引き起こします。

治療薬

N-アセチルシステイン(NAC): NACは、システイン-グルタミン酸アンチポーターを介してグルタミン酸シグナル伝達を調節することで、抗渇望効果を発揮する可能性のある薬剤です。NACは、大麻禁欲中にアップレギュレートされるグルタミン酸放出を減衰させ、それによって渇望と再発を軽減する可能性があります

まとめ

依存症は脳の病気であり、快楽を求める段階から、離脱症状や再発のリスクが高まるまで、複数の段階で進行します。大麻においては、特に若年層で長期的な使用が実行機能に悪影響を及ぼす可能性があります。依存症の発症には遺伝的要因や環境的要因が関与しており、再発のリスクが常に存在します。

社会において大麻の利用を考える際、依存性の有無だけでなく、他の科学的な要因も考慮すべきです。まず、大麻のドーパミン放出量は他の依存性薬物と比べて少ない可能性があり、ドーパミン受容体への影響も異なります。アメリカ中毒センター(AAC)の記事では、中毒性の高さで言えばアルコールやニコチンのほうが上位にきており、大麻関連成分については上位にはきていません。依存性の評価については更なる研究が必要で、他の薬物との比較などの総合的な評価が重要です。

また、離脱症状や認知機能への影響も他の薬物より軽度である場合がありますが、これは使用者の年齢、使用量、期間、遺伝的要因などによって変わります。そのため、利用可能性を科学的に判断するには、大麻の作用メカニズム、脳への影響、依存症リスク、そしてその利用状況が個々に与える影響をみながら、ひとつの側面のみだけではなく、多角的に評価することが重要です。

参考文献

※本記事は、日本国内ならびに国外での違法行為を助長する意図はありません。
この記事の内容は、あくまで読者の皆様のリサーチや学習の一環として提供しています。
法律に関する最新情報は各国の公式サイトをご確認ください。

編集者

CANNABIS INSIGHT代表/編集長
世界の大麻・CBDのビジネスや経済情報を調べています。

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