イスラエルと大麻・CBDの法律/宗教・歴史/ビジネス|完全まとめ

こんにちは、CANNABIS INSIGHT(カンナビスインサイト)です。

イスラエルは、大麻の研究と医療利用において世界的に重要な役割を果たしています。特に医療用大麻の規制とその活用において、他国の模範となる制度を整えてきました。本記事では、イスラエルにおける大麻規制や法律、そして医療用大麻プログラムの仕組みについて詳しく解説します。

目次

イスラエルにおける大麻規制・法律と合法化

イスラエル街

医療用大麻が合法

イスラエルでは嗜好用大麻は違法ですが、医療目的の大麻は合法です。
イスラエルの医療用大麻プログラムは規制と監督の下で運営されています。

プログラムの仕組み:

資格:
がんなどの特定の疾患に苦しむ患者は、医療用大麻の資格がある可能性があります。 また従来の薬や治療法で効果が見られなかった患者も、適格とみなされる可能性があります。

申請:
医療用大麻の許可を申請するには、2つの選択肢があります。

・医療用大麻の許可を発行する権限を持つ医師の診察を受ける:
医師が医療用大麻の使用を推奨すると判断した場合、診察時に許可証を発行することができます。 ただし認可された医師は、公的医療サービスの一環としてのみ許可証を発行することができ、個人で発行することはできません。 がん患者は、全国の病院の腫瘍内科でこのサービスを受けることができます。

・専門医の診察を受け、オンラインで申請する:
医師が医療用大麻治療を推奨すると判断した場合、医療用大麻ユニットにオンラインで申請書を発行します。 専門医の紹介、オンライン申請、医療用大麻ユニットの評価はすべて無料です。

購入:
許可証が発行された後、認可された薬局で購入することができます。

規制:
このプログラムは、イスラエル保健省の医療用大麻ユニットによって規制されています。

大麻に関する政策・法律の背景

危険薬物条例(1973年)は大麻を危険薬物に指定しておりその所持と使用は刑事犯罪です。 この法律の下では大麻の所持は最長3年の懲役刑、使用は最長2年の懲役刑が科せられます。

しかしイスラエル検事総長が発行した指令によると、それ以外の犯罪歴がなく、個人的な使用のために少量の大麻またはハシシを所持または使用したことが初めて発覚した「規範的な人物」が関係する事件は、一般的に法律の完全な執行の対象とはなりません。

イスラエル議会には大麻関連法の改正を目的とした法案がいくつか提出されています。これらの法案には、成人に対する罰則の軽減、カンナビジオール(CBD)の大麻関連犯罪の対象からの除外、産業用大麻株の危険薬物としての分類からの除外などがあります。

一方で国内にも反対派勢力はおり、イスラエル麻薬取締局(IADA)は、すべての薬物の合法化に反対しています。

大麻を取り締まる規制の変遷の一部

法律または政策の変更(英語表記)説明
1973危険薬物条例(Dangerous Drugs Ordinance)大麻を危険薬物に指定し、その所持と使用を刑事犯罪とする。
1985検事総長指令(Attorney General Directive)初めての違反で、個人的な使用のために少量の大麻またはハシシを所持または使用した場合、法律の完全な執行の対象とならない場合がある。
1988薬物乱用防止のための国家機関法(National Authority for Fighting Drugs and Misuse of Alcohol Law)薬物乱用と闘うための国家機関(IADA)を設立。
2009イスラエル麻薬取締局(IADA)の権限強化イスラエル議会は、IADAに対する責任を公共保安省に付与することを決定。
2016危険薬物条例(大麻または大麻樹脂を含む薬物の所持または個人的使用)議員提出法案第3020号(Dangerous Drugs Ordinance (Possession or Use for Personal Consumption of a Drug Containing Cannabis or Cannabis Resin) Private Member Draft Bill No. 3020)21歳以上の成人の初犯者に対し、罰則を軽減し、罰金のみに処す法案。
2016危険薬物条例(大麻植物の定義)議員提出法案第2874号(Dangerous Drugs Ordinance (Definition of Cannabis Plant) Private Member Draft Bill No. 2874)カンナビジオール(CBD)を大麻製品の刑事罰対象から除外する提案。
2016危険薬物条例(医療大麻の定義)議員提出法案第2855号(Dangerous Drugs Ordinance (Definition of Medical Cannabis) Private Member Draft Bill No. 2855)医療大麻を法律上の危険薬物から除外する提案。
2016危険薬物条例(産業用大麻株)議員提出法案第2688号(Dangerous Drugs Ordinance (Industrial Strains of Cannabis) Private Member Draft Bill No. 2688)産業用大麻株を危険薬物から除外する提案。

日本から渡航する際には注意が必要

イスラエルでは嗜好用大麻は違法です。現地の規制に十分注意が必要です。医療用大麻の使用については所定の手続きが必要で、旅行の際にアクセスするのは現実的ではありません。最新の情報を確認し、法的な問題を回避することが重要です。

渡航される際などは、ご自身で必ず最新の情報をお確かめください。

歴史

1964年にラファエル・メチョウラム教授がTHCの構造を解明したことが、イスラエルが大麻研究の分野でリードするきっかけとなりました。この発見は、大麻の薬効や人体への影響に関する研究を大きく前進させ、THCが体内でどのように作用するかを科学者たちが理解する端緒となりました。1990年代に入ると、THCが体内で作用する受容体が発見され、エンドカンナビノイドシステム(ECS)という神経伝達物質系が明らかになりました。

これらの発見は医療大麻の開発に大きく寄与し、イスラエルではTHCとCBDの含有量を調整した多様な大麻株が開発されました。これらはがん、クローン病、パーキンソン病、PTSD、てんかん、末期疾患、神経障害性疼痛など、幅広い疾患の治療に利用されています。

イスラエルは世界で最も進んだ医療大麻プログラムの1つを運営しており、厳格な規制の下で医療大麻の処方が管理されています。患者は、医療大麻の許可を持つ医師からのみ処方を受けることが可能です。

イスラエルの医療大麻プログラムは他国にとっても模範的な存在となり、その研究成果とプログラムの成功は、世界中で医療大麻の認識を大きく変えました。これにより多くの国々が医療大麻の合法化や研究の推進に動き出す契機となりました。このようにイスラエルはTHC構造の解明から大麻研究の推進、医療大麻プログラムの確立、そして世界への影響という一連の流れを生み出したのです。

イスラエルにおける大麻ビジネスについて

注目企業

数多くの企業が麻の利点に関する発見を商業化し始めているため、産業が開花しています。 スタートアップ企業の多くは、米国での大量マーケティングを目指しているとされています。2015年時点の資料でも70社以上のスタートアップ企業があると報告されています。

イスラエルの医療大麻の強みは、研究と技術にあります。大麻研究の土壌が育っており研究者は大麻の基礎研究にも力を入れ、新しい方法を発明し、この植物の新しい医療用途を発見することで科学界をリードしています。

企業名企業HP
Syqe Medicalhttps://syqe.com/
Cannbit-Tikun Olamhttps://cannbit.com/
Kanabo Researchhttps://www.kanabogroup.com/

Syqe Medical

Syqe Medicalは、精密な投与が可能な医療用大麻吸入器「SyqeAir」を開発した企業です。この吸入器は一貫した用量と効果を提供することで、副作用を最小限に抑え、患者により良い治療体験を提供します。SyqeAirはイスラエル保健省の承認を取得しており、信頼性の高い医療機器として評価されています。さらに、カナダのTerrAscendと提携し、北米市場への進出も進めています。

Cannbit-Tikun Olam

Cannbit-Tikun Olamは、2019年にCannbit PharmaceuticalsがTikun Olamを買収して誕生しました。栽培から流通までを一貫して行う垂直統合型ビジネスモデルを採用しており、業界内での競争力を強化しています。13年以上にわたる臨床研究経験を持ち、これまでに35以上の研究論文を発表。さらに独自の遺伝子研究開発システムを活用して、特殊な大麻品種を開発しています。

Kanabo Research

Kanabo Researchは、医療用大麻の気化器技術および製剤開発に特化した企業です。特に「VapePod」という吸入器をJupiter Researchと提携して開発し、イスラエル保健省から医療機器としての承認を取得しました。また欧州・アフリカ・オーストラリア・ニュージーランドなど、複数の国や地域で販売権を取得しグローバル展開を進めています。

市場・税収|CBDから嗜好用大麻まで

イスラエルの医療大麻市場は、1990年代に医療大麻の使用が始まって以来、着実に成長してきました。2012年には約1万人の登録患者がいたこの市場ですが、2017年には約2万6,000人に増加し、翌年にはさらに倍増すると予想されていました。

市場は成熟しており、政府認可の大麻栽培業者が8社存在。医師の処方箋に基づいて患者に供給されています。さらに研究分野でも革新が進んでおり、イスラエル保健省の支援のもとで研究開発が行われています。特にイスラエルは大麻栽培に適した気候を持つため、国内生産の増加が期待されています。

またイスラエルは乾燥大麻の花の世界最大の輸入国でもあり、輸入に関して品質基準の強化も行われています。しかし輸出プロセスは依然として複雑で、国内生産の拡大が必要とされています。

Statistaの予測によると、イスラエルの大麻市場は今後数年で年間成長率1.88%を記録し、2029年には3億8,950万米ドル規模に達する見込みです。世界全体では米国が最大の収益を上げる市場であり続けていますが、イスラエルは医療大麻の研究と技術革新の分野で引き続きリーダーシップを発揮するでしょう。

ニュース・レポート

CANNABIS INSIGHTではイスラエルの大麻に関するニュースや情報を発信していきました。イスラエルは大麻の研究開発が盛んで、スタートアップも多く生まれている土地です。これからも嗜好用大麻の扱いを含め、注目していきたいと思います。

▼ 過去に取り上げたニュース

BYND Cannasoft Enterprises Inc.によると、イスラエルの医療用大麻患者数が急増していることがわかりました。患者数は2023年11月現在で132,000人に達しており、多くの患者は外傷後の治療を目的として医療用大麻を求めているとのことです。ライセンスごとに投与量が制限されており、最も利用量が多い70グラム以上の使用を許可された患者は約15,000人となっています。イスラエルでは、医療用大麻へのアクセス方法がさらに増えるような施策が求められています。

【他の地域の大麻の状況について知る】

参考記事・情報

※本記事は、日本国内ならびに国外での違法行為を助長する意図はありません。
この記事の内容は、あくまで読者の皆様のリサーチや学習の一環として提供しています。
法律に関する最新情報は各国の公式サイトをご確認ください。

編集者

CANNABIS INSIGHT代表/編集長
世界の大麻・CBDのビジネスや経済情報を調べています。

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